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ハーゲン弦楽四重奏団@トッパンホール

 久しぶりに、多分21年の大晦日ぶりかな、弦楽四重奏を聴きに行きました。アイドル歌謡以外はほぼクラシックしか聴かないのですが、なかでも室内楽、特に弦楽四重奏が聴く音楽の9割を占めるといってもいいくらい弦楽四重奏が好きなジャンルです。なので聴きに行きたいのは山々なんですがこの10年はアイドルライブ優先だったので1年に1度行くかどうかって感じだったんです。まあそれにプログラムによってはまあええかってなることも多いですからね。

 それはさておき、聴きに行ったのは〈ハーゲン プロジェクト 2023〉ハーゲン・クァルテット 第3夜でした。プログラムは以下のとおりです(画像はトッパンのサイトより)。

  • モーツァルト:弦楽四重奏曲第21番 ニ長調 K575《プロシア王第1番》

  • ヴェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章

  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 Op.130+大フーガ 変ロ長調 Op.133


 3日ともいいプログラムだったので全て行きたかったなってところですが、仕事の都合もあるので1日だけにしました。この日を選択したのは木曜だからというのもあるんですが(仕事の都合)、ヴェーベルンの弦楽四重奏のための緩徐楽章があったからですね。この曲はヴェーベルンの死後に見つかった曲だそうですが、若い時に書かれた後期ロマン派の極みみたいな、叙情的で濃厚な曲です。この後シェーンベルクに師事し、無調や十二音技法を用い、純水のような弦楽四重奏曲を作曲したとは思えないくらいなんですが、個人的にこの曲はかなり好みでよく聴いています(クァルテット・イタリアーノの演奏で)。でも生で聞く機会がなかったのでぜひハーゲンの演奏で聴きたいなあと。

 あとベートーヴェンの13番、大フーガ付きが聴けるのも選択した大きな理由でした。ベートーヴェンは日本人大好きだそうなのでよく演奏されますし、後期の楽曲もそこそこ演奏されていて聴く機会はそこそこあります。なので何度も生演奏で聴いていますが、これもハーゲンだとどうなるんだろうなというのも興味がありました。

 余談ですが僕はモーツァルト(3日ともプログラムに入っている)が苦手で全く心に響かないというか右から左に聞き流して脳を通り過ぎてしまうんですよねえ…何も残らない…。好きな曲もあるんですけどね(弦楽五重奏第4番とかレクイエムとかコジ・ファン・トゥッテとか)。

 肝心の演奏ですが、まずはヴェーベルンについて。はじまりは少し演奏の方向性が分散しているように思えたのですが、途中からは一体感のある演奏になっていたと思います。この曲の個人的レファレンスであるクァルテット・イタリアーノに比べるとやや薄口だけど筋肉質な感じだったかなと言う感想です。

 ベートーヴェンですが、13番の演奏は第6楽章までやったあと大フーガを第7楽章的にする演奏が多い気がしますが、今回は第5楽章が終わって大フーガに入りました。この曲の初演と同じ構成ですね。プログラムが13番+大フーガとなっていたのでてっきり第6楽章聴けるのかと思ってたのでちょっと拍子抜けしたんですが、それはともかく、13番の演奏自体は素晴らしかったです。第5楽章の崇高さも素晴らしかったですが、なんといっても大フーガでしょう。

 個人的に大フーガは世界遺産クラスの曲だと思っていて、無人島に一枚もっていくなら多分大フーガが入ったアルバムにするだろうなと思うくらい好きな曲なんですよね。曲の分析とかできるわけではないのですが、聴いている感じからするとよくこれで曲としてまとまっているなと思わせるほど、それぞれの声部が独自に演奏しているかのように聴こえます。二重フーガだそうなんですが、それだけでなくリズムなんかも複雑な感じで、それらが合わさって一つの巨大な構築物を連想させる楽曲です。

 ハーゲンの演奏はこの曲のスケール感を表現しており、強奏部分もクリアに表現されていていい演奏でした。特にチェロとビオラがよかったかなと。まあ家だと大音量で聴けないためどうしても低音パートが弱くなりますので、生演奏で聴いた補正も入っているかもしれませんが、土台がしっかりしている分、上物もきっちりとしたものが建てられるというんでしょうかね、そんな感じがしました。大フーガがあれば他の音楽いらないよねって軽口叩きたくなるくらいいい楽曲であることを改めて確認した次第です。

 色々行きたいところはありますが、諸般の事情がどこまで妨害してくるのかによって行ける回数が変わってきます。なんとかならんもんかなあと思いつつ、なんともならない現状にため息をつきながらしばらく過ごしたいと思います。では。


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