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Solitude HOTEL最終公演に寄せて

 僕がこの4年ほど通っていたアイドルグループのMaison book girlが活動終了をしました。


 まあこの2ヶ月位、公式から出てくる情報は解散を匂わすというか解散だよと伝えているとしか言いようがなかったので、そうか終わったか、まあ終わるよね、という感想がまず出てきます。
 ただ解散してほしくないっていう気持ちが強いしその必然性も感じなかったので、そうじゃない方向に考えるようにしていた分、なんというか虚脱感があるんですよね。こんなにいいパフォーマンスをするグループがなぜ活動終了を選択しなければならなかったのか。もちろん背景には色々あるのでしょう、まだ語られていないことや語られないままになることなどあって総合的に判断したんでしょう。
 なにかが解散するときよくその理由として考えられるのが、経済的なこと、人間関係的なこと、(芸術的な面だけでなく一人ひとりの生き方という意味も含めての)方向性の違いなどでしょうか。もちろんグループとしてすべてをやり遂げたということもあるでしょう。
 それが今回の活動終了の理由なのかはおいおい語られることを待つしかないわけですが、ただ、本当にもったいないんですよ。昨日のライブの演出の凄さ、完成度の高さ、その構築された世界が持つ一貫した強度、どれをとっても一級品だったわけです。
 ライブ自体は、以前のライブであるSolitude HOTEL 4Fをなぞる展開で始まったんですが、照明が最小限に抑えられた闇の中でのパフォーマンス。なにか違和ー音がよくない、リズムがあわないーを感じるもその暗さもあってその正体がつかめないまま進んでいきます。途中で珍しくMCが入り、あれとおもっていたら、生身だとおもっていた彼女たちとステージにノイズが入り、実は冒頭からずっと映像を見せられていたという。4Fのライブは一度始まったライブがまた冒頭に戻るというギミックがあったライブだったんですが、あのとき途切れた一度目の時間が3年半を経てつながったかのように奈落から今の彼女たちが現れました。
 そこからは闇から抜け出したように、とはいえ抑制された照明が神々しく彼女らのパフォーマンスを照らし、円形劇場の装置をフルに活用した演出で最後まで見せてくれました。個人的には長い夜が明けてからの狭い物語、そしてアカペラでの夢の3曲の流れが今のブクガの楽曲や歌唱における到達点を示していたのではないかと思います。
 終わりに向けてポエトリーリーディングでは感情の高まりがあったりしたものの、最後の曲、last sceneは一番が終わる辺りでメンバーは舞台袖にはけていき、唐突に終わりました。そこに解散コンサートなどでよくあるMCなどはなく最後までブクガの世界を演じきったのかなと思います。
 本当に残念なのはこんなにいいライブなのに、1000人くらいしか見てないんですよ。コロナ禍ということもあってアンフィシアターにはそもそも最大でも半分くらいしか入れないようにしていましたし、しかもソールドアウトはしなかったため、ライブの出来からすると驚くほど少ない人数しか見てないんですよ。芸術的な良さと世間的な評価、商業的な成功がリンクしないことはもちろんわかっていますが、それにしても、です。
 こういうところが活動終了の遠因であったのかもしれません。売れる売れないは正直時の運だから仕方がないにせよ、ただ細くとも長くつづけてほしかった。継続は力なりという言葉がありますが、続けることで見えてくる世界もあるわけで。もちろん彼女たちの人生もあって外部の人間がどうこういう問題でもないのは承知の上ですが。
 ブクガはオリジナルアルバムを4枚出していますが、僕は3枚目の『yume』が一番いい出来だとおもっています。初期を過度に評価する人もいますが、楽曲の良さー原曲だけでなく編曲なども含めてーはこのアルバムあたりがピークでしょう。4枚目の『海と宇宙の子供たち』はやや曲調が拡散した感じがしますが、それでも質の高いアルバムで、サクライケンタとMaison book girlの世界がどう広がっていくのかを期待させてくれるものでした。ただこの拡散は一つの形になることを許さなかったかもしれません。5枚目で結果的にラストとなったベストアルバム『Fiction』は、ベストアルバムとして単なるキャリアの集大成でなく、新たな編曲で曲の魅力を倍増させた、コアなファンにも初めて聴く人にも訴求するものでした。なのでこの時点で活動終了が考えられていたのかとは思わないのですが、ただベストアルバムというものが契約終了の一つの兆しとして捉えられなくもないのも事実です。そのあたりは今どうこう言ってもわからないのでこれからの情報を待ちたいと思います。
 僕らには8月にでるSolitude HOTEL最終公演のBDがまだあります。そこまでは正確には活動終了ではないはずです。これからも彼女たちの活躍を楽しみにしたいですね。

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