雪の日

冬。厚手のカーテンを少しだけ開く。いつもより明るい外。電線の上にまで積もる雪。部屋の電気はつけないで、そのまま徐に椅子に座って、カーテンの隙間から覗き込むように外を眺めてみる。
いつもは素通りしてしまう、国道沿いの歩道橋。滑らないように階段を踏みつけるように、カン、カンと音を立てながら登る。曇り空。雪の中を往来する車の写真を撮る。
ドトールに居る。クリスマスソングが流れている。平日の昼間。暖房が効いた店内に、新聞を読んでいるおじさんがひとり。時折人の出入りで冷たい風が流れ込む。
朝。中学生の時。昨日降った雪が溶けかかっている。あいにく私は受験生で、思い切り遊ぶこともないまま、ただただ溶けていく雪を眺めながら塾に向かう。車道の真ん中を歩く。自動車と、自転車でできた轍。ぐしゃぐしゃになった雪の上を朝日が照らして、黄金色に輝く。向かいから歩いてきたサッカー部のコーチとばったり会う。「頑張れよ、受験生!」と一言。
数日前に降りやんだ雪。電信柱の隅に削がれて固められた黒が混じった雪。ボンネットの上に巻き上がった雪を集めておしかためてみる。特にやり場もなく、そのまま地面に叩きつける。コンクリートの上に散らばる雪。
1月、大学の研究室。寒色に照らされたそこは昼も夜もあまり変わらないけど、ブラインド越しに見える雪を見ていると、ひっそりと時間が流れているのを感じる。建設中の新館のために慣らされた土の上に、うっすらと白が混じる。それを時折眺めながら論文を書く。すっかり暗くなった帰り道、駐輪場の脇を抜けて、商店街の裏側の、室外機と常磐線に挟まれた小道を歩く。街頭のない通りに雪がちらついている。駅に着くと、改札口がやけに明るく見える。
電気の点かないコインランドリーの中、今なお降り続ける雪を見つめる。入り口の脇に観葉植物が置いてあるだけで、整然と洗濯機が並ぶだけのコインランドリー。洗濯物がまわる音。あとはひたすらに静か。

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