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【コラム】 第三人称とは、「話をしていないし、話かけられてもいないもの」という概念

言語の世界では、話し手は一瞬にして聞き手にまわり、聞き手はいつでも話し手になりうる。独り言なら、話し手がすなわち聞き手である。

話し手”I” がいるから聞き手"you" がおり、聞き手"you"がいるから話し手”I” がいる。だから第一人称 ”I” と第二人称 "you" は、いつでもペア(互いに支え合う関係)で存在する。

 "we" は、<文の話し手>になっている”I” たち、という概念だから、第一人称の一種である。"you" は、何人いようが、とにかく<文の聞き手>という概念を表す。だから第二人称は、英語ではいつも"you" でよい。

では、第三人称とはなにか。

<文の話し手> ”I” でも"we" でもないし、<文の聞き手>"you" でもないものすべてである。

話し手でも聞き手でもないというのは、いいかえると、

「この文では話をしていないし、話しかけられてもいない」

ということである。

このように、人称は概念上の設定なので、現実の世界からみるとちょっと不思議な感じがすることもある。

たとえば、息子が食卓にいて、両親がこの息子のことを話している場合、  息子には話がよく聞こえていても、母親が父親に、

"He is tired."

といったりする。

言語(概念)上、このとき息子は話していない(”I” でも"we" でもない)し、話しかけられてもいない("you"ではない)から、息子は第三人称 he  になるのである。

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