現在完了がわからない?
何年か前、名古屋で中学校の英語教師の勉強会を傍聴したときのこと。
指導者の一人の白髪の老人が、すっくと立ち上がって、こういう発言をした。
「私は、英語を話すとき、現在完了を使ったことがありません。私には完了形というものがよくわからない。わからないものは使わない。それが誠実な態度だと思うからです」
この人は、記号論の本を出したことのある元大学教員で、その人が、「完了形がわからない」と宣言したことが印象に残った。
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たしかに、完了形は英語のなかでも理解のむずかしいもののひとつといえる。なんとなく使えなくもないが、それがどういう概念であるか、きちんと説明するのは案外とむずかしい。
完了形とは、<受動した(終わらされた)動相 ~en を、今も保持 have している>
という概念である。
これは、概念として矛盾しているようにみえるが、じつは誰でも理解できる心の働きでもある。
失恋したのはしばらく前で、それはもう時間の流れの中で終わらされたことが(受動)、心の傷は残っている(保持)
これまでパリに三回行ったことがあって、それは終わったとしか言えないが(受動)、その記憶が残っている(保持)
彼がさっき部屋に入ってきて(受動)、その余韻が感じられる(保持)
<終了させられた動相 -en を、心に保持 have している>
この概念を理解し、場面に応じて使う練習をすれば、完了形は大丈夫、使えるようになる。
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