学校英文法の<陳列替え> 田中茂範『表現英文法』
田中茂範『表現英文法 わかるから使えるへ(増補改訂第二版)』(コスモピア株式会社、2017年6月発行。初版発行は2013年)
700ページを超える大著。著者30年の文法面での仕事を集成した一冊。
英文法の全体像が、一枚の図にされている。<モノ、コト、状況、構成>の四部門という編成が目新しい。
本書は「使える」文法をめざしているが、この四部門の編成で、ほんとうに「使える」という人もいれば、「使いにくい」という人もいるだろう。
どちらであるかは、それぞれの読者が決めることだから、ここでは問題にしない。
ただ、とりあげた項目(冠詞、受動態などの文法用語)が、学校英文法とまったく同じであることに注意したい。お店でいえば、すでに店にあった商品を並べ直し、新たに解説をつけて、もう一度陳列したということである。
そのようにした理由は、学校英文法は多くの読者がなじんでいるし、なにより、著者自身がそうした項目立てに疑問をもっていないからであろう。
だが、学校英文法と同じ項目に頼ることには、問題もある。もっとも根本的な問題は、これだと、従来どおり単語や単語のまとまりの意味の分類と解説に終始するほかないことである。
むしろ、意味の中核をなす概念(どういう認識を、どういう音声・文字にすべきかを指示する規範)にどのような種類があり、英語の場合、それらの概念がどのように関係づけられてひとつの言語になっているかを解明するのが、英文法である。
英語教育も言語学も、意味(現象)の分類が言語の研究であり習得の方法だという思い込みが強く、概念(意味が出てくる規範。本質ともいう)にまで考察が及ばない。本書もその例にもれない。
本書は、各項目で代表的な例語が列挙されているところが、なかなか親切だ。だが説明が詳しいわりに、何が言いたいかよくわからないまま終わっていることがある。
動詞の分類ががわかりにくく、前置詞はバラバラに解説されている印象がある。
この本をどう使うかは、まったく読者次第ということだろう。
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