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音韻と音素 どうちがうか

音韻(おんいん)と音素(おんそ)は、よく似た言葉。

和英辞典をみると、どちらも原語は phoneme となっている。おそらく音韻・音素は、いずれも phoneme の訳語であろう。

どのようにして一つの語に二つの訳語ができたのか、詳しいことはわからないが、両者の違いについて、少し調べたことをメモしておきたい。

音韻というときは、「言語として認識される音の体系」と研究社の『新和英大辞典』がいうように、体系性とか全体性が前面に出てくる。そこでは現実の言語現象全体が問題にされ、歴史的・地域的変化や発話に現れるアクセントやイントネーションのような、多様な要素が総合的に扱われる。

他方、音素というときは、「ある言語の音声を音韻論的に考察して得た単位」と小学館の『日本国語大辞典』がいうように、単位性つまり全体を構成するひとつひとつの要素が前面に出てくる。音素論では、音韻論で仮定された言語音の単位としての音素(英語ならひとつひとつの発音記号)が議論の対象にされ、歴史的・地域的変化や、アクセント・イントネーションは通常議論されない。

ウィキペディアの「音韻」の項には、

「近代の言語学では、[音韻は]意味の弁別をなす最小の音声単位である phoneme の訳語として当てられ、phonemeを研究する学問を音韻論と呼んでいる。この場合の音韻は音素と同義であるが、[音韻というときは]各言語の歴史的な変化や体系性といった文脈で語られることが多い」(ゴチック引用者)

とある。

つまり、音韻も音素も、同じく言語の音響面をあつかっており、原語も同一だが、見る角度が現象的・総合的(音韻)か、理論的・個別的(音素)かのちがいによって、日本語では言い分けている、と考えておきたい。

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