見出し画像

歴史への礼節について 「アメリカを出て行く」のはトランプ氏のほう?

つい最近、トランプ米大統領が、四人の新人下院議員について「そんなにアメリカが嫌いなら、生まれた国に帰れ go back 」 という主旨のツウィートをし、演説までして、物議をかもしている。

https://time.com/5626478/trump-racist-tweets-setbacks-immigration/?utm_source=time.com&utm_medium=email&utm_campaign=the-brief&utm_content=2019071611am&xid=newsletter-brief

四人の議員は、トランプ氏が強引にすすめようとている「不法」移民排斥に抗議しており、今回の発言は、そのことへの対抗とみられている。

四人はいずれも民主党の女性議員で、上の世代が外国からアメリカに移民した人たち。なかにはイスラム系らしい人もいる。四人のうち三人はアメリカ生まれ、一人は幼いときにアメリカに移住していて、全員、国籍はアメリカ合衆国である。「生まれた国に帰れ」というトランプ氏の主張は、事実認識に間違いがある。

トランプ氏の演説には、こういう言葉がふくまれていた。

“These are people that hate our country. They hate our country. They hate it, I think with a passion,”

 “They are free to leave if they want.” 

こういう言葉を聞くと、皮肉な連想も浮かぶ。

トランプ氏は、「不法」な移民を排斥することがアメリカを愛することだと信じこんでおり、それに対して反対するのは「わが国が大嫌いだからだ」と断じている。

たしかに、アメリカは移民排斥の歴史をもっている。だが、それは事の一面である。出自の異なる多様な移民を受け入れ、社会発展の原動力にしてきたのも、アメリカ史の重要な一面である。というより、移民を社会の底力にする伝統は、アメリカ史の主流をなしている。トランプ氏自身、移民の子孫である。

そういう意味では、強引な移民排斥に反対するほうが、アメリカを愛する態度であり、トランプ氏のほうが「アメリカが大嫌い」なのである。トランプ氏のほうが、「嫌なら出て行けばよい They are free to leave if they want. 」と言われるべき人物である。

むろん、「不法」な移民をどうするかという問題は残るのだが、今回、この TIME の記事に、"decorum" という語があるのが目を引いた。

"Trump begins by threatening a dramatic shift in a particular policy, often testing the limits of presidential power and decorum. "

decorum は、品格、礼節といった意味のラテン語。

「不法」な移民がアメリカ社会で果たした役割を認め、礼節をもって彼らを扱うこと。それがアメリカの歴史に誇りを加えるのではないだろうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?