鼻はひとつかふたつか どちらにするかは話し手が決める

「分配単数」と呼ばれる英語の現象があって、文法書には次のような例文が載っている。

① We smell with our noses.

② We smell with our nose.

どちらもありうる文だが、この例文をあげた文法書は、「一般的傾向としては①(複数形)が使われる」と述べるだけで、どうしてどちらもありうるのか、①と② の違いはなにか、まったく説明していない。語と語の関係を平面的につなぐ従来の文法では、うまく説明できないからである(江川泰一郎『英文法解説』金子書房、1991年、16頁)。

どちらの文もありうる理由は、文とは話し手が視点を移動しながらつくる観念の構築物だからである。

たとえば、

③ The boys turned their faces to the camera.

これは少年たちの全体をカメラが写しているので、faces と複数形になっている。ところが、

④ Some birds sing in order to attract a mate.

これが「分配単数」と呼ばれるもので、この場合、話し手の視点が文中で移動している。 some birds がいる場面のあと、そのなかの一羽の鳥へと、話し手は場面を絞り込んでいる。異性をひきつける様子には個別性が感じられるからである。

最初の例文にかえると、

① We smell with our noses.

ここでは、話し手はカメラを引いたまま、 we がnoses で匂いをかいでいる場面を描いている。

② We smell with our nose.

この場合、話者はいったんweという全体を撮影したあと、一人の人間の鼻 nose が匂いをかいでいるシーンへとズームインしている。

最後に、おもしろい例を。

Elephants make a big poop.

話し手は、ゾウが何頭もいる場面 elephants を写したあと、一頭のゾウにズームインして、大きなフンがポロリと落ちるところを目前に見ている。

これが

Elephants make big poops.

とすると、たくさんのゾウがいくつものフンを落とす場面が出てきて、あまりかわいくない。

<単数か複数か>という英語の基本感覚は、正確さだけでなく表現としてのおもしろさもつくっている。




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三浦陽一

英語の基本日記 日本に英語がない理由

日本の英語熱は今も高い。ところが、そもそも日本に英語はない!... そういう角度から考えてみます。
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