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14歳のわたしへ

※この記事は、BUMP OF CHICKENが現在開催しているライブツアー「ホームシック衛星2024」のネタバレがございます。今後行かれる方、ネタバレが苦手な方は十分お気をつけください。

たしか14歳のころ、BUMP OF CHICKENのカルマに出会った。

カルマは『テイルズ オブ ジ アビス』というPS2のゲームの主題歌で、2005年に発売された曲だ。発売されてから数年後、兄がジアビスをプレイしはじめたことがきっかけでカルマを知った。疾走感のある、リズムのいいメロディー。ゲームのオープニング映像にぴったりで、その映像をみながらしょっちゅう一緒に歌っていた。

バンプの代表曲として挙げられるのは、おそらく天体観測だろう。だが、わたしにとってのバンプはカルマだった。カルマでバンプを知り、ほかの曲もチェックするようになった。

そのなかでも、2007年の12月に発売された『orbital period』というアルバムが一番好きだった。カルマが収録されており、中高生のときに繰り返し聴いていたのを覚えている。才悩人応援歌、プラネタリウム、花の名、涙のふるさと……。昔ほどではないが、いまでもよく聴く定番ソングたちだ。

そのアルバムを引っ提げてのツアーが、ふたたび開催されることになった。「ホームシック衛星2024」である。

時は流れ2024年、我々は初めてこの四人で公の場で演奏した1996年2月11日をバンドの結成記念日として定めているのですが、冒頭に書いた通り2024年の2月11日で結成28年目を迎えます。 今度はBUMP OF CHICKENメンバーではなく、BUMP OF CHICKENそのものが28歳になります。 BUMP OF CHICKENという看板が28年周期の節目を迎えるという事です。 これを我々は看過できませんでした。 だからこのタイミングでもう一度「ホームシック衛星」をやろうぜという事になりました。

BUMP OF CHICKEN TOUR ホームシック衛星2024 より一部引用

わたしはライブに行くことが好きで、年に10回前後、いろんなアーティストのライブへ行く。チケットをゲットするためにはまず所定のサイトで申込みをし、当選しなければならないのだが、バンプは今まで一度も当たったことがなかった。
また学生のころは田舎に住んでいたこともあり、開催地や日程的に都合が合わず、いろんなライブを見逃してきた。
いつかバンプに会いに行きたい、カルマをライブで聴きたいと、ずっと願っていた。

その願いを、わたしは先日ようやく叶えることができた。

Kアリーナ!

orbital periodを引っ提げたツアーということは、収録されているカルマを歌う可能性が高い。そう予想したわたしは、最速先行に申し込むべくシリアルナンバーがついてくるライブDVDを予約。運良くツアー2日目であるKアリーナ公演に当選した。

ライブがはじまると、ボーカルの藤くんが開口一番こう告げた。

「どうも、BUMP OF CHICKENです。君に会いに来たぜ」

この言葉を聞き、はじまってすぐにも関わらずわたしは涙が溢れてしまった。ずっと会いたかった人から「会いに来た」と言われた喜び。泣かずにはいられなかった。会いに来たよ、わたしもバンプに会いに来たんだよ。

リバイバルツアーということもあり、学生時代に聴いていた曲をたくさん披露してくれた。先ほど挙げた才悩人応援歌や花の名、ほかにもいままで何回も聴いてきた曲たちを生演奏で聴くことができた。その歌を、メロディーを聴くたびに、当時の思い出がフラッシュバックする。教室で友達と「この曲いいよ」とオススメしあったことや、布団にもぐって静かに聴いた夜のこと。あの日の自分が心のなかに現れ、一緒にライブを楽しんでいた。

そんなとき、曲の間奏で藤くんが突然話しかけてきた。

「大勢のなかのひとりだと思うなよ。俺は”君”に会いに来たんだ」

嬉しくて思わず笑った。そして笑いながら、また泣いた。

わたしはネガティブである。ライブに行くことが趣味なので、周りからはよくアクティブだと言われるが、ライブ以外は家に引きこもっているただのオタクだ。秀でた才能や、目指している夢があるわけでもない。しかも世間一般が考える幸せのルートとは逆方向へと進んでいる、しがない人生。その現実がふと目の前に立ちはだかり「何やってんだろ」「人生どうでもいいな」と感じては自暴自棄になる。問題無いでしょう、一人くらい消えたって。期待されるような命じゃない。

そんなわたしに対して、藤くんは「君に会いに来た」と何度も言ってくれた。その力強い言葉に、わたしの冷え切った心は熱くなった。
一緒に行った友達もとなりで静かに泣いていた。藤くんのあの言葉に、その場にいた全員がきっと心を打たれ、救われたと思う。

ライブも終わりに差し掛かったころ、ずっとずっと聴きたいと願っていた曲のイントロが流れた。バンプに出会うきっかけとなった、大切な曲。言葉にならない思いで胸がいっぱいになった。
絶対に泣くと予想していたのに、ここではなぜが涙は出なかった。むしろその曲が終わるまでずっと笑顔で、ずっと腕を振り上げていた。ゲームの主人公・ルークの髪の色と同じ赤で一色になった会場。嬉しい!楽しい!と、心に現れた自分が叫び続ける。

そんな14歳のわたしに、いまのわたしは声をかけてあげた。「やっとバンプに会えたぞ」と。
君がいままで頑張ってきたから、会えたんだぞ」と、めずらしく褒めてあげた。

ベースのチャマはセンターステージに何度も来て、来場者を盛り上げてくれた。ギターのヒロくんはスタンド席のことを「賑わい御膳」と例えていておもしろかった(段々になっているスタンド席がそう見えたらしい)。
藤くん、チャマ、ヒロくんがセンタステージで演奏するなか、メインステージでドラムを叩いていたヒデちゃんの姿を、わたしは目に焼き付けたよ。

アンコールも終わり、藤くんだけがステージに残る。一言一句合ってはいないけれど、このような言葉を残してステージを去っていった。

「寒いなか、ずっと外で待っていてくれたんでしょう?風邪を引かないか心配です」
「眠れなかったら本当は電話とかしたい。でもそれはできない。だから音楽を作っています」
「お風呂に入ってあったかくして寝てね。今日は来てくれて本当にありがとう。また会おうね。じゃあね。おやすみ」

なんて優しい人なんだと、止まったはずの涙がまた溢れ出る。こんなにも優しい「おやすみ」を聞いたのは初めてだった。
大げさではなく、生きていてよかったと思った。確かめる間もないほど、生きるのは最高だ。

あの最高の夜から1週間が経った。
前と同じ平凡な日々を過ごしているが「バンプに会った」という事実が、わたし自身を支えてくれている。そして「何回転んだっていいさ」「何回迷ったっていいさ」と、ほんの少しだけ前向きになれた。

ありがとう、BUMP OF CHICKEN。必ず"また"僕らは出会うだろう。その日を楽しみにしています。

わたしの青春

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