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医療人たちはどう生きるか

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医療・保健・福祉、そして介護のこれからを考える。2025年を超えたその先は、よりよい質の勝負になる。納得する医療とはなにかを考えながら、書いていくシリーズです。(photo by… もっと読む
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#医療

死亡確認の後に…

死亡確認の後に…

「心音、呼吸音の停止、瞳孔の拡大、対光反射の消失を確認しました。これをもちまして、死亡確認とさせていただきます。死亡時刻は○時○分です。」

主治医は深々と頭を下げる。長く頭を下げ、家族が少し落ち着いた頃、主治医は患者のこれまでの経過を説明した。事実を述べた上で、剖検の希望の有無を訪ね、希望しないことを確認して、僕と主治医である指導医は部屋を去った。

僕にとって医師になってから、はじめての担当患

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病気になる理由なんてない。

病気になる理由なんてない。

「先生、なんでこうなってしまったんでしょうか?」

時に、患者にこう聞かれる。病気になってしまったことに後悔しながら、なぜ自分が過酷な状況に追い込まれたのか、みんな、その理由が知りたがる。

でも、僕は答えれない。その事実にいつももどかしくなる。それはきっと他の医療者も同じなんだと思う。その理由は、、、

予防医療、予防医療と叫ばれて久しい。がん検診に代表されるがんはもちろん、心筋梗塞、大動脈解離

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病院の建築的「余白」を考える

病院の建築的「余白」を考える

「先生、新患来るから、救急外来集合で!」

「〇〇さん、検査らしいから、よかったら、見に行ってみて」

「先生、出張申請に、管理課まで来てください」

 研修医はよく呼ばれる。PHSで呼び出されて、病院の隅から隅までいくことが多い。研修医は、1−3ヶ月ごとに救急科、小児科、麻酔科といった具合に診療科が変わるので、それぞれ病棟の場所が違うし、救急外来も行くし、患者さんを連れて検査に行くためにそれぞれ

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立場の逆転が医療を変える

立場の逆転が医療を変える

「え!?マジっすか」

思わず、僕は声をあげた。驚いた。

地元で「老いと演劇」のワークショップが行われるというfacebookの投稿だった。このワークショップ、東京にいた時に何度も行こうとしたが、日程が合わずに断念した経緯がある。いわば因縁のワークショップと言ってもいい。それが、兵庫県の片田舎で行われるというから驚いた。

(い、いきたい……)

と心の声が漏れる。

Facebookページから

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母の死から僕を救ってくれたのは…

母の死から僕を救ってくれたのは…

2週間にわたる医学部卒業試験の1日目が終わり、2日目に向けてカフェで勉強していたとき、一本の電話が入った。

「母」と表示されたケータイの画面。

でも、電話に出たのは父だった。

「母がくも膜下出血で倒れて、厳しい状況だ」とのことだった。信じたくなかった。でも事実だった。心臓がいつもより早く鼓動する音が聞こえるほど妙に冷静だったのが、逆に怖い。

大学に手続きを確認した後、僕は運ばれた病院のある

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命を救うだけが医療の役割じゃない

命を救うだけが医療の役割じゃない

高2の夏に自宅で介護していた祖父が亡くなった。

僕の誕生日だった。

その日、僕はこれまで生きてきた人生の中で、一番泣いた日だった。

なぜ泣いていたのかは今は思い出せない。ただ覚えているのは、僕が朝起きたときにひっそりと自宅で息を引き取ってた祖父の生暖かい手の感触だ。

その感触に祖父がまだ生きているような感覚を覚えた。目の前から大切なものがなくなった喪失感と自分の無力感から泣いていたような気

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医療はおしゃれにやる時代

医療はおしゃれにやる時代

「え、1人だけですか!?」

僕の心の声が喉元をおさまらず、声になってつぶやかれた。

今日は、医療教室の日。「病気になったときにどこにかかればいいのか」というテーマで僕たち医学生が住民向けに説明する日だ。木目調のちょっとおしゃれなスペースには20人を超える住民が集まり、僕たち医学生4人は人の多さに驚きながら、講義をする予定だった。

そう、「だった」のだ。

実際に集まった人数はたったの5名。し

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医療系学生の可能性を広げるコミュニティ、メディア10選

医療系学生の可能性を広げるコミュニティ、メディア10選

医療系学生は時間がない。

授業は基本全て必修フルコマだし、実習は何時に終わるかわからない。その上、テストは過酷で、部活やバイトもするともう自分の時間はない。

時間がなくても、僕は、医学以外の世界も知ってみたいとずっと思っていました。ただどこ行けば何見ればいいかわからないから、いろんなメディアやコミュニティに顔を出し続けました。初めは医療系の学生団体、そこから医療以外の学生団体や医療以外のコミュ

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医学生が部活と勉強だけで学生生活を終えてしまう2つの理由

医学生が部活と勉強だけで学生生活を終えてしまう2つの理由

「こんなにのびるのか!」と驚いた。

なんとなく、ツイートした投稿がリツイート・いいねなど多くのレスポンスをいただいた。

IBTD問題
「医学生、部活とテスト勉強だけで終わってしまう問題」

これだけの共感が生まれるということはやはり医学生は部活と勉強だけで終わってしまうんだろうか。本来のやりたいことを持ちながらも悶々としている医学生が多いのかもしれないなと思った。一体なぜこんなにバズったのだろ

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医療系学生コミュニティマッピングを作ってみて、無意味だと確信した話

医療系学生コミュニティマッピングを作ってみて、無意味だと確信した話

先日、医療系学生団体マッピングを作りました。学生主体型と法人・病院主体型、臨床色強めと臨床色弱め。二軸でまとめてみました。

一年生時の医療政策の勉強会から始まり、救急系、臨床推論系、官公庁インターン、学生団体運営、国際保健、地域包括ケア、そして場づくり、と6年間で多くの団体に属したり、行ったりした経験を生かして、我ながらうまくまとまり、普段、バズることのない僕が、ちょっと驚くくらいにはRT・いい

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医師がまちなかで屋台を引くってどういうこと?

医師がまちなかで屋台を引くってどういうこと?

「医者が屋台をひく」
突拍子もないことがこんなに”まち”と”医療”を結びつけるなんて、最初は思ってもいませんでした。

2016年10月、東京谷根千での芸工展(暮らしの中の創作活動を紹介し、交流するお祭り)に突如現れた「モバイル屋台DE健康カフェ」。当初、地域のソーシャルキャピタル(地域のつながり)を見つけるために、移動できる屋台で街に繰り出しました。地域のつながりがあるほど、健康にいいと言われて

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医療・介護業界がサカナクションのライブに見習うべき3つの理由

医療・介護業界がサカナクションのライブに見習うべき3つの理由

 サカナクションのライブがエモ過ぎた。10以上のアーティストのライブに行った中で、間違いなくダントツで面白かった。ライブ当日に文字にしたためると、間違いなく、エモい!面白い!楽しい!熱い!の連呼になると思われるので、落ち着いた翌日の今、医療との共通点を考えつつ、言語したいと思う。

 10/1に幕張メッセで行われた「SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY Arena

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