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医療人たちはどう生きるか

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医療・保健・福祉、そして介護のこれからを考える。2025年を超えたその先は、よりよい質の勝負になる。納得する医療とはなにかを考えながら、書いていくシリーズです。(photo by… もっと読む
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#コラム

レッテルを張ることとタグ付けすること

レッテルを張ることとタグ付けすること

僕ら医療者はいつも患者にタグ付けをしてしまう。

「喫煙歴のある60代男性の呼吸困難」、「独居の80代男性の認知症患者」といった具合である。前者が救急外来に来た場合は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)かな?心不全や肺炎も考えないといけないななどと考える。後者の患者が外来に通院している場合は、生活が一人でうまくいけるのか、連絡が取れる親族はいるのか、そろそろグループホームの入所時期だろうかとゆくゆくのこ

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医療者が引く移動式屋台カフェの正体とは。YATAI CAFEが生み出す健康的な空間の理由。

医療者が引く移動式屋台カフェの正体とは。YATAI CAFEが生み出す健康的な空間の理由。

【2022年1月28日更新】

「屋台やってる先生ですよね?」と最近よく声をかけられる。医師である僕は、医療福祉関係者が街中で移動式屋台でコーヒーを提供するお店「YATAI CAFE(モバイル屋台de健康カフェin豊岡)」を行っている。月に1回ひっそりと移動式屋台を引いて、訪れる人にコーヒーを物々交換で提供する。

この一風変わった活動を、多くのメディアに取り上げていただいた。神戸新聞、朝日新聞、

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Withコロナ時代の「コミュニティ」,「社会的処方」を考える

Withコロナ時代の「コミュニティ」,「社会的処方」を考える

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が蔓延している。4月18日現在で世界で15万人もの人がなくなり、日本でも感染者数が1万人を超えた。未曾有の感染症だ。COVID-19は死亡率が高く、集団免疫を獲得するまで観戦を続けると日本でも数十万人の死亡者が見込まれる。そのため、世界を始め日本でも、感染者数を爆発的に増やすことなく、医療崩壊を防ぎながら、ワクチンや治療法が確立するまでの間、耐え忍ぶ戦

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死亡確認の後に…

死亡確認の後に…

「心音、呼吸音の停止、瞳孔の拡大、対光反射の消失を確認しました。これをもちまして、死亡確認とさせていただきます。死亡時刻は○時○分です。」

主治医は深々と頭を下げる。長く頭を下げ、家族が少し落ち着いた頃、主治医は患者のこれまでの経過を説明した。事実を述べた上で、剖検の希望の有無を訪ね、希望しないことを確認して、僕と主治医である指導医は部屋を去った。

僕にとって医師になってから、はじめての担当患

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病気になる理由なんてない。

病気になる理由なんてない。

「先生、なんでこうなってしまったんでしょうか?」

時に、患者にこう聞かれる。病気になってしまったことに後悔しながら、なぜ自分が過酷な状況に追い込まれたのか、みんな、その理由が知りたがる。

でも、僕は答えれない。その事実にいつももどかしくなる。それはきっと他の医療者も同じなんだと思う。その理由は、、、

予防医療、予防医療と叫ばれて久しい。がん検診に代表されるがんはもちろん、心筋梗塞、大動脈解離

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病院の建築的「余白」を考える

病院の建築的「余白」を考える

「先生、新患来るから、救急外来集合で!」

「〇〇さん、検査らしいから、よかったら、見に行ってみて」

「先生、出張申請に、管理課まで来てください」

 研修医はよく呼ばれる。PHSで呼び出されて、病院の隅から隅までいくことが多い。研修医は、1−3ヶ月ごとに救急科、小児科、麻酔科といった具合に診療科が変わるので、それぞれ病棟の場所が違うし、救急外来も行くし、患者さんを連れて検査に行くためにそれぞれ

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立場の逆転が医療を変える

立場の逆転が医療を変える

「え!?マジっすか」

思わず、僕は声をあげた。驚いた。

地元で「老いと演劇」のワークショップが行われるというfacebookの投稿だった。このワークショップ、東京にいた時に何度も行こうとしたが、日程が合わずに断念した経緯がある。いわば因縁のワークショップと言ってもいい。それが、兵庫県の片田舎で行われるというから驚いた。

(い、いきたい……)

と心の声が漏れる。

Facebookページから

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母の死から僕を救ってくれたのは…

母の死から僕を救ってくれたのは…

2週間にわたる医学部卒業試験の1日目が終わり、2日目に向けてカフェで勉強していたとき、一本の電話が入った。

「母」と表示されたケータイの画面。

でも、電話に出たのは父だった。

「母がくも膜下出血で倒れて、厳しい状況だ」とのことだった。信じたくなかった。でも事実だった。心臓がいつもより早く鼓動する音が聞こえるほど妙に冷静だったのが、逆に怖い。

大学に手続きを確認した後、僕は運ばれた病院のある

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命を救うだけが医療の役割じゃない

命を救うだけが医療の役割じゃない

高2の夏に自宅で介護していた祖父が亡くなった。

僕の誕生日だった。

その日、僕はこれまで生きてきた人生の中で、一番泣いた日だった。

なぜ泣いていたのかは今は思い出せない。ただ覚えているのは、僕が朝起きたときにひっそりと自宅で息を引き取ってた祖父の生暖かい手の感触だ。

その感触に祖父がまだ生きているような感覚を覚えた。目の前から大切なものがなくなった喪失感と自分の無力感から泣いていたような気

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医療はおしゃれにやる時代

医療はおしゃれにやる時代

「え、1人だけですか!?」

僕の心の声が喉元をおさまらず、声になってつぶやかれた。

今日は、医療教室の日。「病気になったときにどこにかかればいいのか」というテーマで僕たち医学生が住民向けに説明する日だ。木目調のちょっとおしゃれなスペースには20人を超える住民が集まり、僕たち医学生4人は人の多さに驚きながら、講義をする予定だった。

そう、「だった」のだ。

実際に集まった人数はたったの5名。し

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医療系学生の可能性を広げるコミュニティ、メディア10選

医療系学生の可能性を広げるコミュニティ、メディア10選

医療系学生は時間がない。

授業は基本全て必修フルコマだし、実習は何時に終わるかわからない。その上、テストは過酷で、部活やバイトもするともう自分の時間はない。

時間がなくても、僕は、医学以外の世界も知ってみたいとずっと思っていました。ただどこ行けば何見ればいいかわからないから、いろんなメディアやコミュニティに顔を出し続けました。初めは医療系の学生団体、そこから医療以外の学生団体や医療以外のコミュ

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医学生が部活と勉強だけで学生生活を終えてしまう2つの理由

医学生が部活と勉強だけで学生生活を終えてしまう2つの理由

「こんなにのびるのか!」と驚いた。

なんとなく、ツイートした投稿がリツイート・いいねなど多くのレスポンスをいただいた。

IBTD問題
「医学生、部活とテスト勉強だけで終わってしまう問題」

これだけの共感が生まれるということはやはり医学生は部活と勉強だけで終わってしまうんだろうか。本来のやりたいことを持ちながらも悶々としている医学生が多いのかもしれないなと思った。一体なぜこんなにバズったのだろ

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医療系学生コミュニティマッピングを作ってみて、無意味だと確信した話

医療系学生コミュニティマッピングを作ってみて、無意味だと確信した話

先日、医療系学生団体マッピングを作りました。学生主体型と法人・病院主体型、臨床色強めと臨床色弱め。二軸でまとめてみました。

一年生時の医療政策の勉強会から始まり、救急系、臨床推論系、官公庁インターン、学生団体運営、国際保健、地域包括ケア、そして場づくり、と6年間で多くの団体に属したり、行ったりした経験を生かして、我ながらうまくまとまり、普段、バズることのない僕が、ちょっと驚くくらいにはRT・いい

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医師がまちなかで屋台を引くってどういうこと?

医師がまちなかで屋台を引くってどういうこと?

「医者が屋台をひく」
突拍子もないことがこんなに”まち”と”医療”を結びつけるなんて、最初は思ってもいませんでした。

2016年10月、東京谷根千での芸工展(暮らしの中の創作活動を紹介し、交流するお祭り)に突如現れた「モバイル屋台DE健康カフェ」。当初、地域のソーシャルキャピタル(地域のつながり)を見つけるために、移動できる屋台で街に繰り出しました。地域のつながりがあるほど、健康にいいと言われて

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