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暮らしの保健室をアップデートする

暮らしの保健室はやっぱりケアとまちづくりの先駆け的な存在である。2011年というまだ医療者が病院を出ること自体が懐疑的な時代に、病院を出て、団地の一階に誰でも、医療介護の対話が気軽できる場所を作った。それが本当に素晴らしいと思うし、これからも讃えられることだと思う。暮らしの保健室は全国各地に広がり、訪問看護ステーション、社協、行政などの手によって、それぞれの街で展開している。前回、暮らしの保健室を取り上げたときに、「暮らしの保健室の本質は商店街にあることではない」と言った。街中に気軽に医療相談できることが本質ではない。病院やクリニックでする医療相談をただ街中に場所を移しただけになってしまってはいけない。暮らしの保健室という名の通り、その人の暮らしの延長線上で、「その人らしさを取り戻す対話」をすることにある。一方的に医療相談するのではなく、医療者とその人が双方向な対話することでその人らしさが見えてくる。「介護に困っている」という女性に介護サービスを紹介するだけではなく、その人が介護について気兼ねなく相談できるコミュニティを求めていたり、障害者の方がストレスを抱えていたとき、その人らしい表現方法を一緒に見つけたりすることは、一方的な医療相談だけではなく双方向な対話をしなければ出てこないだろう。そういう対話の場こそ暮らしの保健室の本質だと僕は思う。

秋山正子さんによると、暮らしの保健室の役割は6つあるという。

6つの役割
①暮らしや健康に関する相談窓口ー医療職が無料で相談
②在宅医療や病気予防についての市民との学びの場ー健康教室など
③受け入れられる安心な居場所ーアクティビティ、食事会
④世代を超えて通ながる交流の場ー大学生らも巻き込む
⑤地域ボランティアの育成の場ーケース勉強会、事例検討会
⑥医療や介護、福祉の連携の場ー利用者からボランティアへ

(こちらの本から引用させてもらいました)

医療相談だけではなく、医療や介護の学びの場であり、その人の居場所となり、連携の場となる。そんな多機能をもつ医療介護の拠点としての役割が暮らしの保健室にはある。一方で、2011年にできたものであり、2019年となった今。もう少し改善するべき点もあるのではないかと個人的には思っている。それを少しみんなで考えれればと思う。

まず、アクセス。商店街や団地の一角など、街中にある場合が多い一方で、基本的には医療相談の場なので、医療相談という目的がない人が入りにくい。どこか生きづらさを抱えていても、相談しよう、そして暮らしの保健室の扉を開けようと思う人はどのくらいの割合だろうか。ましてや生きづらさに気づけている人も少なくないはず。僕らはどうやったらそういう人たちに来てもらえる暮らしの保健室を作れるだろうか。銀木犀の話でも紹介した通り、”おしゃれ””美味しそう””楽しそう”といったポジティブな感情を利用することは行動経済学的に理にかなっている。モバイル屋台de健康カフェといったカフェの形や長崎二丁目家庭科室もその一つ。そこにいけば自分らしさを取り戻せるだろうなと思えるようなワクワクするご機嫌な場にすることは一つの方法。またすでにある場を使わせてもらうことも一つの方法だと思う。すでにある場に紐づいた人たちはこちらからアプローチをかけることなく巻き込まれていく。長崎二丁目家庭科室はゲストハウスシーナと一平の1階を間借りしていたし、モバイル屋台de健康カフェは映画館の前に出店している。カフェを目的に来た人だけではなく、映画を見に来た人がモバイル屋台de健康カフェによってくれることはよくある光景だ。気づいたら医療だったパターンに詳しく書いている。

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