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離れる日記04

二度あることは三度ある。喉元すぎれば熱さ忘れる。けど火傷の痕はのこりつづける。

1F入り口にある金属探知機やエレベーター、待合室にも慣れたもの。指定の10分前に青いベンチに到着。相手は10:00から来ているはずだ。待合室は分かれているが同じフロアにいるのだな。廊下ですれ違ったらいやだけど、髪型も服装も去年とはちがうから遠目なら気づかれないかもしれない。

源泉徴収票を持ってきてくださいと言われたのでパソコン画面上に準備。並んだ数字をみても実感がわかないし税金が多いとも少ないとも思わない。ただただ数字の羅列。約9年の和はいくらになるのかな。

11時ちょっと前に部屋へ呼ばれる。椅子が6つ並んだ殺風景な部屋。カバンとコートを奥に置き、真ん中の席に座る。数分前まで相手が座っていただろう席。

そうそう、こんな顔をした調停員さんだった。相変わらず穏やかで品がいい。トラブルとは無縁な人生を送ってそうだけど、どんなきっかけでその役割を担おうと思ったのか。へたなドラマや小説よりもリアルで奇なりな他人の人生に触れて、神妙な顔で頷き、小さな文字でメモをとる2人の男女。こんな他人だからこそ、親兄弟や友人、同僚には言えないことが言えるのだが。

いろいろと話をしたが、警察官といっしょに玄関まで行った日が決定的だったのだなと再認識した。ドアがバタンと閉ざされる音。鍵がガチャリと閉まる音。階段をドスドスと上がっていく足音。一生忘れないだろうし、あの日、子どもの顔を見ていたらちがう結論に向かっていたかもしれない。たらればかもには意味がない。

相手→自分→相手→自分→相手
およそ3時間、出たり入ったりして今回は終了。また来月。相手が泣きながら話していたと聞いた。罪悪感や後悔、謝罪や悔しさや感謝や要望。漢字にすると大げさだが、なぜ2人とも見て見ぬ振りをして相手に伝えずに放置してきたのだろうか。毎日感じたたわいもないこと、とりとめのないこと。そんな話を気兼ねなくできるのが家族だ。

時が解決することなんてひとつもない。地面には塵や雪が降り積もっては風にとばされて消える。しかしそこには痕跡がのこる。すこしずつ薄汚れていく。

#日記 #離婚 #調停

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