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日本画はじめの一歩(デッサン〜下塗りまで)

先週の金土日の三日間は「日本画Ⅰ」のスクーリング(前半)で吉祥寺に。

スクーリング概要

前半/後半3日間の計6日間で、基本的な日本画の表現法、制作手順、素材の扱い方などを学ぶ実技授業です。前半の3日間は、はじめに必要となる用具やルール(絵の具や膠は流しにそのまま流すと詰まりの原因になるので拭き取ってから洗うなど)の前提講義、その後モチーフ(百合の花)のデッサン、骨描き(こつがき)、下塗りまで。後半の3日間で彩色をして作品を完成させるというスケジュールです。

1教室15人ぐらいに対して講師1人が指導するスタイルで、教室ごとで少し進行度合いや指導内容が異なる感じでした。日本画コースの2年生までの必須科目ということもあって受講生のほとんどは絵画系コース志望の2年生もしくは絵画系コースの学生で、デザイン系コースの学生はわたし一人でした(そりゃそうですよね…)。

デッサン

今回はF15サイズでの制作。モチーフの「百合の花」は一人に二輪ずつ配られます。描くのは一輪でも二輪でもOK。先生のお手本が一輪だったからかほとんどの人が一輪の構図でしたが、せっかく二輪もらったのでわたしは二輪の構図に。そのぶん百合の「花」自体は小ぶりになりました。

東京藝大出身の講師の先生曰く、このあと「骨描き」という墨で輪郭線を引く作業があるので「線」を意識したデッサンをするのと、後半以降は実物のモチーフを見ずに彩色をしていくことになってデッサンが唯一の頼りとなるので、細密描画のように細かなところや陰影も描いておくのがポイントとのことでした。

加えて先生からのアドバイスでは、モチーフをそのまま正確にデッサンするだけでなく「自分の都合のいいように」変えても良いとのこと。たとえば、そのまま正確にデッサンすると同じ方向になってしまう「つぼみ」の角度を意図的に変えてリズムを作ってみたり。有名な画家さんも意図的にやられているのだとか。

初日は、デッサンの途中で終了。

水張り

二日目は、デッサンのつづきと水張りした描画材へのトレース。

今回の描画材は「雲肌麻紙(くもはだまし)」という厚手の和紙。雲肌麻紙には墨や絵具のにじみを(多少)おさえるための処理がされている「ドーサ引き」というのと、そのままの「生」があり、今回は「ドーサ引き」のほうを使います。

この雲肌麻紙、値段が高い…三六判(中判)の半分のサイズでも1枚で3400円(税別)!!!大量生産できるようなものではないからでしょうか。日本画はお金がかかるとは聞いてましたが、こんな高い紙なんて人生で買ったことない…そして和紙も日本画の絵具も後継者問題で作り手がいなくなってきていることを先生は嘆いてらっしゃいました。

その雲肌麻紙を木製パネルに水張りします。日本画は水彩画なので彩色している間に描画材が波打っちゃったりすると描きにくくなってしまうため、水を含ませて紙を伸ばした状態でパネルに張り付けておくことで、彩色で水を含んで伸びても表面が波打たないようにする必要な準備です。

雲肌麻紙の裏面(ざらっとしているほう)に刷毛で水を塗ります。中心から外に向かって満遍なく。最後に四方を一回り塗るのが職人さんのコツなんだとか。

パネルに糊付けするのりしろのところに「でんぷん糊」を塗ります。でんぷん糊の「ヤマト糊」、緑色のチューブは今も健在!使うの小学校のとき以来かも!のりしろの外側半分に少し多めに塗っておくがコツとのこと。画面のほうまで糊が進出しちゃうと画面にシワができる原因になるので丁寧にやるのがポイント。

糊を塗ったらパネルの枠に糊付け。パネルの角のところは、外方向に引っ張りながら貼ると画面の角の部分にシワなくキレイに貼れるとのこと。とはいえ強く引っ張りすぎると水と糊が塗られて柔らかくなっている紙が切れます。もちろん、やらかしました…のりしろの部分だったので大事には至りませんでしたが、引っ張る際は要注意です。

以上で水張りは完了。去年、造形基礎Ⅲのスクーリングで画用紙を水張りテープを使ってやったときよりは、和紙のほうが紙の縮む時間に余裕もあって簡単だったかな。

水張りした画面が乾くまで昨日のつづきをやって、デッサンはいったん完成。

画面が乾いたところで、トレーシングペーパーでデッサンを画面に転写します。先生からは、このとき構図を変えたりデッサンの一部分を変更するのもアリ、とのことで、右上の花の角度を少し上向きに変えつつ、二輪の花が中心に固まり過ぎていたので両者の間を少し離しました。

硬めの鉛筆(Hなど)でトレーシングペーパーに写したら裏面は柔らかめの鉛筆(4Bなど)で線の部分を塗って表から再度なぞります。「水性」のカーボン紙を使う方法もあるそうです。表からなぞる際は赤のボールペンを使うとなぞったところとなぞってないところがわかるのでやりやすいです。しかし、インク多めのボールペンを使うと少し力を入れ過ぎるとトレーシングペーパーを突き抜けて和紙のほうについちゃう(ここでもやらかしました…)ので、記念品でもらうような「安い」赤のボールペンが最適のようです。

トレースの途中で二日目終了。

骨描き

前半最終日の三日目は、骨描きと後半の彩色に向けた下塗り。

骨描きとは、トレースした鉛筆の線を上から墨で引いていく作業です。集中力のいるかなり地道な作業です…

鉄の針金のような線という意味の「鉄線描」という一定の太さの線を濃い目の墨で描いていきます。わたしは通信の課題2のために買っておいた「則妙筆」でやったので細めの線も引けましたが、売店の世界堂(武蔵美のキャンパスには画材店の「世界堂」さんの売店がある)で「日本画セット(日本画Ⅰ用の初心者用セットで、雲肌麻紙も入って7000円ぐらい)」を買った人は、セットに入っている筆が「彩色筆の8号」と太めの筆で少しやりにくそうでした。則妙筆よりも細くて鉄線描に適した「削用筆」というのもあるようです。

(骨描き前と後)

下塗り

骨描きが終わったら、牡蠣の貝殻から作られた日本画の白色絵具となる「胡粉(ごふん)」と墨を混色した「具墨(ぐずみ)」で下塗りをします。

先生曰く、何層も重ねて描いていく日本画は「下の層になるほど膠(にかわ)は濃く、上の層になるほど薄くするのが基本」とのことで、重ね塗りをしていくうえでも下塗りはとても重要とのことです。

固形(粉)状態の胡粉を白色絵具として溶いていく過程で作る、胡粉と膠(絵具の定着材)を合わせながら作る「団子」の膠のさじ加減がとても難しい…マシュマロとか白玉団子ぐらいの絶妙な柔らかさにする必要があり、まるで「水を入れすぎてはダメ!」と怒られてしまうような蕎麦打ちのさじ加減のようでした。

団子ができたら長細く伸ばして絵皿の上に螺旋状に広げ、お湯を加えて溶いていきます。指で溶かしていく感覚がなんとも気持ちイイ。完全に溶いたら墨を加えて「具墨」の完成。色はグレーです。

具墨を塗る前に、背景部分に刷毛で水を塗って墨を落とす技を先生から教えてもらったので挑戦してみました。その上から具墨や水干(すいひ)絵具で色をつけると、墨の濃い部分と薄い部分で背景に濃淡が生まれるのだとか。

落とした墨がある程度乾いて、その上から刷毛で具墨を塗ったところで時間切れ。水干絵具での下塗りの色付けは家での宿題に。

これ以外にも、膠の作り方や絵具(天然、新岩、水干など)の原料の標本を見ながらの解説など、いままでに見聞きしたことのないことだらけで、日本画の奥の深さを垣間見ることができました。おもしろすぎる!!!

二週間後の後半は彩色です。

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