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我らトクシュブタイ

ニンジャを題材としたエンターテインメントは数多くある。それぞれの作中におけるニンジャの立場や使う武器などは大きく異なり、多様性に富んだニンジャ像があるが、全てに共通してニンジャは戦闘を行う。このニンジャスレイヤーでもそれは同じだ。作中において半神的ニンジャは圧倒的なカラテをふるい、時に超自然のジツを使い、人間を、社会を支配する。

単体でもこれだけ強いニンジャが、統率された部隊として機能したらどうだろうか?ただ集団で戦うのではなく、軍隊としてニンジャが戦ったらどうなるのか? この疑問の答えを見せてくれるのがニンジャスレイヤーの物理書籍最新刊、ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリである。

ニンジャスレイヤー第3部の敵組織であるアマクダリ・セクトに、「湾岸警備隊」と呼ばれる部隊がある。なにやら警察組織みたいなネーミングだが、その実極めて軍事的に組織された精鋭ニンジャによる戦闘部隊である。今回「ショック・トゥ・ザ・システム」と「グラウンド・ゼロ、デス・ヴァレイ・オブ・センジン」において彼らの活躍を見ることができるが、ここでは後者、ネオサイタマとキョートの戦争で活躍した6人の湾岸警備隊ニンジャ、「ストーンコールド隊」について1人ずつピックアッポしながらお話したい。


ヘヴィレイン

背中に記された「トクシュブタイ」のカタカナが象徴的な、銃火器やグレネード、タント・ダガーなどを用いる湾岸警備隊の中でもかなり近代ソルジャー的ニンジャだ。同じくトクシュブタイのカタカナを背負っていたファイアブランドは尖った兵装の描写が重点されていたのに対し、彼は不穏な殺意や殺害方法が重点的に描かれている。ストーンコールド隊の中で唯一本名が明かされ、ニンジャ化する前から湾岸警備隊でスラッシャーを務めていたという過去も明かされている。特筆すべきカラテやジツを持たないが、「兵士」としての高い戦闘能力や残虐性を示された非常に湾岸警備隊的なニンジャとして印象深い。
ところで彼はとあるトラップルームを利用して相手を殺害する戦法を得意とするのだが、これはストーンコールド隊の紹介なのでここでは紹介しないことにする。


アイアンクラッド

物体の運動エネルギーは、質量m、速度vとした時にmv^2/2と表せる。速ければ速いほど、重ければ重いほど、衝突時に大きな破壊作用をもたらせる。ならばどうする?大質量の砲丸をニンジャの筋力に任せて高速で投げつけて粉砕する。それがアイアンクラッドである。キョート側のニンジャ、リンボの超自然の鎧を破壊し、ストーンコールドにこじ開けさせた時には「ニンジャといえど物理法則には勝てないのか…」と関心した。前線のカラテ白兵戦と後方から支援砲撃、ストーンコールド隊の戦術的カラテ機能美の一端といえる。
今回わらいなく兄者によってビジュアライズされた姿に衝撃を受けたのは私だけではないだろう。確かに鋼鉄のように頑健そうな肉体である。が、まさかあのようなマスコットキャラクターめいた頭であるとは…私はあのNHKの茶色いマスコットを思い出した。


ソリティア

アメリカ軍がステルス戦闘機F-22を開発した時に掲げた戦術コンセプトは「First look、First shoot、First kill」であったという。敵に発見される前にアウトレンジから一方的に射撃して仕留める、非常に合理的な戦術だ。これを実践するのがこの女ニンジャ、ソリティアである。弓を用いて遠方から狙撃するのであるが、べらぼうに長い射程に高い制度、おまけにモータードクロが数射で沈む威力。巡航ミサイルか何かである。私が思うに、この矢はスリケンのようにカラテがエンハンスされているのでは無かろうか。いくらニンジャ筋力で強く引き絞っても弓矢が弱ければあんなに飛ばないどころか壊れる。実は彼女は高位ソウルの持ち主であり、あの矢はカラテ生成物であると考えても良いのでは。
今回兄者の御筆によってビジュアライズされた彼女だが、予想以上に乳房が大きかったのが印象的である。豊かな乳房は弦との接触が起こりやすい。きっとソリティアはサラシとかプロテクターとか色々使って乳房を防御しているのであろう。装束を脱いだらもっとすごいはずだ。


イリテイション

ストーンコールド隊のもう1人の女ニンジャにして、唯一の非戦闘員である。もちろんニンジャなのでモータルの兵士を殺すのは造作もなかろう、しかし彼女の真髄は、精神攻撃によって対象の感情を極度に増幅させるジツだ。しかも多人数に同時に使えるようで、敵兵をパニックに陥れて同士討ちさせるなどもできる。また記憶を引きずり出したりすることも可能なようで、かなり汎用性が高い。これは自軍の兵士の事情聴取に使われたが、その時に「ニボシ!」とか「カワイソ!」とか「バカ?」などとちょっと幼げな可愛らしい言い回しが見られる。私はこれが好きで好きでたまらない。
今回の兄者絵はどれも素晴らしいが、特に彼女のデザインは強力だった。少々心配になる程スレンダーな体型、髪によって隠れた目と覗く口元、如何にも精神攻撃を使いそうなヴィジュアルである。ジツを放つ時には髪の毛が激しく波打ち、そこから光る目が覗いたりするのだろう、間違いない。


ロングシップ

カタナを使うニンジャは作中に多く登場するが、その中で誰が好みかと聞かれれば私は彼を挙げる。使うのは普通のカタナではなく、鞘に仕組まれた電磁的加速機構付きによって超高速のイアイを繰り出すカタナである。めっっっちゃくちゃカッコイイ。「リニア・イアイド」だそうで。カッコイイ。リニアモーターカーそのままは流石に不可能というか巨大になり過ぎて腰に下げられないと思われるので、「鞘の冷却機構で超電導状態となった磁性体のカタナを、抜刀の瞬間に鞘の底面に仕込まれた超強力電磁石を作動させて加速させる」などと解釈した。超自然のジツが溢れかえるこの作品でそんな理屈を捏ねてどうすると思われるかもしれないが、彼に憑依したのは名無しのレッサーニンジャソウルあって欲しいし、自らのカラテでのし上がり、その実力を認められて最新技術による更なる高みを目指した結果のリニア・イアイドであって欲しい。少なくとも私はそう信じる。


ストーンコールド

このトクシュブタイの隊長である。相当に強い。特筆すべき武器やジツは無いが、ひたすらカラテが強い。カラテ無くしてニンジャ無し、あらゆる物事をカラテに帰着させるニンジャスレイヤーらしい敵である。どのくらい強いかというと、キックで敵ニンジャの足を破壊する時に「バオン!」などという意味不明な効果音がするくらい強い。蹴りを振り抜いたあと少し遅れて「バオン!」である。脚が音速を超えているのではなかろうか。とにかく強いのだ。この手のカラテ強者は、カラテを極めて強くなることそのものを目的とする場合がよくあるが、彼にとってあくまでカラテは作戦遂行の手段である。さながら戦闘機がミサイルを発射するように淡々と殺す。ここまで書くと感情を持たぬカラテ殺戮機械のようだが、軍隊式ジョークを好むユーモアを持ち合わせていたり、部下達にに肩ポンからのハンドサインするなど、なかなか味のあるキャラクターである。特に今回加筆された、上司ハーヴェスターとのやり取りはサツバツとユーモアが織り混ぜられていてとても良い。そういう点で、湾岸警備隊の中でも特にアーミー的ニンジャであると言える。



以上6名、湾岸警備隊の精鋭「ストーンコールド隊」である。ニンジャスレイヤーという作品の性質上、たくさんのニンジャが出てきては死ぬ。特に「ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ」はフジキドとアマクダリの戦いにおける大きな節目であり、末端から幹部まで大量のニンジャが戦い、そして死ぬ。これを読んでいる貴方はおそらくそれを既に知っているであろうが、もしまだこの本を手に取っていないならば、あるいはロンゲストに至るまでのフジキドの戦いを目にしていないのであれば、是非それをその目で確かめて欲しい。そしてその際、湾岸警備隊近代戦的カラテ戦術機能美もじっくりと堪能して欲しい。

#DHTPOST #ニンジャスレイヤー #njslyr

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