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作品を売るということ

はじめまして

 こんにちは、山田佳江です。小説を書き続けてもう十数年になります。インターネットのあちこちに小説を置いたり、文藝同人誌に掲載させていただいたり、それなりに楽しく活動しています。


テキスポのこと

 かつて「超文系サイトテキスポ」という小説投稿サイトがありまして、私は主にそこで小説を書いたり読んだりしておりました。テキスポには「モリタポ」という電子通貨があって(2ちゃんねる検索なんかに使えるアレです)、1モリタポは0.1円の価値があります。

 テキスポでは本の有料販売もできるし、無料で公開してある作品に投げ銭することもできました。自分の書いた小説に投げ銭をいただいたのはそれが始めてでした。数年間のあいだに合計して数千モリタポ(日本円にして数百円)をいただきました。それはとても緊張感があり、興奮する体験でした。「ここはチラシの裏じゃないんだ」とむやみに肩に力が入ったりしたものです。


Kindle襲来

 そのうちにテキスポは消滅し、Amazonで「Kindleダイレクトパブリッシング」が始まりました。電子書籍をだれもがそこそこ簡単に出版できるようになったのです。新しもの好きなので、テキスポで連載していた「未来少女ミウ」という小説を早速出版してみました。「Amazonに自分の本が表示された!」と子供みたいにはしゃいだりしました。

 そうしたら思わぬことが起こりました。Kindle版の「未来少女ミウ」がめちゃくちゃ売れたのです。テキスポでは「15人も閲覧してくれた。うひょう!」なんて言っていたのに、Kindleダイレクトパブリッシング草創期で本が少なかったこともあり、月に数百冊も売れたりしました。過分な評価をいただいたり、またその逆もたくさんありました。

 自分の中ではずっと地続きで、ただ飽きもせず黙々と小説を書き続け、新しい場所ができたらそこに置いてみる、ということを繰り返していただけなのです。正直、「売れる覚悟」というものが全くできていなかったので(甘いですね)わりとしんどい時期もありました。今はもうだいじょうぶです。

 Kindle本は草創期ほどバカみたいには売れなくなってきました。それでもちらほらと、売れていたりします。金額はお小遣い程度でも、「お金を払って読んでくれる人がいる」ということは、とても身が引き締まります。


節目はなかった

 本が売れるようになってから、Twitterのプロフィールに書いていた「作家志望」ということばを削除しました。それまでは、ある日突然作家になると思っていたのです。「今日からあなたはプロの作家なのですよ」と、だれかが教えてくれるのだと思い込んでいました。だけどそんなことはなく、セルフパブリッシングとはいえ、じわじわと本は売れていく。「作家志望」なんて甘えたことを言っていては、お金を払ってくれた人に申し訳ない、なんて思ったりしました。

 そんなこんなで流されるように生きてきました。きっとこれからも明確な節目みたいなものはなく、気づけば「ここはどこ?」なんてうろたえているのだと思います。

 作品が売れるということは当然モチベーションにもなるけれど、自分を縛る場合もあります。私はそうでした。でもまあ一度や二度くらい縛られてみるのも悪くないです。新しい性癖に目覚めるかも知れないし。てゆうかなんの話でしたっけ?


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