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北九州市のバックアップ構想とデータセンター招致

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今まで北九州のデータセンター投資に着目して、いくらくらいの効果があるか?また投資会社の目線で何を狙っているかを整理してきました。

一方、今回の施策は投資会社が主導したものだったのでしょうか?実は北九州市はバックアップ首都構想の一環でこのような動きをしていたようです。

自治体が自らの地域の強みを整理ししっかりマーケティング・営業活動をした結果とも言えると思います。

今回は北九州市のデータセンター投資において、自治体側の目線から整理してみたいと思います。


自治体の観点:なぜデータセンターか?

本節はこちらのページの情報から引用させていただきます。北九州市産業経済局企業立地支援課様のインタビューになります。

https://www.cbre-propertysearch.jp/article/data_center_market_05/

北九州市の置かれた現状の分析

まず、3Cとしての現状分析をされています。元々は製鉄所によって栄えた街でしたが、徐々に人口が減り、安川電機などの大きな企業はあれど衰退していたようです。一方、強みとしての工業系人員を活かしたIT系施策の取り込みを加速しています。

・重厚長大産業の衰退により一時は年間15,000人の人口が減少。

・30年以上前から行政は企業誘致を目指し、専門部署で継続的な営業活動を実施。

・工業系教育機関が多く、年間約9,000人の新卒者が市内から輩出されている。

・IT系企業の誘致が若者の流出阻止のための重要なミッションとされ、IBMなどが地域に新拠点を開設。

今回のデータセンター投資へ続く道

元々、2008年のデータセンター誘致に成功しており、そこで再認識した強みを展開することで今回も誘致に成功したようです。

・2008年、ソフトバンクグループはBCP(事業継続計画)の観点から地方分散を推進し、東京・大阪からの分散のため北九州市にデータセンターを設置。

北九州市は地震が少なく、地盤が強固であるため、自然災害に強い地として評価され、データセンターの設置地として選ばれた。

・データセンターは直接的な大規模雇用を生まないが、訪問するエンジニアや設備投資が地域経済に与える間接的な経済効果が大きい。また、災害耐性の高さが他の工業施設の安全運営のベンチマークとなる。

北九州市では、海底ケーブルの引き上げ拠点や洋上風力発電などの再生可能エネルギー施設が整備されており、データセンターをカーボンニュートラルに近い形で運営することが可能。

約100haの産業用地が確保されており、企業のニーズに応じた提案が可能。市は九州電力送配電と協力し、迅速な電力供給と土地提供を通じて企業誘致を強化している。

内陸部の土地確保については、国の「地域未来投資促進法」で農地の転用が可能になり活用が促進される

元々の強みを活かしながら、海底ケーブルの場所、カーボンニュートラル整備などが功を奏しているようです。

2008年ごろに展開されていたe-port構想は別の記事で紹介します。


バックアップ首都構想の概要

これらの活動はデータセンター誘致だけではなく、バックアップ首都構想として広く企業誘致活動として展開されているようです。追って詳しく説明します。

データセンターのバックアップとしての機能だけでなく、本社機能のバックアップ・2重化など多様な側面を持っている構想のようです。

・2023年2月に就任した新市長、武内氏が提唱した「バックアップ首都構想」は、災害リスクに強い基盤や充実したインフラを活かし、首都圏からの企業やデータセンターの誘致を目指しています。

・誘致対象は本社機能の移転、サプライチェーンの強化、IT開発拠点の分散、およびデータセンターの構築を計画している企業。

・実例として、商社の本社機能の部分移転やエンジニアリング系企業の全社員の半数が北九州勤務、薬品製造会社がバックアップ用工場を建設などのプロジェクトが進行中。


データセンターにとどまらないバックアップ首都構想

北九州の取り組みはデータセンターのみならず、バックアップ首都構想として考え取り組まれているもののようです。

これは令和5年に市長に報告され始まっているようです。

https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/001057516.pdf

バックアップ首都構想の概念

こちらに記載があります。

「目指す姿」として、災害が比較的少なく、物流インフラが充実している点など北九州市の強みをPRしながら、まずは企業誘致を進め、本社機能の移転など実績を積み上げた上で、政府機能を含めた「バックアップ首都」を実現するとしています。

https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/28500005_00002.html
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/28500005_00002.html

ここではデータセンター誘致だけでなく、包括的に自治体の強みを活かした法人向けの営業を行う、というのが全体像のようです。

いわゆる営業活動の整理と仕組みかをトップも含めてやっていく、という形に見えます。

自治体の強みを活かしたセールスができるなら、かなりの案件を獲得して税収をアップさせ、安定したまちづくりに貢献できそうですね。

これらの取り組みの結果、データセンターの誘致に成功し、バックアップ首都構想も一つはずみがついたようです。

バックアップ首都構想についてはわかりやすく紹介された動画もありましたので共有します。福岡とは違う立ち位置での訴求をしているようです。


市長からの説明・コメント

市長からも実際にこの活動についての説明がなされています。要約したものを置いておきます。

・データセンターの進出についての質問に対し、市長はこれを「非常に大きな一歩」と評価。北九州市の災害の少なさ、豊富なインフラ、地域産業の集積、アジアとの近さが大きな利点として挙げられた。

・新たに設置されたデータセンターは、地域経済への波及効果が期待され、DX推進、デジタル産業の誘致、関連技術の発展、地元企業のデジタル化の促進などが含まれる。

・市長はこれが「バックアップ首都構想」への大きな支援となり、その概念に賛同する企業の進出が今後も期待されると述べた。

・北九州市の災害対応力を強化し、日本全体のバックアップシティとしての機能を持つことが重要とされています。

・市は災害リスクが低く、エネルギーや水の安定供給、交通インフラが整っており、地価も低いことから、企業誘致に適している。

・地域内外での産業誘致を進め、北九州市をバックアップ首都として位置付け、災害に対する日本の支える役割を強化する計画です。


まとめ

北九州市のデータセンター誘致について自治体の立場でどのような戦略を持っていたかを紹介しました。

バックアップ首都のキーワードでデータセンターや他の企業を誘致するユニークな取り組みであり、他の自治体でも使えそうです。