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戦友へ

2019年7月29日

ニュースでは今年最多箇所の真夏日。いやー暑かった!!
お休みをいただき東京に着いたのがちょうどお昼時で、東京駅周辺のサラリーマンはワイシャツ、スラックスにネームカードをぶら下げたユニホームで、ランチタイムの団体行動。
ちょうど江戸ちゃんはタイ(じゃなくマニラ!って言われました。どっちでもいいやw)へ弾丸出張の予定が入り、せっかくだからと築地で落ち合いランチへ。
先程とは打って変わってカラフルなタンクトップと髪色に飾られた外国人観光客の波。
東京は一駅変わると集まるカルチャーも人もガラリと変わってほんと、面白いところです。
なんでマグロが?なんでキリンが?上を見たり下を見たり。おもちゃ箱のような商店街

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浜焼きで焼かれた1本5000円のタラバガニの足を食わせろと江戸ちゃんに言ったけど却下。すんごい美味しそうだった…

美味しいと評判のお寿司屋さんに連れて行ってもらいました。
さすがだと思ったのは、店員さんが流暢な英語で対応していたこと。昔は市場で働く人でにぎわう食堂などが軒を連ねていたそうですが、今は外国人観光客がメイン。お寿司屋さんのお品書きに中国語があるのは初めてみました。
普段ホントに食べることが面倒な私が、ビールと共にあっという間に丼を平らげる姿をみて江戸ちゃんが
「孤食はだめだねえ」とポツリ。

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その後、ビル街に忽然と現れる築地本願寺で涼みながら、今日の日を過ごせることを感謝しつつ合掌。

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羽田空港で限定色の水色のしろたんを買い、江戸ちゃんを見送って、砂短と向かった先は

地方競馬最大規模を誇る、大井競馬場。

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■大人の遊園地
大井競馬場前駅に降り立った途端に押し寄せる牧草の香り。
向かう先で出会う「関係者以外立ち入り禁止」の看板と、警備員の揺らす誘導灯に従い吸い込まれていく高級車。馬主さんかな。
その脇にある馬房は1950年(昭和25年)に開場された当時のままであろう風景が残っていて、高級車とのギャップが激しい印象。
イルミネーションもいいけど、働く厩務員さんや馬の為にインフラも改革した方がいいのでは・・・などと思うのは、素人の独り言です。

私はもちろん初めての大井ですが、砂短も15年ぶりだとか。随分と様相が変わったと驚いていました。砂短が通っていた頃は4号スタンドの「ダイヤモンドターン」に陣取って遊んでいたそうな。

2019年の大井競馬場は「夜遊び方改革」と銘打って、様々なイベントが開催されています。
サンタアニタトロフィーを7月31日に控え、それにちなんだアメリカンな展示物やおもちゃや雑貨、バーボンやスコッチのお店。29日の「肉の日」に引っ掛けたステーキ!美味しかったー。帰ってきたら体重2キロ増えていたのはご愛敬です。

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大人の遊園地だ…ずるいよこんなの近くにあるなんて。馬券買わなくても楽しい。しかも平日でこの賑わい。毎日お祭りやってるようなもんじゃん。

2Fの一般席から眺めるコースからは埠頭からの風が吹き抜け、日差しが遮られれば暑い中でも十分過ごせます。ビールが美味しい気温(笑)
そうか…よくフォロワーさんがケンタッキーフライドチキンを話題にしていたのは、売店があるからなんだ(笑)と、思いながら購入。

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開場直後から夕方までは、シニア層を中心とした熟練のファンが淡々とモニターに映るオッズと新聞をにらみながら赤ペンを走らせていました。

夕方近く、日が落ちかけた頃になると仕事終わりのサラリーマンがビール片手に。
中にはリュックの中からバーボン1本をドン!水筒から氷を取り出して、水割りを造りながら友人と競馬を楽しむ強者も。

ゴール前近くで小さなレジャーシートを広げ、家族で過ごしていたり、イートインスペースではママさんの井戸端会議の周りで子供が走りまわっていたり・・・
ギャンブルの垣根を超えて、「公園」「居酒屋」として利用する方もいるんだな。「社交場」の文字がぴったりとハマるとても居心地のいい空間でした。

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私は引きこもりデータ屋稼業で、私の競馬の楽しみ方は「自らが弾き出したデータの整合性がいかに高くなるか」でしたが、こうして1年半競馬予想サイトと関わってきた中で浮かぶ自問を解決すべく、足を運んだ大井競馬場。

音楽もそうですがやはり「ライブ」。これに尽きるものはないですね。

出来るだけ近くで馬が見たくて、日傘を差しながらパドックへ。
「傘はしっかりお持ちくださいね。風で傘が中に入ると馬が驚くので。」
警備員の方に声を掛けられ、いつもよりしっかり傘を握りながら次の出走予定の競走馬を見ていました。(次回は日焼け止めと帽子で行きます。)

馬の息遣い。
耳の動き。
蹄の立てる音。
揺れる馬体。
光る毛並。

PCの画面越しでしか見たことないパドックの臨場感に、写真を撮るもの忘れ見入ってしまいました。

見ていたのがちょうど調整ルームの近くで、今日は重馬場。暑さで顔を真っ赤にしながら汗と泥で汚れた勝負服を脱ぎ、プロテクターが露わになったジョッキー達がレースを終えて入っていきます。
暑い中、朝早くから調教もするジョッキ-。勝負師の空気が醸し出す独特なオーラを肌で感じて、「命がけ」という言葉が頭を過ぎりました。柏木さん、今頃どうしてるかな…


大井競馬場で叶えたかったこと。
場立ち予想屋「ゲートイン」公認予想士、吉富隆安さんに会うことでした。

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                      (引用元:netkeiba.com)

■「予想」というエンターテインメント

カリスマ予想士としてNHKでも取り上げられるほどの有名人。吉富さんの周りは黒山の人だかり。月曜でこれでしょ?水曜とか物凄いんだろなあ…

私は数字を並べることは出来るけど、語ることは出来ません。


その語りで惹きつける吉富さんの口上を聞きたくて、大井まで。
YouTubeなどで拝見はしていましたが、やはり生で聴きたかった。

「いいですか皆さん。馬はね、草食動物なんです!!」

そこから始まった吉富さんの口上。

「肉食動物から逃げるための本能を持つ。目の前で締められたゲートの危険を感じてるわけですよ。ゲートが開いた瞬間、そこから全力で逃げようとする・・・」

背中にある黒板には馬の形に切り取られた馬番の色の合わせたマグネットとコースをイメージした楕円形が描かれています。

吉富さんからから発せられる緩急のある口上は、ありありと馬が駆け抜けていく情景を頭に浮かべることが出来ました。黄色いチョークで「勝負」と力強く書き、吉富さんが独自に編み出した「実走着差理論」を以って述べられた口上。卓上にたたきつける握りこぶしの「ドン!」という音と共に

「さあ!これだ!」

次々と差し出される1レース分の予想代200円。中にはA4サイズ全レース予想を買い求めるために1000円を差し出した人も。吉富さんは右手にゴム印を取り、小さく切られた藁半紙に予想した買い目をスタンプし、器用に片手で折り曲げて購入者に配っていきます。もちろん私も買いました。

でも私がお金を払ったのはスタンプに書かれた数字ではなく、そこで繰り広げられた「吉富劇場」に感動した「観劇(感激)料」でした。

吉富さん:「はい。」
さっき口上を述べていた吉富さんとは思えないほど、その声は穏やかでした。

■競馬予想への対価とは
仕事の邪魔をしないように、お客さんがいないところを狙ってどうしても声を掛けたかったのですが、上手く話しかけることが出来なかった私を見かねて、砂短が吉富さんに「彼女、吉富さんが見たくて愛知から来たんです。」と声をかけてくれました。

淀:「前からお会いしたくて。」
吉富さん:「ああ、そりゃ遠くからありがとうございます。これからが勝負ですからね、是非楽しんでいってください。」
淀:「時間の都合で最後まではいられないんですけど会えて満足しました。ありがとうございます。あの、私、競馬のデータ作っていて。あの…サインください!!」

上手く話せなくて、途中で何言ってるか分からなくなって。

吉富さん:「そうなんですか。頑張ってくださいね。いやあ僕の口上なんてノリですから。ぼくはサインがないから普通に書くだけだけど。良かったらこれでも持って行ってください。」

吉富さんは笑いながら、赤ではなく、青いペンで「全レース予想」の書かれた藁半紙にサインをしてくれました。

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「戦友へ」
 それをもって立ちすくむ私に、砂短は笑ってティッシュをくれました。

そう、ここは吉富さんにとって社交場でも居酒屋でも公園でもなく

戦場なんです。

吉富さんには足元にも及ばないけれど、確かに私も日々、データと戦っています。
そんな私に「戦友」と書いてくださった。
誰に対しても書くのかもしれないけど、競馬に向き合う私にとって、強い気持ちでいられるお守りとなりました。


■自問への答え
場立ち予想士は生身でお客様と向き合い、覚悟をもってその一期一会の勝負に挑む。その先にある自らとそれに賭けてくれるお客様の勝利を掴むために。

それに比べてネットで競馬予想を発信している私達はどうなのか。
そこに対価が支払えるだけの感動を、ユーザー様に届けられているのか。

自問に対する答えはまだ出ません。

とてもじゃないけど、敵わない。あの迫力。あの感動。それを含めて200円。

雨の日も風の日も、開催がある限りその小さなブースに立ち続ける。

吉富さん
これを見ることはないかと思いますが、お時間いただきましてありがとうございました。
また会いに行きます。宜しければ、緊張でお渡しするのを忘れていたアザラシの名刺を受け取ってください。その時はもう少し、お話させてください。

地方競馬独自の制度である「場立ち予想」
中央派の皆様も宜しければ足を運んでみてください。また違う競馬の楽しみ方を見つけることが出来るかもしれません。

長くなりましたが読んでくださった皆様にも、ありがとうございます。
これからもサイトは日々皆さんに楽しんでいただくために、改善しながら運営させていただきますので、よろしくお願い致します。

では、馬と戦う皆様に幸運を🏇

                           (戦友へ-Fin-)

(これを執筆中に知った、名馬ディープインパクトの死。あなたも共に戦う友で憧れの馬でありました。安らかに。合掌。)


読んでいただきありがとうございました。これをご縁に、あなたのところへも逢いに行きたいです。導かれるように。