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従業員の痴漢逮捕

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当社の社員が通勤途上に痴漢で現行犯逮捕されましたが、本人はこれを否認
し相手方と争っている状況です。どう対応すればよいでしょうか?

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痴漢冤罪が増加している状況下、本人が認めていないにもかかわらず有罪を前提に即時解雇等の拙速な判断をとると後々解雇権濫用等の争議に発展するリスクを抱えることになります。

今後の公判等の進展にともなった対応が必要です。

1)拘留中

逮捕されると警察による拘留とその後の拘留を含めて最大23日間拘束されます。この期間については欠勤、もしくは本人の申し出に基づき有給休暇扱いとします。
罪状が明白ではなく、本人が否認していることを考えればこのケースでの即時解雇は困難です。また、拘留期間を無断欠勤とし、就業規則の解雇基準「○○日以上の無断欠勤が生じたとき」という根拠で解雇することも事情を考慮すると出来ません。

2)起訴された場合

長期間の拘留により一定期間労務の提供が出来ないことが見込まれるときに
は、一般的には就業規則にしたがった起訴休職の取扱いとなります。
しかし保釈された場合には労務の提供が可能な状態と言えますから、起訴休職の適用を慎重に行わなければなりません。
判例では、①企業の対外的信用の維持、②職場秩序の維持、③不安定な労務提供によって業務に支障が生じることの防止 等の理由が必要であり、それが合理的なものでなければならないとされています。

3)有罪となった場合

有罪となった場合には懲戒処分の適用を検討します。
職場外における職務遂行に関係のない所為については懲戒処分を行えないのが原則ですが、刑事事件については、企業秩序の維持に直接関連性を有する場合、懲戒の対象となり得ます。痴漢行為で有罪となった事実を看過すると企業秩序の維持確保が出来ないという理由に基づき、社会的影響や当該社員の悔悛度合い等を考慮の上、慎重に判断すべきです。

4)不起訴・無罪となった場合

当該社員の円滑な職場復帰に協力・支援する必要があるでしょう。


〔三浦 裕樹〕

Ⓒ Yodogawa Labor Management Society


社会保険労務士法人 淀川労務協会





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