見出し画像

退職予定の社員が突然、撤回を申し出てきた・・。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

先日、ある従業員が「1か月後に退職致したくお願い申し上げます」という文書を持ってきたので受理しました(その際、本人には特に何も告げませんでした)。その後、代替要員を確保するために新たに求人をかけある方の採用が内定したのですが、退職を申し出た従業員が突然、「やっぱり事情が変わったので会社に残ります」と言ってきました。そんな勝手な話は受け入れられないので、突っぱねてもよいでしょうか?

―――――――――――――――――――――――――――――――――

お気持ちはわかりますが、結論から申しますと拒否する事は困難でしょう。

まず、退職届には以下の2つの種類があるものと考えて下さい。


1)「雇用契約の解約通知」(=いわゆる退職):従業員から会社に対して、会社の判断如何に関係なく一方的に退職の意思を通知するケース

( ~略~ 、平成○○年○月○日をもって貴社を退職させて頂きます。)


2)「退職の申し込み」(=いわゆる退職):従業員から会社に対して、「辞めたいと考えているのですがいかがでしょうか?」と願い出るケース

( ~略~ 、平成○○年○月○日をもって貴社を退職致したく、ここにお願い申し上げます。)


簡単に申しますと「届出」と「許可」との関係と同じで、1)は相手方の承認を要さない一方的な届出、2)は相手の承認を要する許可願と解されるという事です。

今回のケースでは文面から、2)の退職の申し込みと解され、これに対する諾否を会社は示していない訳ですから、本人からの撤回は基本的に可能と考えられます。

この話とは別に、2)のケースで会社は応諾の意を示さない限り本人は辞めることはできないのではないか・・・との疑問が生じるかもしれませんが、民法627条1項に基づき退職の申し込みから2週間を経過したことをもって、会社からの承諾があったものとみなし労働者は基本的に退職することが可能です。(逆に会社側がこの2週間ルールを採用して退職したものと見做すことは出来ません)

一般的に退職時の文面には「退職届」なのか「退職願」なのかの判別が困難な表現が用いられることが多いです。


というのも契約社会の欧米諸国とは違い、日本人には特に退職といったセンシティブな場面で相手を刺激しない中庸的表現を美徳とする一面があるからです。

「もうかりまっか?」には、「ボチボチでんなぁ」です。

このようなトラブルを避けるためにも退職が申し入れられた場合には必ず書面で受領し、それがどのような文面であったとしても、かならず遅滞なく受諾(乃至、慰留)の意思を出来れば書面で示すことが重要でしょう。


※ このようなケースであっても退職撤回の申し入れにより会社に不測の損害を与え、多大な迷惑をかけるような特別な事情や、退職手続きが進められていることを労働者が十分に知りうる状況にありながら何ら異議を唱えていないような事実があれば、労働者側の退職の撤回が不可能となることもあります。

〔三浦 裕樹〕

Ⓒ Yodogawa Labor Management Society


社会保険労務士法人 淀川労務協会





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?