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個別労使紛争のテンプレ化


・相談無料! ・ネットで無料診断! ・総額〇億円回収


過払い金請求を主に取り扱う法律事務所(もしくは法務事務所)のこのようなCMや車内広告を見られた方も多いのでしょうか?

過払い金返還請求が消滅時効を迎え、急激に拡大したメガオフィスが卒業アルバムのように並べられた多数の弁護士の雇用とその規模を維持するために次のメシの種と考えている分野の1つが労働問題と言われています。

実際、昨年あたりから「突然、法律事務所から内容証明が届いた」というご相談が私どもにもかなり増えて参りました。

内容証明を見せて頂いて思うのは、請求内容がパッケージ化、テンプレート化しているということです。

1つの事件を解決するために弁護士がクライアントの生い立ちからヒアリングするというドラマがありましたが、それはやりすぎだとしても最初に法律事務所から送付されてくる内容証明は、ヒアリングがほとんど要らないような名前だけ変えて微調整すれば誰にでも適用できる、所謂、テンプレート形式であることがほとんどです。

だからこそ無料で相談対応できるのでしょう。(細かな内容は入り口ではクライアントからほとんど聞いていない?)

「残業代請求」、「不当解雇」、「労働災害」、「ハラスメント」、「メンタル」、「不利益変更」等の区分に応じたテンプレートをメガオフィスは予め準備していて、依頼者の相談は聞くけれども内容には深く踏み込むことなく文書を微調整し、まずは会社側に内容証明を送ってみる。

① 簡単に手間・時間をかけずに金銭解決に持ち込めるのであればBEST
② 問題が複雑化(裁判化)しても確実に勝てる案件であったり高額な解決金を期待できるのであればそれもOK
③ 前①・②に該当しない場合にはなるべく早期に問題を終わらせる(もしくは手を引く)方向にもっていく。

このような仕分けで事務所経営を行っているのではないかと想像されます。

顧客から回答文案の作成についてアドバイスを求められることがありますが、早期に金銭解決に持ち込めないような相手方にとって都合が悪いであろう少々高度で専門的な回答を準備すると相手方がサーっとひいていくのがわかります。

・広告にコストをかけ初期費用等の敷居を低くしてとにかく案件を取り込む

・極力、手間と時間をかけずに簡単な案件を優先して数をこなす

・そして数をこなして稼いだ弁護士を評価する

過払い請求の定型的業務で拡大してきたメガオフィス、そしてそのような業務に慣れた弁護士が、同じ仕組みを労働問題の分野に適用しようとしているのでしょう。

なんと、手数料はクレジットカードでの支払いも可能なようです。

顧客に聞くところによると、会社側が代理人弁護士を立てずに自社で回答文書を準備しようとすると相手方が弁護士対応にするように勧めてくるそうです。

労働問題は和解が原則ですから弁護士マターとする方が色々と都合がよいのでしょう。

勿論、町医者のように親身に1つ1つの労働問題に真摯に向き合っておられる弁護士も多数いらっしゃいますが、このようなテンプレ事案が増えてくると、弁護士が問題を解決しているのか、弁護士が問題を助長しているのかわからなくなります。

テンプレ化された労働争議から顧客をどう守るのか。

テンプレ化された労働争議を引き起こさないためにどう対策していくべきか。

今後の懸念される我々の課題の1つだと思っています。

〔三浦 裕樹〕

Ⓒ Yodogawa Labor Management Society


社会保険労務士法人 淀川労務協会



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