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音楽の話をしようよ#1 GreenDay 『International Superhits!』────音楽のタイムマシンに乗って

もう本当にシンプルに音楽の話をしたくなった。日々音楽のことを考えて、社会のことを考えながら音楽を追っているつもりが、気付けば自分の中には何一つ蓄積されずただ時代に流されてしまってるのではないかと思い始めてきた。
だから好きなアルバムの話を、自分の主観だけで書きたい時に書くようなことをしてみたいと考えた。今流行ってるからという理由で書いたり、今のタイミングでこれについて言っていれば誰か読んでくれるかな、共感してくれるかな、そんな気持ちだけを原動力に書いていては心はついてこない。そんな気がした。それはもう仕事だ。僕は仕事がしたくない。働きたくないのだ。とにかくこの世で一番働くことから距離を取りたい。そう思っている。僕は好きなものを書きたい。好きなものを好きと言いたい。好きが何か分かる人間でありたい。だから今回取り上げるアルバムはGreen Dayのベストアルバム『International Superhits!』に決めた。

一番最初に取り上げるアルバムにベストアルバムを選ぶというかなり奇天烈な行いをしている。本当にどうかしていると思うだろう。でも一時期に本当に一番聴いたアルバムを取り上げるのであれば間違いなくGreen Dayのベストアルバムなのだ。中学生から高校生の間はずっとボーカルのBillie Joe Armstrongに憧れたものだ。黒髪に上下黒で統一されたスタイリング。Mike、Treの3人のバランスも込みでとにかくかっこいい。彼らを見ていると3ピースバンドっていいなという気持ちになる。僕も黒のスキニーを履いて、黒のシャツに赤いネクタイをして目の周りを黒く染めたかった。それが似合う風貌だったらどれだけ良かったか。初めて自分のルックスに落ち込んだのはそのタイミングだったような気もする。壁に貼ったBillie Joeのポスターを眺めながら自分に呪いをかけた。来世はアメリカの少年に生まれ変わりたいと。

『International Superhits!』は2001年にリリースされたアルバムで、初期と呼ばれるポップパンク、メロコア時代の楽曲がギュッと詰められているベストアルバム。やっぱりどうしても好きなアルバムを答える時にベストアルバムを答えるのって躊躇するし、相手がもし好きなアルバムでベストアルバムを答えたら「えっ、そこベストアルバム答えちゃうの?」という気持ちを少なからず心では思ってしまう。どうして音楽好きはそんなところでカッコつけてしまうのだろう。誰かこの原理を教えておくれ。

高校生の頃、夏休みに外にも出たくなくて家で一日中ギターを練習していた時には疲れたらこのアルバムを再生しながら横になっていた。"Maria"から始まり"Macy's Day Parade"で終わる21曲で1時間ちょうど。何をするにもちょうどいい長さだ。そしてこのGreenDayの剥き出しの衝動とBPMが10代にはマッチしていたのだろう。GreenDayを聴いている時はいつでも心は裸だった。38度くらいの暑くもぬるくもない「本当に自分はお湯に浸かっているのか?」と感じるほどの適温を感じていたので、GreenDayを聴いている時はよく眠れた。10代のASMRはGreenDayだ。

20代後半や半おじさんの自分が聴いてもGreenDayの荒々しいポップセンスは羨ましく、また圧倒的にメロディがどの曲もいいなと思った。10代の日々からは遠ざかっていく一方だけど、宿題を放ったらかしてギターを弾き倒していた少年はまだどこかで眠っているのだろうか。壁から剥がされたBillie Joeは心の中で僕に問いかける。「It’s something unpredictable, but in the end it’s right
I hope you had the time of your life(この先どうなるか分からなくても、結局はどれも正解なんだ。君の人生に幸あれ)」そういうことだよなと、あの頃の自分と今を見比べる。音楽ってやっぱりタイムマシンだ。

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