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なぜ名取さなに泣かされたのか ~薬袋カルテの患者が救われた「さなのばくたん。-ハロー・マイ・バースデイ- 」~

 初投稿のよるふねまごです。
 今回は、例えばVWWから名取を知った人が、「なぜ今回の名取の単独イベントでこんなに情緒をぶっ壊された人が出ているのか」を知りたいと思った時の一助になればと、あるいはあの会場で泣いている人の気持ちが分からず戸惑った人の理解に繋がればと思い、書いています。釈迦に説法だったらごめんね。

注意1: あくまで自身の経験に基づく一例であるので、みんながそうという訳では絶対ないことをご承知おき下さい。また、自分の言葉でなるべく書くため他の人のnoteを見ていません。内容被ってたらごめんね。

注意2: あと前置き2つで4000字を超えています。知ってるな〜と思ったトピックの部分は飛ばして、「本題」から読んでいただいても大丈夫です。また、もし読んで解釈違いだったとしても大目に見て下さい。

注意3: 本記事はイベントを浴びた後の「感情」の記事です。そのため元から少ない理知もどこかに置いており,若干論理のズレがありそうな気がします。そこらへんをしっかり書いた記事のご要望があれば書きますので、ひとまず今回は目を瞑っていただければ幸いです。



前置き

"バーチャルYoutuber”と”Vtuber"の差


 本来ここを区別するのは主義ではないのですが、知っておいて欲しい部分もあるので書きます。ただし自分の観測からの主観になるので実際の主張と違うかもしれません。

 2017~2018における”バーチャルYoutuber”と近年の”Vtuber”について区別(あるいは差別)される風潮があるのをご存知でしょうか。界隈の形態の変化によって生まれた軋轢でもあるのですが……

 2017~2018年における”バーチャルYoutuber”の表現のされ方として分かりやすいのは「リアルタイムに接することができるアニメキャラ」です。今主流のVtuberとの違いは、アニメのように 創作された人物 がコンテンツを送る点です。少しメタな話ですが、アニメのキャラクターは原作、監督、脚本、アニメーター、声優など複数人によって構成された人物です。しかし、アニメを見ている時の私たちの視線の先にいるのは「実際にアニメの中の世界で頑張ってるその人」です。
それと同じく、「中の人」が誰であるかは関係なく「キャラクター」を見ているのがあの時に期待された形態でした。
例えば女の子のバーチャルYoutuberで実際3Dモデルで動いているのがおじさんだとしても、それはきらら作品アニメのアニメーターさんの性別や年齢に言及するくらい見当違いなものでありナンセンスなワケです。
また、当人のいる世界と我々視聴者のいる世界に隔たりがあること(バーチャル世界とリアル世界のような)も一つの特徴であると言えるかもしれません。

 一方、YouTubeLIVEによる配信という方法が普及したことで、今よくイメージされる”Vtuber”、あるいは ライバー へと主流が変わりました。生配信という形態は「声」を担当する人物がキャラクターのパーソナリティを決定していきます。もちろん、これは2017年から活動している方々でも当てはまることなのですが、キャラクター周りの世界観への創作性が失われていったことで、より現実世界の「中の人」が強調される形となっていきました。極端かつイメージしやすい例で言えば、絵師の受肉=アバターとしてのVtuberでしょうか。リアルタイムに動いて話しているのが現実において同一の「中の人」であることに重きを置くような楽しみ方/楽しませ方が普及していきました。
また、キャラクターが我々と同じ世界線に存在していることも特徴として言えるかもしれません。レポ動画や美麗3D(実写)での活動ができる一方、バーチャルたる所以は薄れていきました。

この変化は、”バーチャルYoutuber”の発展を期待した人にとっては残念だったでしょう。見た目にあった初期設定だけ付けられ、それを掘り下げるでもなくゲーム実況や雑談をする人物の量産を見れば「ガワだけ2次元キャラにした生主」と揶揄してしまうことに納得いかずとも理解はできます。
同じドラマにハマっている人でもドラマのストーリー・世界観を見ている人と、ドラマに出ている俳優さんを見ている人で価値観が絶対合わないようなものです。

 気持ちの良くない話はここまでとして、このようにドラマの登場人物とそれを演じる俳優さんが「別の人間」であるように、「私たちの前でYoutubeやってるキャラ」が「中の人」に左右されない、ある世界観中の「独立した人間・キャラクター」である表現がされる者こそが”バーチャルYoutuber”だという言説があることを知ってください。
もちろん、ドラマの役者さんやアニメの声優さんが途中で交代した時に違和感が発生するように、”バーチャルYoutuber”であれ「中の人」の影響は受けますし大事なファクターであるのは確かです。

以降の文章において、この表現を必要とするため使います。
また、「V」は「バーチャルYoutuber」「Vtuber」の総称として使います。
もっと言えば、「バーチャルYoutuber」「Vtuber」どちらかに分類されるのではなく、グラデーションのうちの両極がそれである、あるいはこの2面性を併せ持つという認識でいてください。



薬袋カルテちゃんって、誰?

 

 誰?という、「ぼく知ってるので解説します!」みたいなタイトルをつけていますが、、何より時間の経過で喪ってしまった記憶がだいぶあるので、「違う!!!!」となった時にはご容赦いただくとともにこっそり教えていただけると幸いです。

 さて、Live2D普及により個人でのV活動が活発化した2018年。その初頭に「ナース」としてデビューした方が2人いました。1人はご存知「名取さな」、そしてもう1人「薬袋カルテ」です。
(※獄卒ナースさんについては話が脱線しかねないので今回は置いておきます。)

 V的な特徴を挙げると、名取が割と活発な明るい雰囲気のスタイルであるのに対し、カルテちゃんは「見る鎮静剤」と言われるようなダウナーな雰囲気のVの者です。
一人称はボク。ファンマークは💉。作ることが好きな女の子。
ハスキーな声で落ち着いて語る雰囲気は唯一無二のもので、そこから突拍子もなくお茶目さが飛び出してくるのもまた良いギャップでした。歌もめちゃくちゃ良く、オリジナルソング「Stardust finding you」は2018年のV紅白歌合戦にて紅組のトリになるほどでした。聴いてくれ。マジで。

 そして、薬袋カルテちゃんは「バーチャルYoutuber」でした。
まず、〼医さんという「作者」あるいは「中の人」がTwitter上で明確に表に出ていました。薬袋カルテの姿やLive2D、3Dモデルから果ては単独ライブをほぼ単身で作り上げたヤバ・クリエイターです。「Live2Dの表情差分を追加しようとしたらいつの間にかモデルを一新していた」ということがあるほど。

で、

 薬袋カルテには彼女の世界・彼女の物語がありました。
彼女は、電脳世界にて、廃墟のような バーチャル診療所 で、そこに訪れる 患者様(ファン呼称)たちなどを診察するバーチャル科のナース、バーチャルナースです。
彼女の物語の中で、仲違いしてしまった少年少女のメンタルケアをしている様子も描かれていました。

そして、名取にとっての「名取■奈」のような、彼女によく似た患者衣の女の子の存在が確認されていました。カルテちゃんがトンチキな雑談配信やらゲーム配信する傍らで、心電図の電子音や体に絡みついた植物などの散りばめられた要素とともに彼女の存在は考察を呼んでいました

そして、私たちの世界の2018年8月26日、過去からの配信として行われた「白紙のカルテ」にて衝撃が走ります。
配信の画面の向こうに映ったのは、あの彼女によく似た患者衣の女の子。その正体は長期入院している病気の子で、「薬袋カルテ」としてのVtuber活動を始めようとしている女の子でした。今回スクショで目にした人もいるであろう、名取が「わたしもナースになりたいな…」とコメントしていたのもこの話の時でした。

この配信時、「現在」のこの女の子が何かしらの理由で植物状態ではないかと考察していた患者様たちは、配信の向こうの「過去」を変えれば彼女を救えるかもしれない可能性を手にしました。
雑談の中で情報を引き出し、そして目の前の女の子を励まして。
この中で、今は音信不通になっているけど病気がちな自分を見て「医者になる」と言ってくれた大好きな姉がいること、健康な体が欲しいこと、主治医と一緒にLive2Dの勉強をしていることetc……いろんな話をしました。

配信の終盤。
結果として女の子は前向きになり、治療も薬袋カルテの活動も頑張っていくことを決めました。元気になった時のことも色々考えたりして。そして一歩を踏み出すために、外出許可をもらってちょっとお外に散歩へ行きました。
いってらっしゃいと送り出しました。

そして、その女の子は


交通事故に遭い、植物状態となります。


2018年11月30日。「剥離のカルテ」配信。
今度は「未来からの配信」がなされます。配信主は薬袋カルテ/患者衣の女の子の「ドクター」でした。
ドクターの名は、無月りりあ。

そして患者衣の女の子は名を 無月まりあ と言い、ドクターの実の妹でした。

さらにその、遠くはない未来からの配信にて、カルテちゃんの、「無月まりあ」の死亡が宣言されました。葬儀も行われたと。


 さて、植物状態のまりあがなぜ「薬袋カルテ」でいられるのか、バーチャル診療所とは何なのか、まりあの死とそれを伝えにきたりりあの真意とは。

 これらについて語られることの無いまま、2019年2月24日、バーチャルYoutuber薬袋カルテは引退を迎えました。
 作者の〼医さんからは、薬袋カルテは創作に内包されるキャラクターとして存在するが、「V」としての中の人ありきの存在=〼医さんの運営で成り立っていた薬袋カルテのTwitterやYoutubeでの活動は消滅する、という旨が発表されました。

そして、Youtube・Twitter共に、跡形もなく消え去りました。


「薬袋カルテの物語」として現在観測されたのはここまでです。
詳しいことはインターネットに潜れば出てくると思うので、興味の出た方は下の追記を読んでみたり自分で調べてみたりしてください。

 大まかに今回のnoteで薬袋カルテについて必要な情報としては

  • 「〼医さん」という作者の存在が明確であることで、「薬袋カルテ/無月まりあ」がある創作世界観=バーチャルの中から我々に干渉してる”バーチャルYoutuber”であることが明確化されていること

  • "バーチャルYoutuber"は、物語世界の話が進めば「終わり」が見えてくるものである(キャラクターが配信活動を続けられるエンディングとは限らない)。

  • あるいは理由があるにせよ、作者の一存でこれまでの軌跡を消してしまえる(残る記憶にも限度はあるし、PCの容量の限界もある。かといって無断転載に広告費をあげる真似はしたくない。)。

  • 昨日まで目の前で話していた1人の人間が簡単に存在ごと消えてしまう現象が起こりうる現実を自分に実感させた子の一人であること。


 でしょうか。

 自分が「名取さな魏志倭人伝」という、さなちゃんねる外の名取の出演を病的に集めた再生リストを作っているのも、跡形もなく消えたカルテちゃんのトラウマがあったからという部分もあります。

 重要な追記 
 引退の際、〼医さんは「薬袋カルテの物語のペンをVから変える」とおっしゃっており、まだ完結はしていないことを示唆しています。

 事実、引退直後、FANBOXにて「バズらない話」としてバーチャル診療所やカルテちゃん/マリア・ドクター/リリアの設定のいくつかについて明記してあります。有料記事にはなりますが、一読の価値があります。なぜなら名取に泣かされた話にちょっと繋がるから。

 また、2020年5月には単独での薬袋カルテチャリティVRイベント「世界恒常性」を行いました。コロナ禍で大変な医療従事者の応援のためにと、自身でステージのモデリングから進行から作り上げた本ライブで100万円の寄付金を集め、日本赤十字社へ寄付したりしています。

このライブ、Youtubeでのミラー配信を許可していたため、様々な方の視点でYoutube上に残っています。「世界恒常性」や「セカセー」でYoutubeを検索すると出てくるのでぜひ見てみてください。本当に素晴らしいので。

 他、瀬戸あさひさんメリーミルクさんとの歌ってみたをなさっていたり、他の方の創作や活動のお手伝いをなさっていたりなど、カルテちゃんは今なおフラっと現れて、何かを作っています。

 〼医さんもskebされてたり創作のお手伝いをされてたり、Vket公認配信でイケメンお兄さんになってたりしてます。



本題


前置きで述べたことをおさらいすると

  • ドラマの登場人物とそれを演じる俳優さんが「別の人間」であるように、「私たちの前でYoutubeやってるキャラ」が「中の人」事情に左右されない、ある世界観中のストーリーの「独立した人間」であるのが”バーチャルYoutuber”という価値観の存在

  • かつて、名取と同じように「ナースに憧れた女の子」が「バーチャルナース」となる薬袋カルテの物語において、ストーリーが進むごとに、何かが分かるごとに「終わり」が見えてきてしまう経験を、そして活動場所から跡形もなく消える様を経験をした「せんせえ」兼「患者様」がいる

という2点に集約されます。

 これらの価値観・経験を持つ人間からすれば、バーチャルYoutuberの物語は、他のマンガ・アニメ・ドラマ・小説同様、ピリオドを打たれればそこで終わる、その後の供給が無くなるものとなります。

 例え「中の人」が転生したとしても、それは次回作です。
同じ「鳥山明さん」が中の人でも、アラレちゃんと悟空が全くの別人であるように。

 そして、バーチャルYoutuberが「リアルタイムに接し、意思疎通できる」存在であるが故に、この「ピリオド」はかなり巨大な傷を残します。目の前で昨日まで喋っていた存在が、突如として存在ごと消えてしまうのですから。
自分はカルテちゃんで体験したことでした。

最近であれば、黛灰の物語のフィナーレと引退を見届けた方が似たような感情を感じたのではないのかなと思っています。


 そんな中だからこそ、自分は名取さな考察要素の進展を、「名取■奈」を恐れていた節があります。


これまで「名取■奈」にどう向き合っていたか

人のいないバーチャルサナトリウム。ナースなのに病室暮らし。分厚い扉。手首の包帯。血痕。うさちゃんせんせえと包丁。両親の不在。外出許可。2018映像記録。名取によく似た患者衣の女性。2019お誕生日のお手紙。2011音声記録。
「名取■奈」のカルテ。
わたしのなりたかったわたし。
お薬の時間。

 2018年当初から「ば〜ちゃるな〜す 名取さな」について、彼女が本当に「ナース」であるのか、「患者」なのではないかという憶測とともに、様々に考察がなされていました。上手くまとめられているまとめ動画や記事が既に存在しているのでこの解説は省きます。

 自分は、これらの要素について、本質的には逃げていました。
 着ぐるみを見る 子ども であり続けていました。

 もちろん考察もしました。興味もあります。例えばリゼ・ヘルエスタ皇女殿下がバーチャルサナトリウムを訪れた際に、皇女の口を通して何か言及があるのではという期待を持つこともありました。

 でも、心の奥底では、それらが「Vtuber」の”設定”であってくれ、「異世界出身」とか「高校生」とか、思い出した時にチョロっと取り繕う程度で、活動そのものに関わらないエッセンスであってくれと願っていたところがあります。

 これはミステリー小説の「謎」のようなものであり、謎が謎である間はお話が続いていく、解決編が来てしまえば終わってしまうから。あるいは話が進まなければ「謎」の回収ができずに筆を折ってしまうような事態は来ないからと。

そして同様の感情を持っているのが自分だけではないことも知っていました。
「名取さな公式同人誌 そこまで薄くはない本」をお持ちの方は5ページの2018映像記録の動画の解説文を見てほしいのですが、名取■奈について「わかる日が来ないことを願う」とまで言われています。もちろん筆者の気持ちは分かるものではないですが、少なくとも「今目の前にいる元気なば〜ちゃるな〜すの姿が見られるのなら、ずっと分からないままでもいい」という気持ちは同じだったのではないでしょうか。

 そして、そんな想いが暗に伝わったのか、あるいは解決編のためのヒントが出揃ったのか、2021年以降において「名取■奈」に関する新規情報はあまり見られなくなったと思います。

 そのことに安堵する一方で、2021ばくたん。のラスト数秒の演出や、2022ばくたん。にて発表された楽曲「モンダイナイトリッパー!」の歌詞およびMVには「名取■奈」の存在がはっきりと描き出されていました。
「名取■奈」が不安の火種として視界の隅にずっと映り燻り続けていました。

 だからこそ、今回の「さなのばくたん。-ハロー・マイ・バースデイ-」キービジュアルを見たときに、集大成と言われた時に、嬉しさと怖さを同時に感じました。表題にはない「AGAIN」の文字と「名取■奈」の写真。
 お話の続きが読める読者としての喜びと、彼女が"バーチャルYoutuber"性をまだ持っており物語の終わり=お別れへと一歩近づいてしまうことへの不安が、「ばくたん。開催うおおおおおお!!!」と同時に押し寄せました。

死ぬど。情緒が。

 そして、進展への希望と終点への不安を抱えたままの自分は、「名取■奈」が登場したらその時考えよう、まずはイベントを楽しもうという、やっぱり覚悟せず逃げたままの、そして今回のばくたん。へ弱点丸出しの状態で臨むこととなりました。


迎えた「さなのばくたん。-ハロー・マイ・バースデイ-」


以下、『さなのばくたん。-ハロー・マイ・バースデイ- Powered by mouse 』
について触れます。ネタバレです。

未視聴の方は

まずはこちらへ。







いいですかね?
以降はすでに視聴を終えたもの、あるいは断片的かつ致命的なネタバレを承知の上として話を進めますよ??



 さなのばくたん。-ハロー・マイ・バースデイ- 開演
初手に名取作詞で去年メインの楽曲「メチャ・ハッピー・ショー」。
そして名取の想定外の挙動をする謎機械「森羅万象検索くん」の登場。
かなり、やばい。
((これは……これは来る……こう、分かんないけど、ラストに名取が退場した後、勝手に機械が動いて俺らにすっごい考察要素とか落としてくるじゃんか腹括れ~~~~!!!))
と脳が遅すぎる覚悟の準備をし始めます。


 今回のばくたん。は、昨年のセルフオマージュのような形で進行していきました。ただし出てきたのは、去年のような「衣装さん」でなく並行世界の「名取さな」自身でした。そして、彼女たちの悩みを解決していくと。コール&レスポンスや、水平思考ゲームや、大喜利アンケート企画。明るい曲調の新曲「パラレルサーチライト」などなど!
いろいろな名取と、楽しい時間を過ごしました。

そしていろんな企画を通しつつ、並行世界の名取はお悩みを解決していきます。
学生名取さんがモンダイナイトリッパー!を歌い終わり舞台暗転、一瞬身構えますがどうやら無事に帰ってきた模様。そのままさまざまな告知・新情報。
オンラインイベント「さなちゃんねる夏祭り」の開催決定。
ついにおしりぷり音頭が……!?と、ワクワクになります。
そしてさなちゃんねる5周年。イベントをしたら駆けつけてくれるの嬉しいという言葉に、駆けつけるぞうおおおおお!!の気持ちを返します。

名取のありがとうの言葉に、とっても嬉しくなります。こちらこそって。



これは懺悔ですが、イベントの最中、私はガキでした。
赤ちゃんでした。「キャッキャ」って言いながら見てました。
来ることがほぼ分かっていることをあえて忘れた時間でした。
本当は覚悟なんてできません。

そして予想していたより早く、事は動きました。



「別世界線の名取たち、めちゃくちゃすっきりお悩み解決って感じで、終わってって,よかったですね。」

「うらやましいですね。」


その言葉とともに、元に戻ってきたはずの世界に誰かがやってきます。
急いで隠れる名取。暗転するスクリーン。訪れる静寂。

やがて何かが映し出されます。
パソコンの画面ほど明瞭でないそこに、何が、誰が映っているかは見えません。
でも理解しています。

「わたしには、悩んでいることがあります。」

聞こえた声とともに振り返り、そして照らされるライト。




そこにいたのは、3Dの体で舞台に立つ、「名取■奈」の姿でした。



 正直なところ、「名取■奈」がここまで真正面に、しかも3Dで出てくることを想定していませんでした。2019お誕生日配信や2021ばくたん。同時視聴では、ともすれば「名取さな」には観測できない存在ではないかと思っていたから。
 名取がパラレル名取に抱いた、「ドッペルゲンガー的なので死ぬかもしれない」という危険性を、最も孕んだ組み合わせだったから。


なぜ名取さなに泣かされたのか

「名取■奈」による告解、「名取さな」による弁解。
でも抱えていた悩みの、解決の糸口は、自分の手にあって。
そしてとっくにせんせえにも届いていて。

「今日、ここで、せんせえたちの前で、わたし/私の悩みと向き合う、新しい約束をさせてください!」

そして贈ってくれた曲が、「ゆびきりをつたえて」でした。
これまで、名取の曲はせんせえに向けた、あるいはせんせえと名取のことを綴った歌詞が主でした。
でもこの曲は、「名取■奈」の、「名取さな」自身の悩みと、悩んでいた自身の姿を受け入れて進む決意を謳った歌詞を、歌うことを通して、約束としてせんせえに伝えるものでした。


ここで本当に、薬袋カルテで引き摺っていた感情が救わました。

まず「白紙のカルテ」
V界隈の"Vtuberな"流れが勢いを持ち始めた中で、「薬袋カルテ」が”バーチャルな”存在であるために、無月まりあを犠牲にする選択をしました。
例えばキズナアイ親分ならAIですので、バーチャル上にいても不思議ではありません。でも一人の人間がバーチャルに存在するとしたら、元になる「中の人」、魂が必要です。
あの物語の中において「薬袋カルテ」は「〼医」さんのアバターではありません。でもカルテちゃんになり、モデル一新や 3D化をした誰かがいた。
その「誰か」の役を、無月まりあに、あるいは無月姉妹に背負わせました。

 さて、今回のばくたん。で、「名取■奈」が「名取さな」の「中の人」であるという立ち位置づけがされ、あれは過去の名取さなの姿でなく、今なお存在すると、彼女によって、バーチャル人類たる「名取さな」がいることを定義づけてくれました……

と、言えなくもないのですが、実際ちょっと違うのかなと思っています。

 少し話は逸れますが、今回のばくたん。のお悩み解決において、解決策の提示は全て名取からでした。そしてそれのお手伝いをせんせえに頼んだ。つまり、「名取■奈」の悩みについて、せんせえが受け入れてくれることは暗に知っていたとも言えます。
昨年のさなのばくたん。-メチャ・ハッピー・ショー-のパンフレットをお持ちの方は名取さなインタビューを読み返してみて欲しいのですが、去年「衣装さん」を演じるにあたって、名取は「頑張って別物として演じるので、まったくの別物として扱ってください。」と言っています。そして、我々せんせえは大いに乗っかりました。王アホだったよね〜とか、制服さんかわいいね!とか。
それ以前でも、例えば楽曲「Chantして!!!!!」では、いろり(cv.名取さな)として出ていましたが、我々はちゃんとそれを「いろりちゃん」として認めました。

つまり、「名取■奈」という、本物のナースでない、もしかするとバーチャルでもない自分が、「ば〜ちゃるな〜す 名取さな」をしていたとしても、みんなで楽しく過ごすことができるのなら、その嘘をつづけてもいいかなという確認と、
せんせえがたにその嘘を共有してもらってもいいよねという、Vを楽しむ上では当たり前のようなその約束を、これまでの積み重ねによる信頼とともに預けてくれたのではないかと、そう思えました。

バーチャル人類として、インターネットの存在としているための担保を、「中の人」の存在ではなく「せんせえの信頼」のもとで成り立たせることを、でっかく示してくれました。

「白紙のカルテ」で「わたしもナースになりたいな…」と言っていた彼女が、
「白紙のカルテ」の命題に対し、答えを提示しました。
まるでエデン条約編の「楽園の証明」のように。



 次に「バーチャルYoutuber」として。
謎が解けたら、物語が終われば、その先はありません。
「続き」のためには新たな謎、次のネタが必要です。
スピンオフだけがダラダラ続くのも……嬉しいでしょうがやはり綺麗ではありません。

 もし「名取■奈」の謎が解けてしまえば。
 その後に活動する「名取さな」は、それこそダラダラと続くスピンオフ、「見た目にあった初期設定だけ付けられ、あとはゲーム実況や雑談をする人物」になるかもしれない、もちろんそれでも続くのは嬉しいけど、一方で「物語」が蔑ろにされる残念さもあります。
 あるいは、謎が解けたことで引退という綺麗な終わりもあるかもしれません。
でもその後に来るのは、「昨日まで目の前で話していた1人の人間が簡単に存在ごと消えてしまう」悲しみです。

それに対して名取が示してくれたことが本当に見事でした。
名取さなは、謎として、「考察要素」として存在していた「名取■奈」を、
悩んでいる姿であり、そして乗り越えなきゃいけない自身の課題として、その存在する意味づけを変えてくれました。

今まではせんせえがヒントをかき集め、考察し、そしていつかの時に正解を出す/答え合わせをするものだった「名取■奈」は、
この後、あるいはもっと先の未来に、実は名取こうでさ〜、と思い出話になる「いつかの名取さな」になりました。

またブルアカで例えますが、今まで「小鳥遊ホシノの過去」のような存在であったのが、今回のばくたん。によって「杏山カズサの過去」のような存在になったといえばいいでしょうか。

そして、これからの名取の活動は、「名取さな」が「名取■奈」の持つ悩みを受け入れたり乗り越えたりしながら進む成長譚という「物語」として受け取れます。
普段の配信も、「治療」から「成長の過程」へとその意味を変えていけます。

ジャンルを変えたことで、「バーチャルYoutuber」を続けながら、世界観に捉われない「Vtuber」の流れにもついていける形へと進化を遂げたのです。




だからこそ、「バーチャルYoutuber」名取さなは、インターネットに実在する。バーチャル世界に生きている存在としてこれからも自分達の前にいてくれる。
応援させてくれる。

その実感が、その安心感が、涙を止まらなくさせました。





最後、「名取さな考察」の代表的なフレーズでもあった

わたしの
なりたかった
わたし

に、手書きの文字が加わります。
「を、みつけてくれて、ありがとう。」

この5年で、名取にも友達がたくさんできました。
そしてたくさんの人を笑顔にしてきました。
何より、名取の治療の一環として始めた配信活動で、そこに集まったせんせえはセラピー犬のような、癒す側の存在だったかもしれません。ですがその実、我々の方が名取に癒され、こうして傷を治してもらっていました。
そこにいた名取の姿は紛うことなき、みんなを元気にするナースです。


不安の火種としてずっと燻り続けていた「名取さな考察要素」を、名取は今回のイベントで、5年間という彩りを以て、大輪の花火にしてくれました。




ここまでくれば語るまでもない事ですが、
このイベントの締めくくりが「西郷・R・いろり」であったのも、良かったです。


追記


「新参も古参もなくなった話」

 さて、先の「バーチャルYoutuber」としてのお話の解決に補足を。
「名取さな考察要素」は、お出しされる場面がすごく限定的でもありました。
なぜ「名取■奈」って呼ばれているのかなんて、名取さな公式同人誌か2021ばくたん。を見ているかしなければ知る由もないのではないでしょうか。

 普段の配信を楽しく見る分にはあまり関係ない話でもあります。
しかし、「バーチャルYoutuber」という話の上では、知識量差によって古参と新参を分けかねない要素であったと思います。

 しかし今回のばくたん。で、名取は自身のことを打ち明けるとともに、受け入れて、変わっていく決意を見せてくれました。
「考察要素」にとっては、大規模火砕流のような供給です。

 例えば今あなたのいる地面の下に何があるか、それを知っていればもちろん知見として一つの糧にはなりますが、目の前にある景色はその知識の有無に関わらず広がっていて、楽しむことができます。
同様に、これからはバーチャルYoutuber名取さなの活動は、「治療」でなく「成長譚」の一部となって、今目の前にいる「名取さな」を応援するというスタンスで、いつから見始めた視聴者でも一致していけようになったのではないかと、そう思います。

もちろん昔のことを知っていればそれだけ深みは増すものですけどね!


5年間の集大成


名取からの、自分たちせんせえへの信頼の話をしたと思うんですけど、

「名取が楽しいと思うことで、みんなが楽しんでくれる」の話。
はじめはバイノーラルとかセリフリクエストとかせんせえが楽しんでくれそうなことから、一緒に楽しめそうなゲームを配信でやったりして、オススメのマンガを紹介してみたりして、モルカーの話題で盛り上がって、そして最近では名取の気になったゲームとかハリポタとかブルアカとか。
「名取の楽しいがみんなの楽しいになる」っていうのが年を追って証明されているのではないかと思いまして。

ゆびきりをつたえての歌詞中
「私がどんな人になっても 変わらず いてくれるんでしょ?」
 例えば王の衣装は、はじめは「さなちゃんねる王国の王」というエッセンスを盛り込んだアイドル衣装でした。PINK ALL PINK!にあるように。そこから衣装が増え、そして横暴なさなちゃんねる王のキャラクターが肉付けされていくうちに、2022ばくたん。のような「尊大なさなちゃんねる王」になっていったと思うんです。そして今年のばくたん。ではそんな王のちょっと自信のない姿が。
 制服衣装も電撃マオウ様コラボと9万人記念でやったコスプレから、「フラれ概念」普及によるクラスの憧れの名取さんとしてのキャラクター、あざと危険かわいい制服さん、今年のおバカな学生名取と。
 そして名取も。「メスガキ四天王」だったり幼馴染だったり、時にはアイドルになったり、お友達のグッズを描くイラストレーターだったり。今年のハロウィンでは名取自身がゾンビになっちゃったり。そしてバーチャル人類であったり。
 どんな風に、どんな側面を見せてきても、せんせえは楽しんできたのを、お互い知ってると思っていて。

 本当に、この5年間の中で名取が実際にやってきたことと、それについてきた自分達「せんせえ」があったからこそ、名取が向けてくれた「信頼」にしっかりとした重みが生まれているのかなぁと。


あるいは。
 名取の活動当初、せんせえ方って「ワンちゃんせんせえ」とか「クソザコよわよわワンちゃんず」みたいな側面あったじゃないですか。

5年間でしっかり名取に調教されちったのかな〜〜〜と。

今日も名前の横に🍆を刻みながら思うのです。


よるふねまご🍆











あとがき:「バーチャルナースのオタク」をやめた話

薬袋仮想診療所のこちらのFANBOX記事の内容を読んでいるとより理解ります。


名取さなと薬袋カルテ

バーチャルナースとしてデビューした2人は、当初から対照的でした。
ピンク&白と、青&グレー
元気いっぱいな子と、落ち着いた静かな子

それでいて、お互い「患者衣の少女を裏に抱えたバーチャルナース」でした。

そのために、自分が好きなこの2人について、頭のどこかセットにしていました。
「バーチャルナース」のオタクでした。

ですが、名取は、カルテちゃんとは違った「患者衣の女の子」との決着を、折り合いの付け方を示し、最高の対比を以て二人を分けてくれました。

「終わりへ向かう始まりの歌」を最後に遺し、”バーチャルYoutuber”から手を引いた薬袋カルテと
これからも続いていくストーリーへ、晴れた行く先へ向かって、踊るように扉を開いた名取さな

また、「ナース」としての在り方も、見事な対比で示してくれました。

これからは「名取さな」と「薬袋カルテ」のオタクでいることができます。
ありがとう。


よるふねまご🍆💉


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