独学研究のススメ(その他のアーカイブを見てみよう)

「その他」


 その他、あげるとキリがないくらい出てきます。各大学のデータベース、美術館や博物館のデータベース、個人が作っているデータベースなど、数え出したらこれだけで連載が一つ作れます。
 
それをやってもいいのかしれませんが、「さっさとほかのやり方を見せろ」と批判されるのが請け合いなので、ここらで一度切り上げます。
 
最後に、前述した以外にも使えるデータベースを軽く紹介して「近場で資料を探す」という章へ移りたいと思います。

新日本古典籍総合データベース

東京立川にある国文学研究資料館が展開するデータベースです。

書いて字のごとく「古典」の書籍や絵画が見られるサイトとなっております。

国文学研究資料館を中心におおくの大学や資料館と提携を結び(その範囲は世界に及びます)、この世に数点しかないという貴重な古典や文書を、メンドーな閲覧予約することなく見る事が出来ます。
 
中には重要無形文化財級の代物も多々あり、本来ならばガラスごしでしか見られないような作品を拡大したり縮小したり好きなだけながめる事が出来ます。
 
とにかく蔵書の数は相当なもので「万葉集」「源氏物語」といった名作で検索すると千単位で出てきます。
 
また、ランキングやピックアップといった「いま何が注目されているか」「今日のおすすめ」みたいな機能もあり、これを見るだけで勉強になります。
 
古典にかけてはトップクラスのデータベースといっていいでしょう。
 
使い勝手も悪くなく、蔵書数も多い、さらには検索機能もまずまず――とデータベース構造自体には欠陥はないのですが、古典籍とだけあって難解な点が多く、国会図書館デジタルコレクション的な感覚でいどむと打ちのめされます。
 
草書体、崩し字はあたり前、しかも漢詩や漢文というのもあるので、普通の人が読書感覚で読めるかというとスゴく困ってしまいます。解読できる人ならいいかも知れませんが、普通の読書感覚で挑むと詰みます。
 
ただ、そうはいっても資料に罪はありません。読めなければ読めるようにコツコツと研究に励むのみです。
 
古典や草紙物を研究したい人はこのデータベースがある事を記憶しておくと後々便利になることでしょう。

e国宝

 これは国立文化財機構が展開する「国宝閲覧」のデータベースです。日本にある国宝と重要無形文化財の数々をインターネットを通してみる事が出来ます。

「国立文化財機構の4つの国立博物館 (東京国立博物館、京都国立博物館、 奈良国立博物館、九州国立博物館)と研究所(奈良文化財研究所)が所蔵する国宝・重要文化財の高精細画像を多言語の解説と共に見ることができる」とアピールするように、国宝の数々を大画面で見ることができるほか、詳しい解説――さらには「画像を保存」して、持ち歩く事もできます。

本来なら絶対に触ることのできない、中には撮影さえもろくろくできない資料を好きなだけ見ることができ、しかも持ち歩けるというのはそれだけで大きな恩恵です。
 
また解説も研究者や学芸員が執筆しているだけあり、平易でありながらもなかなか読みごたえがあるモノが多いです。
 
教科書に出てくる有名な品から、マイナーだけど学術的価値の大きなものまで多種多様な資料が取り揃えられています。
 
ただし、国宝・重要無形文化財としてみる事が出来るのは、上の五つの施設が所蔵している国宝だけで、都道府県立博物館や市町村博物館、また宗教法人(寺や神社)や個人の所有の代物は見ることができません。すべての国宝がみられるわけではないので、そこは気を付けておきましょう。
 
また、サイトが作り込まれているせいか知りませんが、時折サイトが重くなるのが欠点です。通信量が上がりすぎないように気をつけましょう。高画質の弊害でしょうか。
 
日本の美術史・工芸史などを独学研究する上で、まず見ておくべきサイトではないでしょうか。

青空文庫

著作権が切れた近代日本文学の作品を無料で読むことができるサイトです。ここで名作を読んだという人も多いのではないでしょうか。

先年、著作権が伸びたせいで新しい作家が更新できず(青空文庫は著作権延長に強い危機感と反発を寄せていました)、三島由紀夫や川端康成が更新できないまま足踏み状態にあるのが残念です。政府や文化庁はそうした所に配慮を寄せなかったのでしょうか。
 
それでも著作権が切れた作家は星の数ほどあるので更新できる作品は無尽蔵にあるといえましょう。
 
作家によって掲載数の優劣はややあるのですが、とにかく文学作品をタダで読めるというのは大きいです。
 
夏目漱石、森鴎外、太宰治といった今なお読まれる作家から、江戸川乱歩、夢野久作、小栗虫太郎、坂口安吾といった推理小説作家、三上於菟吉、吉川英治といった大衆作家、小林多喜二、中条百合子といったプロレタリア作家(一部で言われていたりするのですが青空文庫はプロレタリア文学に強いです)、岡倉天心や折口信夫といった批評家・学者まで数々の作家を取り揃えています。
 
文豪と呼ばれる面々の代表作はほとんどおさまっているため、コストカットにもつながります(無論紙で読みたい人はそれで結構でしょうが)。
 
文章を読ませるためだけに簡素化を図っているようなサイトですので、読みやすさという点では第一です。それこそ小説家になろうやノベルアップ+の感覚で読めます。
 
最近では青空文庫の所蔵作品をkindleやgoogle booksに変換してダウンロードさせる所もできており、パソコンやネット環境のあるところでなくとも、他の電子書籍同様に持ち歩けるようになりました。

無料でダウンロードできるので「ちょっと読書したいけど紙の本は持ち歩けない」「大作を読みたいけど紙の本では重すぎる」という人にはこのデジタル化された青空文庫をおすすめします。
 
ひたすらに文学作品や批評文を読ませるためだけに運営されている非営利団体なので、そこには露骨な商売っ気も思想性もありません。何かを読もうとするたびに広告が挟まってイライラするということはありません。
 
故に欠点という欠点をあげる気もないほど、簡素なつくりになっています。
 
それでも一応の欠点をあげると余りにもマイナーな作家は取り上げられておらず、デジタル化が進んでいない事。
 
作品の全文を挙げているため、なろうやノベルアップ+のように「ここまで読んだからしおりをしておこう」という息抜きポイントが少ない事。
 
ただ、前者に関しては致し方ないという所があり、後者に関しては章や節ごとに区切りをつければ、一応は対策できない事もないので「これはどうにかしてほしい、欠陥も欠陥である」というわけではありません。
 
それこそ書籍をそのまま電子データに移したようなサイトですので、これ以上のないものねだりはバチが当たるでしょう。
 
有名な小説や批評や研究文を知りたい、読みたい、一節を引用したい――とその使用法は多々あると思われますが、知っていて一切の損はないサイトだと思います。
 
普通に娯楽的な作品も転がっているので、独学研究に関係なく普段使いできるサイトではないでしょうか。暇つぶしにも最適なサイトです。


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