見出し画像

暑い日のコーヒー

「昼間は暑いくらいですね」という会話が増えてくると、それと呼応するように、お客さんからの注文に小さな変化があります。もちろん、季節を問わず同じ豆を好まれる方も多くいらっしゃるのですが、こういうタイミングでは、いつもの注文に「ひとつ浅いもの」あるいは「ひとつ深いもの」が混じったり、何かしらの移ろいがある方もめずらしくありません。

少々暑くなってくると、味の感じ方や欲する味わいが変わります。それはコーヒーに限らず、ふだんの食事でも同様なので、理屈はさておき、誰にでも思い当たるフシがあるのではないでしょうか。

暑い日に感じるコーヒーの味は、どこか単調なものになります。いまいち広がらず、のっぺりしがちです。のっぺりすると、それが「重み」につながったり、バランスが崩れたりして、ふだんはちょうどいい加減の「酸味」や「苦味」のどれかを、相対的に強く感じたりします。これはごく自然なことだと思います。

さて、たとえばアイスコーヒーというのは、そういう変化に対する工夫のひとつです。冷やすことにより、のっぺりした部分をシャキッとしめて、また別のちょうどいい塩梅に仕上げるイメージです。とけてしまったアイスクリームや、ぬるくなってしまったビールを想うと、冷やすことによるおいしさの存在をたしかに感じられます。

また、ホットで愉しむにしても、先ほどの豆の注文の変化などは、「ひとつ浅いもの」を選ぶときには「ちょいと軽やかにしたい」という感覚、「ひとつ深いもの」を選ぶときには「少し感じやすくなった酸味を軽減したい」という感覚かもしれません。そうすると、これらの根っこは同じところにあるように思います。

暑さと折り合いをつけて、おいしく飲むための工夫は、ほかにもいろいろとあります。ひと口に「暑い」といっても、半袖を着るまではいかない春の暑さや、身体が慣れていない初夏の暑さ、天気に左右される梅雨の暑さ、外出の危険すら感じる盛夏の酷暑、いつまで続くか秋の残暑など、なかなかカラフルです。朝と昼とでも違いますし、日差しがあるかどうか、家にいるのか外を歩いているのかでも違いますね。

だからこそ、自分なりの工夫も、種類をいくつか持っておけば、その時々の自分に合ったコーヒーを、気分よく愉しむことができるような気がします。

アイスコーヒーを、「冷たいものを飲みすぎると胃腸が弱るから」といった理由で飲まない人もいるでしょう。私たちも出先で水を買うときには、常温のものがあればそちらを選ぶことが多いです。また、単純に味のイメージがよくない(煙っぽい感じやガシガシした感じ、別の飲み物みたいな感じ)という人や、氷の準備が面倒だという人もいるかと思います。

そういう人のために、氷の量を調整できる淹れ方や、冷たくなり過ぎないつくり方、さらりとした味に仕上げる方法や、氷を使わない方法も考えてみました。何回かに分けて書いてみます。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?