今年の記憶と着心地の再定義

前回の続きです。EVERY DENIM 1stモデルの「Bengala」は、「いかに世の中にない商品を出すか」というテーマから、現場の職人さんが生み出したいジーンズという方向性で決まりました。

岡山県高梁市で撮れる顔料「ベンガラ」”限界集落”と言われならがも街おこしが進む高梁のことを、もっと多くの人に知ってもらいたいという職人さんの強い思いから誕生したBengalaは、独特の加工を施すことで他にない風合いをもった、EVERY DENIMのスタートにピッタリの商品だったと思います。

そんなこんなで年が明けた2016年、丸3ヶ月は「Relax」の企画や試行錯誤を繰り返していました。

1stモデルと打って変わって2ndモデル「Relax」は、「どうすれば少しでも多くの人にジーンズの”複雑でない”価値を届けられるか」を突き詰めた結果、ストレッチデニムとして生まれることになりました。ジーンズが好きな人にも、そこまでではない人にも、単純に、”良い”と言ってもらいたい。そんな想いからできたジーンズです。

商品化においては、生地がとても伸びるので特に縫製段階での苦労が多く、想定より時間がかかってしまいました。

この間、のちに試着展示会でお邪魔し、トークイベントもご一緒させていただいた「セコリ荘」の宮浦さんや、いまオンラインサロンを一緒にやらせていただいている、ブログ「隠居系男子」でもおなじみ、「灯台もと暮らし(もとくら)」を運営する(株)Waseiの代表・鳥井さんと出会ったり、お話することになります。

3月は縁がつながって、不思議なくらいどんどんどんどん人にお会いできた1ヶ月だったと思います。

Relaxは無事4月に製品化でき、8月の現在までずっと試着展示会を続けています。これからも各地で開催する予定ですので、また多くの方にお会いできるのが楽しみです。

そして、改めてこう見ると、2つのモデルは違うアプローチからできた商品であることがわかります。

いま、ぼくたちは3rdモデル、4thモデルに向けて着々と準備を進めています。そこでは、いままでの2つのどちらとも違う、新しい方向性から商品化するつもりです。その1つの動きが先ほど言ったオンラインサロンになります。

このサロンでは、「自分たちの理想のデニム」を求めて、ときにはオフラインも交えながら、1本のデニムを作るというのをゴールに進められています。なんだかハードルが高そうに聞こえるかもしれませんが、全然そんなことはなく、若い人を中心にさまざまな方がメンバーになってくださっています。

今後も定期的にこのブログで内容について告知していくと思います、とにかく、このサロンでは、ぼく自身「ものに愛着を持つとはどういうことか」をテーマに掲げ、運営しております。

アパレル、ファッション業界をめぐる現状においては、さまざまな思いがありますが、いまのところ、ぼくは「みんなが自分の持ちものに愛着を持てる」よう世の中が進んでいってほしいなと思っていますし、自分もなにか貢献できればと考えています。

ファッションは楽しむものという大前提の上で、この消費社会の中でいかにモノと付き合っていくか、その付き合い方を楽しめるか。その楽しみ方を選択肢として提示できればと思います。

着心地は、ある人にとっては単に「素材やつくりの良さ」を示す言葉かもしれません。でも別のある人にとっては、「健全なサプライチェーンでつくられていること」「自然環境に配慮していること」を示す言葉かもしれません。

透明な生産背景の下に、きちんと安心して身につけられるモノ。安心できる服の方が、着ていて心地いいと思う人はいるはずです。ぼくたちは、着心地の再定義を迫られているのではないでしょうか。

これから誕生するEVERY DENIMの3,4モデルが、そんな誰かの「着心地の良さ」に貢献できれば、それ以上の喜びはありません。

山脇、毎日。