イボドラム(ウドゥ)と[ɡ͡b]の話

ウドゥという楽器をご存知でしょうか?壺のような形状の……というかもう壺そのものを楽器にしたみたいなやつでね、打楽器なんですけどね。まあ知らなくてもこの記事は読めるので大丈夫です。

ウドゥは別名イボドラムといって、日本で売られる際はどっちかで表記してあったりどっちも表記してあったりします。で、ウドゥってのは現地人の呼び方です。現地人とは誰かというと、ナイジェリアに住んでるイボ人のことです。イボ語で素焼きの壺のことをウドゥ(udu)と呼んでいて、それを叩いたのがこの楽器の発祥だとかいう話です。

そしてイボドラムという名称は、外部の人がイボ人たちのドラム(打楽器)ということでそう名付けたんでしょうね。民族楽器にはこのように、現地での呼び方と外部から勝手に名付けられた名称の2種類以上が存在することがよくあります。

でまあそれはさておき、こっから本題なんですけど、イボドラムをアルファベット表記すると「Igbo drum」となるんですよ。ウドゥの動画とか検索したことのある人ならなんとなく知ってると思うんですけどね。僕はね、「Ibo」じゃないのかと。変なスペルを書くんだな〜と。思って、「Igbo」というワードについて調べたんですよね。そしたら次のようなことがわかりました。

イボ語(Igbo language)には、日本語のバ行にあたる子音は、普通の「b」と特殊な発音の「gb」という異なる2種類がある。

はい。つまりそもそも「b」とは異なる子音で「gb」というのがあるわけですね。2文字でひとつの音素を表しますから、英語の「ch」とか「sh」みたいなのと同じ感じですね。

で、こっからは少々マニアックな話になりますが、gbという子音の発音記号は[ɡ͡b]となるらしく、この発音は音声学的には「有声両唇軟口蓋破裂音(ゆうせいりょうしんなんこうがいはれつおん)」というむちゃくちゃに強そうな名前が付いています。これは子音の「b」を意味する「有声両唇破裂音」と、「g」を意味する「有声軟口蓋破裂音」が合わさったような音ということですね。発音も聞きましたがgを短く小さく発音してすぐにbの発音が聞こえるような感じでした。多少、話す人にもよる気がしますが。(こちらで発音の一例が聞けるよ)

日本人には当然馴染みのない発音で、まさしくアフリカっぽいな〜なんて思っていたらやはり使用されている地域はほとんどが西アフリカみたいですね。イボ語はもちろん、ヨルバ語にも[ɡ͡b]の発音があるらしい。(なので、日本でもわりと認知度の高いヨルバ語をかじった人は普通に知っている話なのかもしれない。知らんけど)

以上。

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