伝える、はプレゼント。001

この文章をお読みになっているということは、あなたは「伝える」ことに興味があるのだと思います。

ということは、あなたはこの時点でかなり「伝える」ことができています。
おそらくあなたは日本人で、日本語でコミュニケーションを問題なく取ることができると思います。日常生活の中で「まったく何も伝わらない」「何を話したらいいかさっぱりわからない」ということはほとんどないはずです。
ですからたいていの人は、「伝える」ことが得意か不得意か、できるかできないか、そんなことすら考えたことがありません。
それにもかかわらず「伝える」ことについて問題意識を持ったあなたは、この時点でかなり「伝える」ことに気を使っているはずです。すなわち、おそらく全国民の「伝える」ランキングがあったら上位2割には入っていることでしょう。私が保証します。

そして、この文章を読み続ければ、あなたは「伝える」ランキングの上位1%に入ることができます。

申し遅れました。私は(株)東風社 代表取締役社長の幸本陽平です。「考える・伝えるって面白い。」をモットーに、ビジネス研修やセミナー、コンサルティングなどを行っています。本もこれまでに4冊を書きました。(2019年1月現在)最新刊はこちら

とはいえ、私は広島在住の普通の経営コンサルタントです。大企業の社長でもなければ、抜きん出てスゴい経歴があるわけでもありません。にもかかかわらずこれまで本を4冊書くことができたのは、それなりの「伝える」力があったからではないかと思います。どんなにすごい経歴や実績のある人でも、それを文章にして読者に伝えられるかどうかはまた別ですから。(そんな人にはゴーストライターという手もありますが。)

そんな私が研修などで教えている「伝える」ための方法論が、「プレゼント」で考える手法です。私の二大テーマのうち、「考える」は書籍化したので、そちらをお読みください。ここではもう一つ、「伝える」について、研修やコンサルティングでどんなことをしているか、まとめてご紹介します。こちらについても書籍化を検討してくださる出版社の方がいらっしゃったらご一報ください(笑)。

うまくわかりやすく伝えるには、「伝える=プレゼント」と思うことがコツです。具体的には、プレゼントの5項目、

1.目的(何のために渡すか)
2.対象(誰に渡すか)
3.中身(何を渡すか)
4.包装紙(どんな見た目で渡すか)
5.渡し方(どのように渡すか)

これを考えることが、「伝える」ためにも共通で、重要だからです。

本編に入る前に、なぜ私が「伝える」について語ったり教えたりすることができるか、その背景をお伝えしたいと思います。書籍を複数書きました、あるいは経営コンサルタントです、というだけではそのような人はたくさんいますから。

私は「伝わらない」人間でした。いや、おそらく今でもそうだと思います。

簡単に言うと、人の言うことが理解できないのです。たとえば会議が終わった後で「じゃ、そういうことで。」などと終了すると、

「えっ、何?何が決まったの!?そういうこと、ってどういうこと!?」

と私だけ理解できていないのです。私以外の他の参加者は理解できているにも関わらず、です。

会議できっちりと「~は○○さんの担当になり、いついつまでに××することになりました」などと明言してくれないと、私だけ理解できていないのです。おそらく、話の流れで重要なことや決まったことをかいつまんで理解する、という能力が人に比べて劣っているのだと思います。

こうなると、私だけ要領をつかめておらず、そのため仕事に支障をきたすこともありました。ADHDやアスペルガー症候群などの可能性も考えて病院の診察を受けてみましたが、そういった症状ではない、との診察結果でした。(もちろんこれらの症状は白か黒か、というものではないので、私はグレーゾーンなのかもしれません)

そんな「会議など、人の話や説明を理解することが苦手」な私が、反対に説明する側、つまり「伝える」側になったらどうするか。

簡単に言えば「自分がこう伝えられたら、伝わるだろうな」と考えながら、資料を作ったり、話したりするようになりました。

「こんな風に言われても(自分は)わからないだろうからこう言おう」
「この書き方よりもこっちの書き方のほうが(自分は)わかりやすいからこうしよう」

と、「自分だったら」という観点で話したり書いたりするようにしました。

すると、特定の何かを学んだわけでもないのですが、いつの間にか「幸本の資料はわかりやすい」「幸本は話すのがうまい」などと言われるようになりました。

私は何かプレゼンなどを深く勉強したわけではないですし、人よりうまく文章を書くわけでもありません。だから謙遜でもなんでもなく「別に普通のことをしているだけなのに、みんなお世辞がうまいな」とだけ思っていました。私の得意分野はマーケティングやロジカルシンキングなどで、むしろ話したり書いたりするコミュニケーションは自分の苦手分野だ、と思っていました。自分が話を理解できない人間だったので。

しかし実はこの「話を理解することが苦手」であることが、私にとってプラスになっていたのです。そんな私でも理解できるようにするにはどうするか、という観点で資料を作ったり、話を組み立てたりしたので、結果的に私以外の人にもすごくわかりやすいものになっていたのです。

「ユニバーサルデザイン」をご存知でしょうか。たとえばシャンプーの容器には、側面に突起がついています。目の不自由な人が触っただけでリンスと区別がつくようにするためです。結果的にそれは、視力が正常な人にとってもシャンプー中に目をつぶっていてもわかりやすくなるため、結果的に全員にとってプラスになっています。

私の「伝える」手法も、結果的にそのユニバーサルデザインのようになっていました。「人の話を理解することが苦手な私でも理解できる話」を心がけていたため、それは結果的に私以外の人にも非常にわかりやすいものになっていたのでした。

結果として、新卒入社直後の23歳で高級化粧品ブランドのメルマガやWEBサイトの文章を書いたり、26歳の非管理職にもかかわらず全社会議の資料作りおよび発表を任されたりと、書く・話すなどの「伝える」仕事が増えてきました。(ところが20代のうちは、まだ自分が「伝える」ことが強みだという意識がありませんでした。)

経営コンサルタントとして独立すると、本を2冊同時に出版する、というこれまででは考えられなかったことが実現しました。その当時の私は(今でもですが)特に大きなことを成し遂げたわけでもない、無名の人間だったからです。それでも私を「書けるはず!」と信頼してくださった出版社の方には感謝してもしきれません。

こんな「人の話を理解できない」私だからこそ、こうすれば誰にでも伝わる、という手法を生み出すことができました。それがタイトルにもなっている「伝えるは、プレゼント。」です。

次回から具体的に「伝える」にはどうすればいいか、お話ししたいと思います。

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