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「ついやってしまう」という体験デザイン

たまたま書店にいるときにこのツイートを見かけて、『「ついやってしまう」体験のつくりかた』という本を買ってみた。

読んでみたら、すごい本だった。

この本では、ユーザーの心を動かす体験をいかにつくるか、という手法について、「ついやってしまう」「思わず夢中になる」「誰かにすすめたくなる」仕組みが語られている。

スーパーマリオやドラクエなどが題材になっており、ゲームをやらずに育った僕にはわかりやすいはずの題材がいまいちピンと来なかったけど、それでも楽しみながら読めた。

ゲームをやってきた多くの人にとっては、逆に刺さりまくる内容なのではないかと思う。

なんとなく友達の家でやった記憶のあるマリオを考えてみても、一切の文字を使わずに直感的に楽しめる体験がつくられているのはやっぱりすごいし、ゲームの原理からサービス設計について学ぶことは多くあるのだと改めて感じる本だった。

内容としては、ものすごくざっくり言ってしまうと以下のようなことが書かれている。

1.人はなぜ「ついやってしまう」のか――直感デザイン

ゲーム自体がおもしろいのではなく、プレーヤー自身が直感する体験そのものが面白いから、人はゲームで遊ぶ、という直感のつくり方

2.人はなぜ「つい夢中になってしまう」のか――驚きのデザイン

ユーザーに疲れや飽きを感じさせず、長時間の体験を構成するためにユーザーの前提を覆すような設計の仕込み方

3.人はなぜ「つい誰かに言いたくなってしまう」のか――物語のデザイン

ゲームの中で繰り広げられる「架空の物語」ではなく「プレーヤーの物語」こそが重要であり、体験に意義を持たせる物語のつくり方

そして、これら直感・驚き・物語という3つのデザインが具体的にどう使えるのか、その実践が終盤の応用編で語られている。

たとえば、「企画」というテーマでは、「よい企画を考えるためのハウツー」が書かれているわけではない。

あくまで「つい考えてしまう」「つい考えることに夢中になってしまう」「つい誰かに言いたくなってしまう」ような、企画するという体験を再設計することが書かれている。

体験というのは常に時間とともに流れていく過程そのものであり、その過程をデザインすることが体験デザインであって、企画における「おもしろい」を直接つくりだすわけではないと著者はいう。

ゲームデザイナーなら、誰もが「おもしろいゲームをつくりたい」と願います。しかし、「おもしろい」はあくまで結果であって、過程ではありません。だからこそデザイナーは「どんな過程なら結果的におもしろいと評価されるのか」を考えなければいけません。

実際にどんなことが書かれているのかは本を読んだほうがいいのだけど、つまりは「企画を考える」という体験を駆動するためのアプローチを学ぶことができる。

そして僕が読んでいるなかで何より面白いと感じたのは、この本自体の「体験デザイン」だ。

この本は、読書というより体験そのものがデザインされていると、読み進めていくうちに気づく。

いくつかのページの最終文には何かしらの疑問や問いが散りばめられており、次のページにどんな内容がくるのかを無意識的に予想させるという、「次のページをめくる」インセンティブがうまく設計されている。

それこそ“つい”次のページをめくりたくなるような体験を読みながら何度も感じることができた。

そんな意図も最後にきちんと解説されていて、著者いわく1ページなりとも意図のないページはないという。

実際に「これは何かの伏線かな?」という箇所が多数あり、それが読み進めていくことで回収されていくのもそうだし、ざっと一読した程度でも、そうした体験をすることができる。

どこかのページに、ユーザーを起点にしたデザインの重要性が語られている箇所があり、どんな名作ゲームであっても、ユーザーにおもしろいと感じてもらうためには、遊び方が「わかる」ことが絶対条件だと語られていた。

つまり、「わかり方」を直感させることが体験デザインでもあり、そうした主張や本全体のつくりとしては、名著と言われる『新しい分かり方』(佐藤雅彦さん著)に近いものを感じた。

書かれていた内容そのものがおもしろかったのはもちろん、この本自体の体験デザインも“つい”楽しめる、そんな本でもあった。

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鈴木洋平(編集者)

1988年2月生まれ。2017年まで出版社で『編集会議』をはじめとするメディアや広告・マーケティング専門誌の編集者。2018年より“社会の無関心の打破”を掲げる社会問題に特化したメディア「リディラバジャーナル」記者。さまざまな社会問題の現場を取材している。
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