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【エッセイ】藝大は、学びをデザインしているのか?(前編)

~修士研究を決めた背景①~

前回前々回の「デザイン科とわたし」の投稿記事からの派生です。
修士研究のテーマを決めた背景になります。
ここでは、藝大でco-creationを実践しようと思った理由に繋がる、いま僕が藝大デザイン科に抱いている危機感について、より深く触れてみたいと思います。
この内容は修士研究のテーマに直接関わってくるためタイトルを分けて独立させましたが、内容の位置づけとしては、「藝大デザイン科とわたし」の4章の前編に当たります。中編はこちら、後編はこちら

あくまですべて僕個人の意見ですので、その点はご了承ください。

ⅰ) 藝大デザイン科は、藝大デザイン科の学びをデザインしているのか?

この一連のツイートをしたきっかけは、毎年の1年生の課題「モチハコブカタチ」という、未来のカバンを提案する課題で、毎年同じことを繰り返していることに大学としての伸びしろを感じたということです。恐縮ながら。

藝大デザイン科では、卒業制作を除く必修課題において、学生は先生から一方的に与えられた課題をこなすことが義務であるというかのような一方通行的な学びの構図が続いているように感じています。
(必修課題以外の時間で主体的な制作活動をしている学生も多くいます。)

そこで、デザイン科の特徴‘‘対話を重視したきめの細かい少人数教育’’と謳っているのであればなおさら、一方向的な関係性を取り払い、例えば「学生たちがどんなことを学びたいか」を先生たちがもっと積極的に汲み取る工夫があれば、学生が学びたいこと✕先生が教えたいこと をより絡ませた密な学びを創出することができるのかなと思っています。

今の時代、美術大学でなくてもデザインが学べる環境が増えた影響で、藝大デザイン科の強みが薄れていっているような気がします。
なにか大学そのものが成長する工夫をしなければ、学生の数がどんどん減っていってしまうのでは…と不安感を抱いています。
今後、日本一にこだわらないにしても、どんな学びをつくっていきたいのか、学生と先生が一緒に考えながら大学での学びをデザインしていけたら良いなぁとか思います。

留学中のDesign School Koldingでは、課題が終わる毎に毎度Course Evaluationの時間が用意されていて、先生が学生と輪になって座り、学生からからカリキュラムに関するポジティブ/ネガティブ両方のフィードバックをもらうなどといった、次の学年の学びのデザインに学生が参画する取り組みがありました。
全員が乗り気ではなかったですけど。笑

次の時代の学びを良くしようと、常に追求している姿勢には好感が持てました。

ⅱ) 受験予備校同士や、藝大との分断と軋轢

2年ほど前の入試の時期、教授が「ほしい学生をとるにはどうすればいいか頭を抱えている」とぼやかれたことを覚えています。
ほしい学生像については、デザイン科HPにも以下のような記載があります。

つくる力(=物事を客観的に観察し、構造を読みとり、課題を自らの手で見つけ出し、全体を俯瞰し、細部にこだわり、しなやかな感性から生まれた自由な発想で、課題に対する自分なり答えを美的なかたちにまとめあげ、それを社会に展開させる力)を磨く努力をいとわず、つくる力で世界を揺り動かそうとする強い意志をもつ学生を積極的に受け入れたいと望んでいます。
(※デザイン科HP デザイン科が求める学生像 より引用、一部変更/省略)

ところで、僕自身、実は藝大受験生に実技科目の指導を行う美術予備校で学生講師のアルバイトをしていて、つまり未来の後輩たちを育てている側にいるわけですが、
そこで強く感じること、いけないなぁ…と思うことは、数ある美術予備校はお互い対立して、顧客である受験生の数の奪い合いに固執し過ぎているのでは?ということです。

少なくとも僕の勤め先である予備校では、普段の勤務を「サービス業だから…」という発言を聞いたことがありますが、それはショックでした……。つまり予備校は受験生に受かるノウハウを教えるサービスを提供するための場所になってしまっているということです。ⅰ)項で挙げたような一方向的な関係性は、言うまでもなく予備校にも存在してしまっているのです。
(その背景には、「藝大に受かることがゴールである」と思い込んでしまう、自分を追い込んでしまう生徒が多く出るほどに、受験全体のプレッシャーなどの様々な複雑な問題が介入していそうですが……割愛します。ちなみに僕も、藝大に受かることがゴールになっていた人間です。)

特に違和感を覚えるのは、近年藝大デザイン科が入試説明会を開くようになりましたが、予備校の指導が入試説明会で公開された作品やトレンドばかり意識して追うようになったことです。
これについては藝大側も対策をしたとかなんとか?
(ちなみに今年の入試説明会は昨日行われましたね)

つまり何がいいたいかというと、美術予備校が受験生にケアできているのは「藝大デザイン科に受かること」のみであり、そのために効率的に高得点を取るためのノウハウを教えられるだけで、生徒の本質的な考える力や、ましてや藝大に入ったあとのことはケアする余裕がないのだ。ということです。

予備校側も藝大に合格できる力を受験生につけてもらい合格してもらいたくて、藝大側も力を持った理想の学生を求めている。
僕はこの両者の学生像の追求の方法にズレあるように感じていますし、そのズレの影響もあってか、予備校同士の間にも必要以上の軋轢を生んでいるようにも感じます。

そこで、大学は大学生だけを教える機関だと過剰に他と切り離して求める学生が入ってきてくれるのを待っているだけではなく、もっと美術予備校や、美術高校などと連携すればいいのにな、と思って、このツイートをしました。

ただ、実は藝大デザイン科も4年前から、藝大主催の公開講座という一般向けの取り組みの中に、主に受験生をターゲットにしているであろう「デザイン科による大石膏室でのデッサンコンクール」や「水粘土による立体造形講座」などのイベントが追加されました。僕のアルバイト先の予備校でも、受講を推奨しています。このような取り組みがもっと盛んに行われるようになって、受験生と大学のコミュニケーションの機会がもっと増えたらいいな、と思います。
まぁ、国立の大学が民間の美術予備校と連携をするというのは、今後数年で実現できるような現実性を帯びているとは思えませんが……。
あくまで、思いつきでした。

そうでなければ、もっと受験生同士や予備校同士の戦いの火を煽るような戦略を講じて、より受験戦争を熾烈なものにして受験生たちにサバイバル能力を身に着けてもらう…とかになりますかね?

今回は以上になります。
この続きは明日、
ⅲ) 学生←先生←職員(←文科省←国)の一方向的な関係
そしておそらく明後日の更新で
ⅳ) 様々な分野をまたがってデザインが必要とされる時代
ⅴ) 環境や倫理的な問題と隣り合うデザインのしごと

と、長編になります。

徐々に研究の中身に関わる内容に入ってきたため、どうしても書くのにも時間がかかりますし、文章も長くなってしまいます。書きながら内容の調整や、それに伴い予定外の分割やタイトルの修正などもしているため、順を追って読んでいただいている方には混乱を与えてしまうことがあるかもしれません。
できる限り記事の情報の相互参照が行いやすいように工夫をしていくつもりです。

引き続き、プロジェクトのフォローをどうぞよろしくお願いいたします。

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最後までお読みいただきありがとうございます! 7月からは、徐々にINTRODUCTIONから研究内容にシフトしていく予定です! Twitter:https://twitter.com/44_ktz Facebook:https://www.facebook.com/44ktz

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Yoshikatsu Hirayama

東京藝大 デザイン科 修士2年。デンマーク留学中🇩🇰 進行中の修了制作テーマ→「東京藝術大学の学生や職員を巻き込みながら、この大学での彼らの学び方・働き方・暮らし方のco-creationをどうデザインするか?」 noteにて、その探求のプロセスを順次公開していく予定です。
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