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クモハよ、あれが瀬波の海だ!

#阿賀北ノベルジャム  後取材記2

彷徨うふたり

クモハの手提げには愛するMacbook Airと「バッテンガール」、それに新潟日報。ちび土偶の手提げには、オヤツと水筒。
高校生たちはそれぞれ学校へ。まだ8時、開いている店はない。
計画ではまず「イヨボヤ会館」を目指し、三面川の河岸と設定した瑠依のランニングコースを海まで辿る。その後「イヨボヤ会館」を見学し、美味しいものを食べる。そして、羽越本線〜白新線〜信越線の長い旅路を経て実家を目指す。あわよくば新潟で瑠依と拓海が食べた「みかづきのイタリアン」をおやつにしよう。
That's simple. ザッツ「バッテンガール」の旅になるはずだった。
駅前の観光案内所の青年が旗を出しているところだった。地図でももらえないかなあ、と寄ってみた。青年は丁寧に「町家の人形さま巡り」の話をしてくれた。そうそう、数年前に「ちび雌型土偶」を連れて、このコースを辿ったよな、と記憶が蘇る。
これも何かの縁とクモハはおもむろに新聞記事を広げ、紙本を取り出す。最初の就職先は出版社の営業。あの凶々しい本を勧めるのに比べたらなんてことないさ!
案の定、青年は記事も知らず「阿賀北ノベルジャム」も知らず、当然「バッテンガール」も知らなかった。いんだよ。なんでもやってみることが大切。

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駅前の交差点を右に曲がると村上高校、直進し左折すると桜が丘高校。公立高校二つが、こんな近くにある例をクモハは知らない。いずれ取材を申し込みたいが、今回は外から拝見するだけ。それでも来た甲斐はあり、変更点は新版に反映させた。
桜が丘高校を過ぎ、いよいよイヨボヤへ! 街角に気になるたたずまいの家屋があり、中は民具であふれていた。その名も「ゑびす屋」さん。

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ひとまずイヨボヤ会館を通り過ぎ、待望の河原へ。ここは瑠依が琥織と会話を交わすシーンで使われている重要な場所。瑠依があそこから走り込んだとして……あれあれ、川が二本あるよ!?
この二本川の訳をクモハたちは後ほど知ることになる。
手前の川は細い。ここで叫んだらただの迷惑である。春の畑を準備する人たちを通り過ぎて、本流三面川の水面をのぞく。そう、ここだよ、ここ!

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設定では海はここから3キロ。えっ歩くの? イヨボヤ会館に貸し自転車あったよ? しかし、散歩の好きなチビ土偶、そしておそらく自転車では通れないだろうという予想もあり、二人はテクテク川岸を歩く。肩のMacbook Airが予想以上に重い。

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これどっちに行くの!? 
この時のために連れてきたチビ土偶。ここから道は川岸からそれ、高架下をくぐる。クモハは暑いし、重いし、先行きが見えなくてイライラしてくる。どのくらいイライラしているかというと、道端に無限に生えているつくしをスルーするくらい。道につくしがあれば摘む。それがクモハだったはず。
重い荷物を肩に進む3キロの道は長い。しかし、スマホに国土地理院地図が標準装備のチビ土偶は涼しい顔。
「あそこに見えてるのが防砂林。あれを越えたらすぐ」
はいその通りです、チビ土偶様。しかし、あの防砂林まであと何歩でしょう?

瑠依は毎日何キロ走ってるんだろう!
そしてついに見えました、瀬波の海が。遥か右に笹川流れ、左に見えるのは瀬波温泉。広い砂浜には二人だけ。ヤッタア〜、吠えるぞ〜。

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瑠依の気持ちを思い出し、見えない夕陽に心をぶつけ(まだ朝だもの)、甲虫を漁るチビ土偶をよそに、吠えるクモハを海岸で待っていたのは、なんと! 今回のタイトル写真に使った「ゑびすさま」でした。
御方は何処から流れ着いたのでございましょう。木目の浮き出し具合も可愛らしく、途中の「ゑびす屋」さんともシンクロして何やら不思議な出会いでした。
それでは、本日はここまでにいたしとうございます。

続く……な、たぶん。

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