見出し画像

たった一枚の紙

「たった一枚の紙」

《設定》
離婚する男女

男 あっという間だったな
女 そうね、あっという間だったね
男 いつ?
女 今日のうちに
男 随分と早いんだな
女 あんまり長くいるのはお互いのためにならないでしょ
男 確かに

女 私がいなくなっても、しっかりしてよね。って今更言うことじゃないけど
男 わかってるよ・・・ 
  今までまかせっきりだったから、少しは頑張らないとね
女 そう、いつも私に任せっきり。
男 今になって申し訳なかったと思っているよ。
女 その言葉、もう少し早く聞けていればね。
男 そうだな。
女 色々としまってある場所覚えた?
男 一応メモってくれているものはなんとかわかったよ。
女 その調子だとそれ以外のものは分かってないでしょ
男 まだね
女 そう言うところだよ
男 分かってるよ、今になってやっとね

女 なんか、不思議な気分だね
男 同じ気分だと思う
女 たった一枚の紙だけで、人生が大きく変わるんだものね。
男 あの時、一緒にあれを出しに行った時のことは今でもちゃんと覚えてるよ
女 同じ誕生日なんだもんね。忘れようが無いよね。
男 だな
女 どう、まだ気持ちは残ってる?
男 残ってないと言ったら嘘になるね
女 お互いにもっと寄り添えあえてたらね
男 反省しきりだよ、これもまた今更だけどね
女 そうね
  じゃあ申し訳ないけど、あれ役所にお願いね
男 うん、分かった。明日には提出にいくよ。

女 ありがとう、じゃもういくね
男 了解。
女 そうしようかな
男 玄関まで送っていくよ
女 いい、ここでお別れ
男 そうか、元気でね
女 あなたも、お元気でね
  愛してたわよ
男 俺も愛してたよ
  もうすっかり過去形になっちゃったな
女 さようなら
男 ああ、さようなら

男のつぶやき
 そうして彼女は出て行った。離婚届というたった一枚の紙を残して

ーーーーーーーーーー
本ページに掲載されている作品につきましてはご自由な収録・発信を行なっていただいて構いません。ただし、その際には、サカMOTO原作である旨の記載をお願いいたします。URLの記載につきましては任意です。なお、全ての作品について、著作権は放棄しておりません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?