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街角OL日記 2022.3.28~4.1

関西でしがないOLをやっている私が、平日の出来事や思ったことを書いていくことにした。

3.28 隣の芝生はいつも青い

よく聞く言葉だが、自分の芝生が青いかなんて当の本人にはよくわからないものだ。
友人や知人の素敵だな、いいなと思ったことを言ってみると、いやいやあなたの方が、みたいなことはよくある。そりゃあ芝生なんて遠くから見たほうがきれいに見えるものなのだ。
だが、そんなことはどうでもいい。結局、あなたが良くても私は良くないのだ。そもそも、あなたがきれいだと思う芝生と、私がきれいだと思う芝生は違うものなのだ。
比べるから、欠けたところが見えてくる。かといって、人間誰とも比べずに生きるなんてことができるわけがない。
明るい諦めのもと、私はこれからも隣の芝生を眺めてみたり、自分の芝生について考えてみたりしながら生きていくのだろう。


3.29 不器用

私は何かにつけて不器用な人間だ。
見た目はどうやらそんなに不器用には見えないらしい。いろんな楽器をやっていたからか、仕事柄か。手先が器用で几帳面なイメージを持たれることが多い。イメージは良いに越したことがないのでありがたい話だ。
だがしかし、意外と不器用だね。そんな声がすぐに聞こえてくる。わりかし残念な人間である。
裁断機を使っているくせにまっすぐ紙が切れない。
シャンプーを詰め替えようとしてこぼす。
乾いたバスタオルを取り込もうとしてうっかり落とす。
手が滑って鍋にふえるわかめを入れすぎる。
細かいことを挙げだすときりがない。どれも、真剣にやっているのに。
どうもちゃんとできない。もうお酒が飲める年をとうに過ぎたというのに、未だに自分の体をうまく扱えないでいる。
まあ、できなきゃ困ることについては一通りの訓練をするのだ。いくら不器用とはいえ、こなれてきたらそれなりにはできるようになる。今、自分がうまくこなせていることの多くは地味な訓練の上にある。
ちなみに裁断機でまっすぐ紙を切ることはできるようになった。会社の年季の入った裁断機と和解するのに1年と半年もかかってしまった。まったく、馬鹿みたいな話である。
それで困っていないから、たぶんこれからも不器用なままだ。
わたしの不器用さについてはこれからもどうか笑って許してくれ。


3.30 異国の香り

甘い香りのするハンドジェルをもらった。アメリカ出張から帰ってきた営業のお兄さんからのお土産だ。
ビビッドなピンク、やたらと甘いキャンディやガムみたいな香りはいかにもアメリカン。少し手に取っただけで香りがそこら中に広がる。
ははは、なんだか楽しくなってきた。甘い香りをそこらじゅうに振りまいて仕事をしてやる。
いつもよりほんの少し高いトーンで電話をとった。他部署からの小さな文句も、笑って聞き流して丸く収めておいた。
部長から何かお菓子食べた?と聞かれたので、ハンドジェルを分けてあげた。50代のおじさまからアメリカンな香りがする。とても良い。口には出さないが、ノリのいい部長のことはけっこう好きだ。
普通に仕事をしているだけなのに、ハンドジェルの香りがしている間は洋ドラの主人公みたいな気分になれた。私はなんとも単純な人間である。
営業のお兄さん、ありがとう。


3.31 年度末

年度末である。
例に漏れず明日は弊社でも入社式が行われる。
社内行事と言えば、総務の出番である。
何をしているかわからないけど、いつも会社にいて、困ったことがあればとりあえず言っておこうかなと思い浮かぶ総務の人。私はそんな何をしているかよくわからない総務の人なのである。
誰に言えばいいかわかんなかったから、とりあえずあなたに言っておくね。と、言われることは多い。ええ、何でもやりますとも。総務なので。
というわけで、今日は朝から明日の入社式の準備に追われる。
夕方は、今日で会社を去る人のために花屋に花束を受け取りに行く。
余韻に浸る暇もない。
ただただ慌ただしい一日が終わった。


4.1 お肉は正義

新年度である。
初々しい新社会人を前にして、懐かしさと恥ずかしさと、いろんな感情がぐちゃぐちゃになって胃が痛くなってきた。
怒涛の3月が終わり、これからしばらくは新入社員研修。仕事は尽きない。新入社員たちにとっては一大イベントだが、私にとっては毎年やってくる業務のうちの1つである。
まあ、なんだかんだで新年度1日目を無事に終えた。
そんなことより、今日のご褒美は上司の奢りで食べる焼肉である。
私はあまりお酒が飲めないので、料理がおいしいほうが嬉しい。まあ、上司からすれば安上がりな人間だろう。
ほどほどに飲んでいるふりをしながら、肉を焼くことに集中する。タン、ハラミ、ロース、ミノ、そしてまたハラミ。
ひっくり返せばじゅう、という音と共に脂がしたたり煙が立つ。焼き上がったお肉にたれを絡めれば、脂と混じりあって、てらてらと光ってなまめかしい艶を放つ。一口噛めば、ぶつりと肉の繊維が切れて、少し甘く感じるお肉の味が口の中に広がる。至福の時だ。
「美味しそうに食べるね」
一緒に食事をした人によく言われる。ええ、そうですとも。美味しいですから。
お肉は美味しい。元気が出る。生きている感じがする。
美味しいお肉は正義である。

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