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街角OL日記 2022.3.23〜3.25

関西でしがないOLをやっている私が、平日の出来事や思ったことを書いていくことにした。

03.23  春を抱えて歩く人

花束を抱えて電車に揺られている人がいる。
私の隣に立ったその人は、スマホも見ずにじっと小雨の降る窓の外を眺めていた。ビシッとトレンチコートを着こなした素敵な人だ。
きれいにラッピングされた花束ではない。くしゃっとなった英字新聞に包まれた素朴な花束だ。新聞紙の隙間からオレンジ、ピンク、赤、黄色。華やかな色の花たちが顔を覗かせていた。
黒い鞄に黒いパンプス。会社勤めをされている人に見える。会社の応接室の花瓶から貰ってきたのだろうか。何かイベントのために生けられていた花を貰ってきたのだろうか。はたまた自分で買ったのだろうか。
いろんなことを考えてみたけど、正解はもちろんわからない。
花束を抱えた人は、私の降りる駅の一つ手前で降りていった。てくてく歩いていくその人のどこかちょっぴり晴れやかな横顔は春色の花束にしっくりきた。
小雨が降る沈んだ街並みにぱっと咲いた春のような一幕だった。

03.24  あこがれの人

私には密かにあこがれている人がいる。
綺麗に手入れされたロングヘア、グレーのスーツ、ロンシャンのバッグ、そして足もとはいつもハイヒール。長い手足を優雅に振って歩く素敵なお姉さまだ。
名前も顔もわからない。
いつものごとく朝の通勤電車に揺られ、会社の最寄駅で降りて地下道を歩いていると、ああ、今日も追い抜かれた。
というわけで、私のあこがれの人はいつも後ろ姿しか見ることができないのだ。
私はスーツを着て働いていない。制服のある会社だからだ。私服で通勤して制服に着替えている。
ヒールの音を鳴らして颯爽と歩いていく。あの人の後ろ姿は、小さな頃にあこがれた働くお姉さんそのものなのだ。
ただただいいなあ、と思う。そんな単純な気持ちは忘れないでいたい。


03.25  タイ料理でまた会おう

今日は金曜日だ。いそいそと定時で退社し、友人に久しぶりに会った。遠方に住んでいる友人が転職の前に一時帰省していたのだ。
今日は朝からLINEでやりとりをしていたのだが、
「せっかく地元に帰ってくるんだし好きなもの食べなよ」
と言ってみると、
「わかった、なんか考えとく」
と返事が。いつもながら簡素なやりとりだ。
会うのは半年ぶりなのに、待ち合わせ場所に現れるなり、ろくな挨拶もせず
「今日はタイ料理にしようよ」
といっててくてく歩き出した。
どうやらそういう気分らしい。いつも行動が読めなくておもしろいなと思う。
昔はくだらないことを話していたが、将来の話や結婚について話すこともある。変わらないけど変わるものだ。
4月からまた遠くに行ってしまう。今度は簡単に遊びに行くね、なんて言えない距離だ。
それでも。わたしたちは別れ際にバイバイ、なんて言わない。
子どもの頃からいつもそう。名残惜しそうに後ろを振り返ることもない。今日だっていつも通りだ。

じゃ、またね。

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