見出し画像

世界的に類を見ない五重奏のJ.S.バッハ「フーガの技法」の聴きどころ


 弦楽五重奏のアレンジとDAWサラウンドシミュレーションを担当した
J.S.BACH「The Art of Fugue 1080-BWV」がUNAMASレーベルよりリリースされました。 (J.S.バッハ「フーガの技法」より)

画像1

「フーガの技法」 五重奏版の聴きどころ

 前回ヴィヴァルディ録音後は両耳から流血、今回のバッハ録音編集後は血痰と、祟られたんじゃないか(笑)と思うぐらいでしたが、音楽の父とも評されるようにバッハの楽曲のアレンジはそれだけ作曲家にとって大変プレッシャーのかかるものでした。

また、受験生の頃「フーガの技法」はグールドや高橋悠治の録音をよく聴いていたり、入試の副科ピアノは平均律クラヴィーア曲集より選び、学習フーガは受験のため何十曲と書いていてクラシックの作曲家にとっては「フーガ」は非常になじみのあるものだったりします。


「フーガの技法」の作曲家なりの聴きどころ紹介です。

1.フーガとハイレゾ・サラウンドの親和性

 学生時代よりサラウンド(パートごと独立してマスクされず良く聴こえる分離の良さ)とバッハの対位法楽曲(複数のメロディが同時に存在して合わさったり対立したりする)の親和性を感じていて、機会があればぜひサラウンドアレンジをしてみたいと考えてました。

この録音はその意図どおり各声部が独立して良く見え、かつそれが合わさった音場にリスナーが包まれます。ハイレゾ・サラウンドによる録音はフーガ様式の意図をくんだものとも言えます。

ヴィヴァルディ四季の協奏曲様式もそうでしたが、コンサートホールの近代化によって大きな音量で遠くに音を飛ばし、多くの聴衆に同時に聴かれるようになる以前に書かれた音楽は繊細で間近で聴くように作られており、サラウンドとハイレゾ録音との親和性が非常に高いです。


2.世界的に類を見ない五重奏のフーガの技法

 原曲は4パートの譜面なのですが四重奏だとサラウンド音場のイメージに合わないので五重奏に。

さすがに取りかかる前は抵抗がありましたが、音楽の歴史において発展したテクノロジーに出会うことで楽曲の構成が変わったり、新しい楽器の為に作編曲されるのはよくあることなので今は必然だと感じています。

この記事が書かれた当時、弦楽四重奏版ですら日本人演奏者のアルバムは一枚しか出てないそうです。

3.音楽家だけでは発想できないアレンジ

 「5CH音場を前提に楽器編成を構成した」と言い換えることもできますが、再生環境を前提に対位法的楽曲の楽器編成を変更するのはかなり異例です。

テクノロジーの更新によって陳腐化する、乗っかりすぎるテクノロジー音楽はおもしろくないですが、サラウンド5ch音場(テクノロジー)をきっかけとした音楽家だけでは発想できないアレンジが生まれるのは非常に面白かったです。

4.重低音で親しみやすくなったフーガ

 フーガという様式はともすれば難解で聴きにくい印象をもたれるかもしれませんが、前述のサラウンドと対位法的楽曲の親和性と重低音が増すことによって、かなり分かりやすく親しみやすいものになっています。

Music-Video by 4K

麻倉怜士 インタビュー

藤本健 インタビュー

対談 Mick沢口×入交英雄

アルバム情報

配信開始 J.S BACH「The Art of Fugue」~フーガの技法~ & 4KPV

【HPL9】The ART of FUGUE BWV-1080 〜フーガの技法〜 好評配信中

「The Art of Fugue Premium」& HPL9 Ver. 配信開始 第22回 日本プロ音楽録音賞優秀賞受賞記念

e-onkyo / moraよりDSD11.2MHzフォーマットで7アルバム配信中

アレンジを担当したアルバムが、中国ソニーセレクトにて2018年下半期・2019年上半期ベストアルバムに多数ランクイン

アレンジを担当したUNAMASクラシックシリーズ・ドイツHIGHRESAUDIOよりグローバル配信中

5.忘れ去られていたJ.S.バッハ

 J.S.バッハは難解な音楽ゆえに死後ほぼ忘れ去られていました。現在のように広く認知されるようになったのは作曲家のフェリックス・メンデルスゾーンがマタイ受難曲をバッハの死後百年後再演されたことによります。

その例に習ってハイレゾ・サラウンドによりフーガの再発見がなされればいいと考えています。

今年は長い年月絶版となっていた学習フーガの教科書の出版も行われるそうなので、今年のバッハ生誕330周年は「フーガ」復活の年になればいいですね。

新 UNAHQ 2007 HPL Cover

【HPL9】 The ART of FUGUE

 BWV-1080 Premium Ver.

アルバムのジャケット画像やタイトルをクリックすると、詳しい概要が掲載されている詳細ページ「ハイレゾ音源配信サイト【e-onkyo music】」へリンクします。

【HPL9】バージョンはヘッドホンでも、9.1chハイトサラウンドが聴けますのでお勧めしています。


エピソード 「土屋君なんでできないの?」

 上述のフーガの教科書はこちら。著者の故 山口 博史さんは学生時代ソルフェージュの授業でお世話になり、「土屋君は不思議だな、なんであんなに難しい試験を通ったのに聴音できないんだろう?」と言われたものでした。

(あれから10年近く頑張ってきましたので御蔭様でだいぶマシになりました。)

聴音の授業中

山口さん 「(土屋くん)だいじょうぶ?」(やさしい声で)

この文章は作曲家 土屋洋一のofficial blog 2015年の記事より加筆修正され転載されたものです。

続きをみるには

残り 0字
この記事のみ ¥ 500
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

いつも応援してくださる皆様に支えられています。ありがとうございます。サポートや記事購入代金は全て、記事作成のための資料にあてさせて頂いています。