見出し画像

VOL.14寄稿者&作品紹介11 小川たまかさん

昨年5月に『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)を上梓した小川たまかさん。同年8月からはthe letterで日記を配信し続けていて、あっ、でも最新の日記では愛猫の体調不良などもあってしばらくはお休み/原稿執筆に注力する、と...それでも、あいかわらずお忙しそうで、来月刊行予定の雑誌「エトセトラ VOL.11」は表紙に《小川たまか 特集編集》との文字が。また5月19日には京都府乙訓郡大山崎町にある〈大山崎 COFFEE ROASTERS〉にて、「小川たまかさんとフェミトーク!」というイベントも開催予定です。さて、そんな小川さんが小誌第14号にご寄稿くださったのは「桐島聡のPERFECT DAYS」という、評論的でもある、映画に関したエッセイ。今年1月に死亡した、連続企業爆破事件の被疑者として全国に指名手配されていた男の名前。昨年末に公開されたヴィム・ヴェンダース監督の映画のタイトル。このふたつをを並べて小川さんはなにを語ろうとするのか? 文頭に「※」で“映画『PERFECT DAYS』のネタバレと酷評を含みます。けれど見て感動した人の気持ちを否定するものではありません。LOVE。”との但し書きがあり、そりゃぁ世界最速の読者である私(←発行人)も、心して拝読しましたですよ。



読んだ。小川さんは真面目でまっすぐだな、と感じた。そして私は、この映画からは逃げたままでいたいと改めて思い直した。“映画を見に行く際は、事前情報を極力仕入れない。だから知らなかったのだ。あの映画の仕掛け人がファーストリテイリングの柳井正代表取締役会長兼社長の次男・柳井康治取締役だということを”と小川さんは書いています。私には...なぜか過多なくらい事前情報が入ってきていたなぁ。ユニクロや渋谷区の「The Tokyo Toilet」プロジェクトがらみだってことが。そして、なによりも、私はヴェンダース映画、得意じゃないんですよ。唯一いいなと思っているのが「パリ、テキサス」のサントラ盤の「No Safety Zone」~「Houston In Two Seconds」~「She's Leaving The Bank」あたりの流れくらいで。あと役所広司は「すばらしき世界」「孤狼の血」などで役者さんとして魅力を堪能したので、この映画は最初からパス。

ニュースやテレビのCMで、あー、いまの日本は綾瀬はるかも桑田佳祐も村上春樹もユニクロなんだな、とそれなりに思うところはあります。だから、本作に同意するところは少なくない。でっ、小川さんはご自身の思うところを記す。私は逃げる...「見ない」を通す...「見ない」(…ついでに、「着ない」)もひとつの意思表示ではあると思っている。さて、小誌を手にしたみなさまはどう感じるのでしょうか。まずはぜひ、小川たまかさんの「桐島聡のPERFECT DAYS」をご一読ください!


ウィッチンケア第14号(Witchenkare VOL.14)発行日:2024年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりー/発行人の屋号)
A5 判:248ページ/定価(本体1,800円+税)
ISBN::978-4-86538-161-0  C0095 ¥1800E 


 ニコを迎えに来た平山の妹・ケイコ(麻生祐未)は、運転手付きの車に乗っている。久しぶりの再会であるらしい兄妹はぎこちなく言葉を交わし合い、本当にここに住んでいるのか聞きづらそうにする妹は、少し言葉をためてから言う。「たまにはお父さんの様子を見に来てあげて。もう昔みたいじゃないから」みたいなことを。平山は申し訳なさそうに首を振り、妹は仕方ないという顔をして、二人は少し抱き合ってから離れる。妹と姪を乗せた高級車は、狭い路地を帰っていく。
 待て待て待てーい。
 平山さん、いいとこの子だったんですか。
 じゃあ何ですか、質素だけれど丁寧な暮らしはコスプレですか。帰ろうと思えばいつでも太い実家に帰れるってことですか。
 いや、わかるよ。こんな資本主義の世の中ではあるが、別にモノを多く持っていることが幸せではない。そんなことより毎日をつつがなく過ごし、ふとした木漏れ日にも感動を見出すことが、人間の本当の幸せじゃないですか、みたいなメッセージ。私も高価な墓石を建てるより、少しの好奇心を絶やすことなく生きる方が幸せだと思うから。でもさ。

~ウィッチンケア第14号掲載〈桐島聡のPERFECT DAYS〉より引用~

小川たまかさん小誌バックナンバー掲載作品:〈シモキタウサギ〉(第4号)/〈三軒茶屋 10 years after〉(第5号)/〈南の島のカップル〉(第6号)/〈夜明けに見る星、その行方〉(第7号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈強姦用クローンの話〉(第8号)/〈寡黙な二人〉(第9号)/〈心をふさぐ〉(第10号)/〈トナカイと森の話〉(第11号)/〈女優じゃない人生を生きている〉(第12号)/〈別の理由〉(第13号)
 
※ウィッチンケア第14号は下記のリアル&ネット書店でお求めください!
 

 
【最新の媒体概要が下記で確認できます】
 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?