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「ブルシット・ジョブ -クソどうでもいい仕事-」を読みながら考えたこと

週末に「ブルシット・ジョブ - クソどうでもいい仕事 -(デビィッド・グレーバー、岩波書店)」を拝読しました。

非常に興味深く読ませていただいたので、この本を通じて「今の日本に投影したら」なんてことをいくつかの視点でお伝えしたく、note挑戦。
本日もまた長文になってしまいましたがお付き合いください。

「ブルシット・ジョブ」ってなに?

まず前提です。タイトルにもある「ブルシット・ジョブ」ってなんなの、ってことです。
この説明で本中でも出てくるの「シット・ジョブ」の違いがわかりやすいので最初に触れておきましょう。

①「ブルシット・ジョブ」=クソどうでもいい仕事
②「シット・ジョブ」=クソ仕事(キツイ仕事)

②の「シット・ジョブ」とは昔でいう3K的意味合いが強い仕事ではあるものの、実は意義がある(医療従事者のように誰かを助けているとか、教師のような誰かを育てるとかetc...)ものです。だけど単に労働環境が悪いのも事実だし、お給料も悪い。故に3ヶ月いっぺんくらい「うおっー!!」って言いたくなる。でも想いがあってやめられない。そんな感じでしょうか。

一方で①はこれに対して報酬が良かったり、誰もが知っている企業に属していたりする仕事。だけど日々の意義を働いている本人すら見出せていない上に「あれ、自分って何しているんだ?」と感じてしまうような状態に陥るものです。
自分のこれからを案にイメージさせてしまうような「昔の常識を教えている大人」や「自分の身を守るために保身に入って、提案しない大人」がいる場でもあるかもしれません。とはいえ、やはり生活もある。だからそこを手放す次なる一歩を踏み出せない、そんな状況を意味しています。

もうちょっと深掘りしてみましょう。

「ブルシット・ジョブ」に陥りやすい環境は、5つの類型

1)人に仕事を割り振るだけのタスクマター(中間管理職)
→部課長の中には、新しい知を生み出す作業なく、自分の地位を維持するだけの窓際族(もしかしてもう昭和の死語でしょうか...)が少なからず存在しています。彼らは、リスクは負う事は絶対ありません。

2)社内の誰かを持ち上げる為の喜び組
→この仕事は誰のために行っているのか、お客様を忘れて社内ごとに注力している状況です。

3)雇用主の為に他人(含む,パートナー企業)を脅迫したり、欺いたりする脅し屋
→(ちょっと物騒な表現ながら)パートナー企業を欺く人間は増えてきていると実感しています。突然進んでいたプロジェクトの梯子を謎の理由で外される....社内外でも起きうる状況です。

4)誰かの欠陥を取り繕う尻拭い業
→誰のための仕事なのかを完全に見失っている仕事です。しかしながら、基本的には社内メンバーには重宝されています。

5)実は誰も読まない資料作成職人(パワーポンイント量産型人間)
→確かに「仕事した感」は持てるかもしれませんが、もはやAI化しているともいえます。
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あなたが、上記5つ類型のどこかに当てはまってしまった場合、
これ危険です。それは結果として、これらの状態がやる気を蝕んでしまっているからだといえます。

さらにここで、2つの興味深いデータをご紹介しましょう。

- 毎年発表となる米国ギャラップ社の「エンゲージメント調査」によると、2019年の「熱意あふれる社員」比率は日本は僅か6%(132/139カ国)でしかありません。
- また同年の一人当たりの GDP(付加価値総和)ランキングでは、世界26位、G7の中で6位です。

数値で全てを語るわけにいかないにしても、現在の日本においてやる気のない仕事や組織体制が、日本の国力をおとしてはいないかと頭に過ります。

「植松電機」と「マシュマロチャレンジ」

このような状況で、どのようにしたら未来を作り出せる」のか。
ここからは、今回もまた企業活動を取り上げ「センスメイキング理論」を用いて改善できる兆しをお伝えしたく思っています。もう少しだけお付き合いください。

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事例1)日本教育のズレをカバーする「植松電機」
    - 今の時代を知っている子供に、昔の常識と世渡りを教えるな-

数年前にTEDでのプレゼンが話題となった「株式会社植松電機」代表取締役植松努社長からのの日本教育の問題提起です。

① 「学歴が上がるほど、判断力が低下しているのではないか」
→修学旅行で彼の会社に訪れる年間1万人修学旅行生1人ひとりに小さなロケット(実験装置、電気信号が流れで、0.3秒 時速200キロメートル突破するものを45分で作れるように設計)を提示すると、一番早いのは小学生であり、学歴を積み勉強してきて能力が高くなるほど、判断力が低下すると実感しているそうです。さらにいえば、大学生は「自分で考えて動いていいよ」というと機能停止することも...。

②「今の時代を教える先生は、子供が社会に出て行く10年後の未来を見通している先生であって欲しい」
→未来予測なんて簡単じゃない。「未来を作り出せる」力を育成できないか。植松社長の話は、今の日本が"歪んだ形で昔のやり方を黙って踏襲している悪しき習慣の企業姿勢、体質"を指摘しているように感じます。新しい目、新しい知識を生み出す土壌を作る作業は、絶対必要なのです。言うなればアナロジーで、自分の仕事を見つめ直すことです。

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事例2)マショマロチャレンジゲーム(スコット D アンソニー)
    - MBAの学生の創造性は、幼稚園児より低い-

植松社長と似たものとして、米国で「マシュマロチャレンジ」というゲーム事例がありました。
こちらゲーム内容について簡単にご説明すると、マシュマロとスパゲッティ20本とマスキングテープだけを使いながら、3から4人で、制限時間7分の間にできるだけ高く積み上げるという単純なものです。

しかしながら、このゲーム結果ですが、
第1位 建築家とエンジニア 101センチ
第2位 CEOと管理責任者 76センチ
第3位 幼稚園児 70センチ
第4位 CEO 52センチ
第5位 弁護士 30センチ
最下位 MBA学生 25センチ(データ出典:トム・ウージェック Tedより)

この結論については、メディアや主催含めて
「創造性と好奇心を生まれつきもっていたものが、学校教育とさらに会社組織により規則的に忘れ去られる」といった発言をされていました。

「センスメイキング理論」で分析してみた               

「センスメイキング理論」的には「頭で考えるよりもまず手を動かすこと、体感知による感知が極めて大切」であることが最重要視点となります。
この2つの事例でそのステップを考えると、

①プロセス1 :「環境の感知(scanning)」
→事例1)では、学歴が上がると、判断力が低下する
 事例2)では、マシュマロチャレンジゲームで、MBAの学生の創造性は、幼稚園児よる劣るという観察結果です。
これらは、理屈、論理で考える方を優先させると、ありのままが見えにくくなることに起因していると考えられます。

②プロセス2 :「解釈・意味づけ(interpretation)」
→事例2)で植松社長がおっしゃる10年後の世界を考えるとは「バックキャスティング(未来から現在を考えこと)」であることです。端的にいうと、あるべき未来の姿から、未来の社会がどうなって欲しいかを考えて、自分なりのフレームを作ることだと理解できます。
ところが、その逆で現状の日本でのプライオリティは「フォアキャスティング(現在から未来を考える)」。これでは広がらない、イノベーションに繋がらない。ワクワクしない、今回の「ブルシット・ジョブ」に繋がると言えるでしょう。
補足すると、この手法は「ストーリーテリング(物語る)ストーリーメイキング手法でもあります。

③プロセス3:「行動・行為(enactment)」
→事例1)にて、植松社長が指摘されるように「自分で考えていいよ→機能停止」ではダメで、「自分で環境に行動を持って働きかける」というスキルが大学生にとって必要になっているようです。これは今の若い社会人にも同様のことが言えるかもしれません。

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皆さんの今のお仕事はどちらでしょうか。もし「ブルシット・ジョブ」だったら、、、あなたはどうしますか?
今回も最後までお付き合いありがとうございました。


(完)