東渕先生経営塾

東渕則之先生(松山大学経営学部教授)による「成長ドライバ理論」を学ぶ経営者・経営支援者…

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東渕則之先生(松山大学経営学部教授)による「成長ドライバ理論」を学ぶ経営者・経営支援者が集うコミュニティ、「東渕先生経営塾」。その主宰者や同志で運営するnoteです。東渕先生の講演録や会社訪問録なども掲載します。

マガジン

  • 「成長ドライバ理論」講義

    経営とは、遠きをはかり、事業や組織に関するありとあらゆることに目配り、気配りをして、適時に的確な手を打つこと。・・・これを可能とする会社経営の全体的・統合的なフレームワークを示す経営理論、「成長ドライバ理論」を解説します。

  • 会社の健康診断

    事業や組織に関するありとあらゆることを全体的・統合的に診断。良い会社へのプロセスや優先順位、経営者がいま打つべき施策が浮き彫りに。「成長ドライバ理論」に基づく総合経営診断システムの解説。

  • 良い会社に学ぶ

    社員を大切にし、社員と会社がともに成長する。そんなお手本のような良い会社の皆さまから教えていただいた素敵なエピソードをご紹介します。

最近の記事

経営者や社員の意識を変え、成長を生み出す「指標」の力

指標は、メインドライバ「システム化・型決め」であり、また「成果分析」のツールでもあります。指標が的確に設定されている場合、指標自体が強いエネルギーを持ち、成長ドライバとしてビジネスモデルや行動環境を強力に牽引していく効果が期待されます。 指標は事後的な管理のためだけに用いられるものではありません。社員や経営者の意識のレベルにまで定着させ、判断や行動を変えさせ、会社にとって望ましい結果を導き出すための重要な役割を担うものです。 売上高、原価率、粗利率・・・ 来店客数、客単価

    • 社長の「情報収集」

      社長の仕事は、遠きをはかり、事業や組織に関するありとあらゆることに目配り、気配りをし、適時に的確な手を打つこと。このためには、社長は常に現場に即した正しいリアルタイムの情報を持っておかなければなりません。正確な情報なくして適時に的確な手を打つことなどできないからです。社長は社内外の情報に敏感になり、効率よく正確で有用な情報を迅速に得られる仕組みを持つ必要があります。 では、社内の情報について、社長はどのように情報を得るようにすべきでしょうか。 情報を得るための「工夫された

      • 社員が自ら進んで取り組む施策、仕組み、社内制度の仕掛け

        これまで数回のnoteで、会社が中・長期で安定的に成長するにも、急激で大きな環境変化に適切に対応するにも、社員が仕事を通じて学び成長する行動環境が十分に備わっていること、それが会社の経営理念・ビジョンやビジネスモデル、さまざまな仕組みや制度などと整合性がとれていることが重要であるということを説明してきました。とりわけ、会社における社員の行動環境の中で、社員の自律性が重要なカギを握っていることを前提とし、自律性を育み伸ばすためにどのようなことができるか、何をすべきか、また、そう

        • 社員が育つ、工夫された「ストレッチ」とは

          前回のnoteでは、社員の自律性を育むことによって社員が自らの意思で勝手に成長するようになり、そして、会社も成長するということを述べました。 社員を育てるのはほかでもない社員自身であり、他人である上司や幹部、経営者が「社員を育てる」というのはおこがましい考えだとも言えるかもしれません。 部下や後輩に「教える」ということはよく行われていることかと思いますが、教えることがすなわち「育てる」とか「育つ」ことを意味するわけではありません。仕事の手順ややり方、スキルを教えたとしても

        経営者や社員の意識を変え、成長を生み出す「指標」の力

        マガジン

        • 「成長ドライバ理論」講義
          35本
        • 会社の健康診断
          10本
        • 良い会社に学ぶ
          7本

        記事

          社員が育つ会社を作るシンプルな考え方

          前回まで、社員の自律性を育むものは何か、また逆に、自律性を阻害するものは何かということを整理しました。 社員の自律性が高まると、社員は会社における自らの果たすべき役割をしっかりと認識し高いパフォーマンスを上げていくことはもちろん、会社の経営を自分ゴトとして捉え、さまざまな環境変化や課題に対して適切な対応をはかろうと積極的に取り組む姿勢を持つようになります。そして、会社のことだけではなく、自身のキャリアについても責任を持つようになり、自分を育てるのはほかでもない自分自身だとい

          社員が育つ会社を作るシンプルな考え方

          どうしたら社員の自律性を育むことができるか②

          成長ドライバ理論のフレームワークにおけるサブドライバ「自律」とは、社員が自分の価値判断基準に基づいて考え、判断し、顧客の立場に立って主体的に行動することを意味します。 そして、会社が成長する原動力としてこのサブドライバ「自律」が機能するためには、 ①組織、会社の経営理念・ビジョンをしっかり理解して、自分の価値観を会社の価値観と同一にしていること ②権限の委譲をしていること ③情報を会社全体で共有できていること が必要だということ、 さらにはその前提として、 1.何を大切に経

          どうしたら社員の自律性を育むことができるか②

          どうしたら社員の自律性を育むことができるか①

          前回の投稿では、うまくいかない事業承継、コロナ禍での環境変化対応がうまくいかないケースなどから、企業経営における「行動環境」、なかでも社員の「自律」の重要性について指摘しました。それでは、どうしたら社員の「自律」を育むことができるのでしょうか。自律と反するもの、自律を阻むものは、どのようなものなのでしょうか。今回は、企業経営における「自律」について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。 自律とは、社員が自分の価値判断基準に基づいて、主体的に自らの行動を決めることを意味しま

          どうしたら社員の自律性を育むことができるか①

          うまくいかない事業承継が教える、中小企業経営の一つのカンどころ

          安倍首相が辞任を発表しました。連続在位日数の歴代最長記録を達成した直後のことで世間を大いに驚かせたのですが、もう数日後には次期首相が決まり、新政権がスタートします。この報道に触れて頭をよぎったのは、長期政権に続く新政権は、往々にして短命に終わるということです。長期安定状態にあるものというのは、それだけ基盤が強固で、いろいろな物事がうまく運んでいるということが言えますが、その半面、強固な基盤や推進力の陰に隠れたところで手付かずの問題が種々、長期間にわたって蓄積されているのかもし

          うまくいかない事業承継が教える、中小企業経営の一つのカンどころ

          「アンバランス」を恐れない経営

          前稿では、コロナ禍に直面した企業経営者が考えるべきことについて、縷々思うところを述べてみました。いま振り返って、改めて考えてみますと、 ①本質を捉えしっかりと経営に取り組んできた経営者/会社は、コロナ禍に直面しても振り回されることなく、ダメージも受けていない ②急激で大幅な環境変化にさらされても、それに受け身で対応するのではなく、むしろ好機と捉えて、前向きに企業成長に生かすことができた経営者/会社は、コロナ禍に直面してもびくともしない ということが言えるのではないかと思います

          「アンバランス」を恐れない経営

          ウィズコロナの時代に経営者が考えなければならないこと

          新型コロナウィルスの猛威が事業活動へ影響を及ぼすようになって、早いもので半年が経過しました。政府や自治体により発出された緊急事態宣言や、なかなか収束の見えない感染拡大状況において、事業活動や私たちの生活は大幅に見直さざるを得ない状況に追いこまれました。 在宅勤務やウェブ会議が拡がり、通勤や取引先訪問のための時間が激減しました。出張もなくなり、会食などの機会を持つことなど考えられない状況になりました。そこで手にした時間で何を考え、何をするか。新型コロナウィルスのおかげで立ち止

          ウィズコロナの時代に経営者が考えなければならないこと

          SDGsの取り組みと業績との相関関係

          昨年12月、日本経済新聞社が「SDGs経営調査」を発表しました。2019年12月2日付日本経済新聞朝刊記事によると、日本経済新聞社が上場企業など国内637社について、SDGsにどう取り組んでいるかの視点で格付けした調査で、総合格付けの上位34社のグループは、それ以外のグループと比較してROEや売上高営業利益率が高く、「SDGsを経営に生かしている企業ほど、収益力が高い傾向が鮮明になった」としています。 私も「SDGsに取り組むと業績が上がるのでしょうか?」という質問をされた

          SDGsの取り組みと業績との相関関係

          SDGsを経営に統合するということ

          中小企業へ広がるSDGsへの期待SDGsの認知度がここ2年くらいの間に急速に高まり、SDGsピンバッチを胸に付けている中小企業経営者の方も、首都圏のみならず地方都市でも多く見かけるようになりました。 SDGsは、”すべての”企業に対して、SDGsが掲げる持続的発展のための課題を解決することを求めているものであって、グローバルにビジネスを展開している一部の大手企業に限ったことではないことはもちろん、SDGsが掲げる課題は私たちの暮らす身近なところにも深く関わるテーマなのですから

          SDGsを経営に統合するということ

          公正なる移行

          パタゴニア日本支社長の辻井隆行さんと株式会社eumo代表取締役(元鎌倉投信取締役/創業者/ファンドマネージャー)の新井和宏さんによるトークセッションがセットで開催された、映画『ほたるの川のまもりびと』上映会に参加しました。 映画『ほたるの川のまもりびと』は、長崎県東彼杆郡川棚町川原を流れる川棚川の支流、石木川に、治水(洪水調節)と利水(安定取水)を目的に昭和47年になされた石木ダム建設計画に対して、50年近くもの間、それこそ命がけで反対運動、着工阻止の活動を続けてきた地元住

          100%子会社がグループ全体の「良い会社づくり」を牽引。わずか2年で大きな成果を上げるブリヂストンBRMの挑戦

          一般社団法人豊島いい会社づくり推進会の7月度企業視察会では、同会法人会員でもあるブリヂストンBRM株式会社様を訪問しました。 リトレッドタイヤ製造専業の株式会社ブリヂストンの100%子会社です; https://bs-brm.jp/ (なお、ブリヂストングループによるリトレッドタイヤのマーケットシェアは約50%で、ブリヂストンBRMはその約8割(マーケットシェア約40%に相当)の生産を担っています) 私が初めてブリヂストンBRMの皆さんとお会いしたのは、2017年7月。同

          100%子会社がグループ全体の「良い会社づくり」を牽引。わずか2年で大きな成果を上げるブリヂストンBRMの挑戦

          ”幸せな会社”の社長が大切にしていること

          「就業規則の神様」と呼ばれる社会保険労務士、下田直人さんの近著『"幸せな会社"の社長が大切にしていること』。「幸せな会社」と、ここでも近時注目されているキーワードが登場しています。 著者の下田直人さんは2002年に社会保険労務士として開業され、2005年には『なぜ、就業規則を変えると会社は儲かるのか?』(大和出版)を上梓しています。就業規則を単に労働基準法を守るため形式的に作成するのではなく、中小企業の社長の「会社や従業員に対する想い」や、「社内を活性化する仕組み」を規定と

          ”幸せな会社”の社長が大切にしていること

          なぜ「良い会社づくり」は進まないのか

          「いい会社」や「良い会社」への興味・関心が高まってきました。「社員や関わる全ての人の幸せを実現する」といった経営者の言葉を耳にする機会も増えています。書店へ行けば、利益追求一辺倒ではない、幸せを基軸にし成長を実現した会社の軌跡や、そうした会社のつくり方を指南する書籍が数多く並んでいます。 この傾向はもちろん歓迎すべきことで、利益を上げるためには他者の犠牲も厭わないという利己的な経営スタイルが「陳腐なもの」という共通認識が社会に醸成されれば、さまざまな企業不祥事も、それによっ

          なぜ「良い会社づくり」は進まないのか