国運の分岐点

「国運の分岐点」
著 デービットアトキンソン
版 講談社アルファ新書 

伝説のアナリスト一見論理的なアトキンソンさん、生産性向上労働生産性の向上を阻む諸悪の根源は中小企業・小規模企業!との論説、前作の「日本の勝算」以上に過激に言い切っておられます。

規模が小さい=従業員教育ができない=生産性が低い
規模が大きい=従業員教育ができる=生産性が高い

まず最低賃金を上げる=それを可能にするためには、生産性をあげざる得ない、企業売上を上げる努力をせざる得ない

結果生産性があがり売り上げがあがり最賃は維持できる。

最賃をあげることが、できないというのは経営者として無能であると言っているようなモノ。

とここまで言い切ってらっしゃいます。

最賃をあげたことで倒産する=生産性の低い企業が市場から撤退しただけで、そのぶん生産性の高い企業の割合が増える。 

最低賃金を上げることに反対する日商さんも全国連さんも中央会も名指しで批判の対象です。

デービットさんの主張はおそらくマクロな視点からすれば「正しい」のでしょうが、規模が大きい=生産性が高い、というのはさすがに単純化しすぎです。

また、中小企業・小規模企業策を単純な優遇策であるとぶった切り、そして1963年の中小企業基本法に至っては「諸悪の根源」という表現。ここまでくると、ポピュリズムに傾いている?という印象をもってしまいます。

昨日と本日は、京都府内の商工会・商工会議所にてお仕事。経営支援員の方どなたもこの書籍をご存知ではありませんでした。

私にとってそのほうがビックリ。危機感を覚えてしまいます。

本書の主張が正しいかどうか、ではなく、日本経済最大の問題は安倍政権の基で繰り広げられる中小企業ー小規模企業政策と言いき切っている書籍が出版され版を重ねていること、東洋経済オンラインなどがたびたび取り上げられている。

この背景にどのような意図が潜んでいるのか、中小企業支援が仕事である彼らこそ、アトキンソン氏の主張を知っておくことは非常に大事だと思います。
またこの書籍が発行された意図にも注目すべきだと思います。

著者のデービット・アトキンソン氏がいうように今、明治維新に匹敵するぐらいの時代の大きな大きな転換点を迎える、という点。
実はここは深く共感している部分です。

これまで因果関係はあまり指摘されてきませんでしたが、明治維新を迎える10年ほど前に安政の大地震など自然災害が度々発生、幕府は随分弱体化していたそうです。

アトキンソン氏はおそらく、ここ数年のうちに地震等の大規模災害に日本が襲われるのは避けて通れないだろうと言います。
これは当たって欲しくはありませんが、年々規模を大きくする台風の発生などを鑑みると否定はできない。
自然災害や環境変化も時代の転換の大きな要因になり得ます。
そこからどこへ進むのか~。
 
とにかく、日本経済の停滞の原因を中小企業・小規模企業の数の多さとその生産性の低さに求める人がいるということ。

そしてこの主張は、ネットでみる限り受け入れらているようである。
ということは世論はどうなっていくのか?

どこまでが事実で相関関係・因果関係は本当に成立するのか?
そんなことを論理的に考える為に、目を通しておく必要のある1冊かと思います。

京都で「知的資産とビジネスモデルの専門家」として、活動しています。現在は内閣府の経営デザインシートの普及に勤めています。