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WEEKEND by ディマシュ:感想&妄想考察/可愛いは正義!?

(dimash 22)
(7,349文字)
(第1稿:2023年8月31日)
 

動画①:『Burak Yeter & Dimash Qudaibergen – Weekend』
by Burak Yeter(公式) 2023/08/25




【一般の方々の、ディマシュへの反応】

 8月25日にBurak Yeter(DJ Burak、DJブラク)のチャンネルで公開されたこの『WEEKEND』、なんとわずか1日強で、170万回再生を突破してしまった。
 まあ、当然でしょうねえ。
 このBurak Yeter氏は、2016年度リリースの『Tuesday ft.Danelle Sandoval』が、現在8億回ほど再生されていますから……。

 ディマシュのチャンネルでここまでの最速再生数が稼げないのは残念だと、dearsが書いているのをコメント欄で読んだけど、まあまあ、落ち着きましょうぜ。
 中国のWeiboでは『ワンスカイ』が1日で500万回以上再生されていて、ディマシュの一番大きなファンダムは中国にあって、でも彼らはお国柄、YouTubeを見れないっていう事情がありますから……。

 ただ、ディマシュの歌が一般的な人気をなかなか獲得しにくいのもわかるので、つらいところだ。

 私が彼のファンになって以後、知人友人にたまにディマシュを紹介するのだが、良い反応をする人は今のところ、紹介した人数の1割程度かな。
 最初は自分がディマシュ沼に落っこちた曲『行かないで』(日本語バージョン)を紹介していたが、たいていの人は「へえ……」みたいな薄っすーい反応をするだけだった。
 最初に聴かせた自分の妹がこの曲でハマったので、私がちょっと勘違いをしてしまったようだ。
 この『行かないで』(日本語バージョン)は、一般の音楽ファンにとっては、難し過ぎるらしい。
 日本語で歌っていても、ものすごく、特殊な歌だったようだ。
 そしてディマシュの歌というか歌声も、一般の人が知る歌や歌声とは全然違っているので、聴いてすぐには反応できないらしいのだ。

 紹介した人達のうち、イベントでよく会う天然石アクセサリー作家の男の子に『行かないで』と『アヴェ・マリア』を紹介したところ、彼には『アヴェ・マリア』の方が刺さったらしい。
 彼曰く、この曲を聴いたあと何かのタガが外れ、作るアクセサリーのテイストが変わってしまったそうだ。実際、彼の会話の内容もわずか2日の間に変わってしまった。もちろん、良いほうに、だ。そして、彼のアクセサリーも良く売れるようになったそうだ。
 刺さってしまえば、ディマシュの歌はそれくらいの変化をもたらすような、ものすごいパワーがあるのだが、どの曲がその人に刺さるかは、実際に聴いてもらわないとわからない。

『アヴェ・マリア』は歌詞が無く、ディマシュの声だけの曲なので、入門編には一番良いのかもしれない。
 YouTube再生数も、ディマシュのチャンネルでは第3位の位置にある曲だ。第1位と2位は2018年度と2019年度の動画だが、どちらもチャンネルの中では古いほうのライブ曲で、その分の年月が稼いでいる面もある。
 なので、2021年にリリースされた『アヴェ・マリア』のほうが実質的には再生数1位かもしれない。

【ディマシュ体験に必要なもの】

 そして、紹介した人にどの曲も刺さらないで、憐れディマシュ君全スルーで撃沈、ということも結構多い。
 しかたがないと思う。
 自分の既存の世界をぶっ壊され、今までより何段階も上に再構築されるなどという変化が「音楽」を聴いて起こるなど、よほどの音楽ファンか、別のジャンルでそういう経験でもない限り、知らないものだ。
 先ほどのアクセサリー作家君などは、壊れるための度胸があったのだ。
 そう、ディマシュ体験には、それなりに勇気とか度胸とかが要るのだ。
 そして、そういう破壊体験をその人が望んでいないなら、その人にとってディマシュの歌というのは「自分に良からぬ変化をもたらすもの」として、ただただウザいだけだし、その人の耳が聴こうとはしないものだ。
 だから、ディマシュの動画の全評価の数字のうち、低評価が4分の1も、ついてしまうのだ。


【『WEEKEND』の感想】

 などと現実的なことを書いてもつまらないので、この曲の感想を書こう。
 っていっても、実はあんまりなさそうだ。
 ディマシュはコラボ歌手であって、制作著作にはほとんど関わっていない感じがするからだ。
(後記:とか言いながら6千字近く書くってどういうことよ自分(笑))

 今日(8月31日)になって公式に出された歌詞やクレジットでは、
「written  by  Allan  Eshuijs,  Burak  Yeter,  Nino  Lucarelli」
となっていて、そのうちのNino Lucarelliという人が歌詞を書いたらしい。
 てことは、曲はディマシュのコンサートにゲスト出演したDJ Burak氏(Burak Yeter)と、もうひとりの人が書いているようだ。

(7月20日に投稿した「ディマシュの身長の秘密/なんでこんなにデカいのよ?」の中で、「この曲を作曲した人はディマシュではなくDJ Burak氏と思われる」と書いたけど、とりあえず間違ってなくてよかった💦)

 DJ Burak氏がこの夏の音楽フェスのステージでこの曲を演奏しているのを見たが、客席というか、立ち見のみなさんがえらく盛り上がっていた。
 実際、なにも考えずに流しっぱなしにするにはもってこいの歌だ。
 リズムが適度に強く、メロディが円環する中東風で、気持ちよく体を揺らして乗ることが出来る。
 歌? ほとんど聞いてませんねえ。
 ディマシュの美声を、楽器として聴いてる感じかな。

 この曲のサウンド、ミックス具合、全体的に嫌味の無い雰囲気、今のように文章を書くなど他のことをしている時に聴いても、まったく邪魔にならないという機能性は、非常に変わっていて不思議な感じだ。
 ディマシュ本人の曲の場合、たまにコーラスなどで「聴けえオラー!」みたいに胸ぐらをつかまれて画面に無理くり向かわされることがあるが(笑)
 ただしディマシュは曲やボーカルをそういう風に作っているので、それが当然だ、別のことをしていて聴いてない私が悪いのだ(笑)
 だがこの曲では、そんなディマシュのボーカルでさえも楽に意識から消えてしまうので、面白いものだなと思う。
 サウンドの音響を作る段階で、その時のコンセプトとして「引き算を意識している」ような印象だ。または実際に音の成分の何かを「引き算」しているのかもしれない。音数は細かくて多いのに、微妙に薄い気がする。
 なので「あ、テキトーに鳴らしてますんで、気にしないで仕事続けてくださいね」ってひかえめに言われてるみたいだ(笑)
 もしかしたらそれが、DJ Burak氏の曲が広くヒットする理由なのかもしれない。
 また、自分が昔からトルコのポップスがわりと好きだったこともあって、トルコ出身のDJ Burak氏が作るこの曲にも、トルコ・ポップス特有のちょっと歌謡曲っぽいテイストを感じて、個人的にとても懐かしい。


【ディマシュの英語の発音】

 さて、それとはまったく別に、ディマシュについて、この曲でやっとわかったことがある。

 「The Question Queen」というリアクション系YouTuberの女性が、ディマシュのファンになって以降、彼の英語の発音を「可愛い(cute)」と何度も話していらっしゃった。
 自分はやっぱ英語ネイティブではないので、彼女が言うディマシュの発音の「可愛さ」がよくわからずにいた。

 ところが、今年(2023年5月)のトルコ・ライブでこの曲が初披露された時、ディマシュの英語の可愛らしさを、ついに発見できてしまった。
 タイトルの単語、「weekend」の、「e(エ)」の発音だった。
 
 母音の「e(エ)」は、『行かないで』(日本語バージョン)にも数多く出てくるが、日本語と英語の「e(エ)」は、音響がちょっと違う。
 なので、気がつかなかった。
 だが、ファンが作成した「おもしろ動画」の中に、ディマシュが純粋な「e(エ)」を発音している場面があり、これがもう、超絶に可愛いらしい音だったのだ。
 
 まずはこれ。
 ディマシュが(着てる衣装から見て『Singer2019』のゲストライブを終えたあと)ホテルの部屋に戻った時、マネージャーから部屋のカード・キーを渡されて「イエー!」と喜び、でもキーを機械に通したのにドアが開かず、ディマシュが思わず困惑して出した、「エ、ェ-……」の声。
 
動画②『Funny, cheeky and adorably quirky Dimash Kudaibergen moments』by Rowdy Fairy 2019/11/13 (該当箇所を頭出し)


 または、以下の動画の3番目のシーン、最後あたりの「イエァ、エア」の発音と、6番目のシーン、クイーンの『We Will Rock You』を歌ってる時の「day」の「エ」の発音。
 
動画③:インスタグラムより dimash_cuba_dearsとandrea_kudaibergen



 どれも英語の「e(エ)」の音なんだけど、これがメチャクチャ可愛いくて、これらの動画をよく再生して聞いていた。
 
 そうしたら、ですよ。
 この新曲の『WEEKEND』には大量の「e(エ)」の音があって、特にタイトルの「ウィークエンド」の「エ」。
 先ほどの動画②と③に出て来たのと同じ印象の音だったのだ。
 なんでまたこんなに可愛く発音するのよ!!? みたいな。
 
 ディマシュが発音する日本語のひらがなの「え」(いかないでの最後の母音のえ、とか)は、咽頭の音響をかなり大きく作っていて、「え」の音が持つ「枝分かれをするもの」という意味を濃く持っている。
 なので、あまり可愛いとは感じないし、どちらかというと切ない音になっている。
 だが英語の方の「e」の音は、日本語の「え」より口角を横に広げて発音しているので、ちょっとつぶれた音響になり、ちょっと舌足らずな感じがする。
 これがまるで、子供の発音のようなのだ。

 多分それが、リアクション動画の女性が言う、ディマシュの英語の「可愛らしさ」なのかもしれないなと思った。
 まあ、子供の英語の発音っぽいのはその通りで、ディマシュが外国語を喋ったり歌ったりする頻度は今までのところ中国語の方が多かったので、その分英語は喋る回数をこなしてないから当然だよね。
 
 なので、ライブで初披露されたこの曲を、ファンが録画した動画で何度も聴くうちに、歌詞を書いた人はもしかして、ディマシュの英語の発音のこの「癖」を知ってて書いたんじゃないの!?? と疑った。
 この歌の間中、ずーーーっっっと「e(エ)」の音が入った単語だらけで、そのため、ディマシュの発音がずーーーっっっと舌っ足らずで、だからずーーーっっっと可愛いらしいのだ(笑)
 
 だが、ブリッジ2の「9時から5時まで~」からの3行には、可愛いらしい「e(エ)」の音は「chase」しかなく、そのせいでこのセクションだけ急に印象が大人っぽくなり、ディマシュの声も深めのチェストボイスを使っている。歌詞の意味も他の部分と違って、ちょっと本気を出して何かを表明しているような印象になる。
(wayの音はあんまり可愛くないので勝手に除外)
 
 そして、また歌詞が最初に戻って「e(エ)」だらけになり、ディマシュのボーカルが可愛く甘えたような感じになり、「俺、今すっげーアホなこと考えてるよね」みたいな意味に聴こえてくる。
 それが、この『WEEKEND』の歌でのディマシュの役割なんだろうな、と思う。

【歌詞の意味と、声の意味】

 歌詞の内容から見て、主人公は「凄い大富豪か人気者のキラキラした週末を夢見ている」らしい。
 それは、人々が考える「カザフスタンのスーパースター、ディマシュ」がそうしているかもしれない週末の過ごし方で、でもご本人は意外とそういうタイプでは全然なくて。
 なので、主人公はとっても真面目な堅物くんで、そんな彼が羽目を外すのを夢見ているようで、でも結局家でゆっくり過ごすのがいちばんいいかな?って思い直したり、仕事も結構好きだし、でもやっぱそういう豪遊もしてみたいよなあと、アホな空想と本音の間をぐるぐるふらふらしてる感じだ。
 
 つまりこの歌詞は、曲の円環するメロディや、ゆらゆらするリズムと同じ構造になっていて、ディマシュの発音と同じく舌っ足らずな子供っぽい雰囲気を作っている。
 そして、歌うディマシュの社会的な地位から勝手に想像されるライフスタイルを、歌うディマシュが夢見て空想しているように聴こえて、このミョーな捻じれ感がもう、とっても可愛らしい。
 
 だが、こんな舌っ足らずな可愛らしい発音でも、ディマシュの声にはやっぱり、うっすらと「悲哀」の色が漂っている。
 それはまるで、

「すべてを投げ出して逃げてしまいたい。
 羽目を外す夢も、豪遊する週末も、本当はどうでもいいんだ。
 この町で働くのが好きだなんてただの強がりなんだ。
 だからここからすぐに逃げ出して、この苦痛とおさらばしたい」

と、主人公は歌詞の内容とは裏腹なことを、心密かに思っているかのように聴こえてくるのだ。
 この、歌詞やメロディやディマシュの英語の発音が持つお気楽で可愛らしいイメージと、ボーカルの音色、もしかしたらファンでなければわからないかもしれないディマシュの声が持つ「悲しみ」のイメージ、この2つのイメージが、ほんの1ミリも無いような「すれ違い」を起こしていて、それもまたこの曲の不思議な印象になっている。


【この曲をライブで歌うディマシュは】

 5月のトルコ・コンサートでこの曲を歌うディマシュは、ヴァース1と2で、両肩を八の字(または「∞」の形)にくねらせるムーブで踊っている。(特に歌が始まってすぐのヴァース1のほう)
 それがなんかもう、小さい子供がイヤイヤをするみたいな動き方で超絶に可愛らしく、ライブ演奏は公式動画の曲より微妙にテンポが遅いため、英語の発音は子供が誰かに甘えて文句をぶつぶつ言ってるような感じに聴こえてやっぱり超絶に可愛らしく、この曲が基本何も考えなくても聴ける歌だったこともあって、下の動画④は、今年の夏の酷暑を耐えるための「視聴必須動画」のひとつなのだった。

 書くことはあんまりなさそうな曲だったのに、いざ書いてみると、意外と長くなってしまった。
 やっぱり「可愛い」は正義なのかな(笑)


動画④:『Димаш/Dimash - The weekend (FANCAM Antalya ~ 06.05.2023) feat. Burak Yeter』 By Sunny Bergenova 2023/05/07
・曲の開始を頭出し
・最初にDJ Burakを舞台に呼ぶディマシュ、なかなか出てこないブラク氏に「どこおー?ブラザあー?」と叫ぶのも、ちょっとかわいい(笑)



『WEEKEND』歌詞 (訳:yoko-tzm)

from IG:dear_4yleen 
DEARdicated Jokester(@dear_4yleen) • Instagram写真と動画


I'll send the weekend your way  この週末を君のやり方で過ごしてみるよ
Give me more than just a taste  ちょっと味見する以上の何かが欲しいんだ
Poppong bottles backstage  舞台裏で飛びかう空のボトルじゃなくってさ
Let's take the limo downtown  リムジンを呼んでダウンタウンへ繰り出そう
Trash the room and mess around  部屋を散らかしまくって、戯れようぜ
Every day, every day, every single day  毎日まいにち、一日も欠かさずにさ

I'll send the weekend  そんな風に週末を送ろう
I'll send the weekend  そんな風に週末を送ろう

(×2)
 
Oh,oh         おっと待って、
Saturday had us at hello  土曜日はハローのひと言で決まりだし
Sunday morning take it slow  日曜日の朝はゆっくりになっちゃうし
Every weekend feels like home  毎週末は自分ちでくつろいじゃう感じだし
 
Now, now         ほらほら、
9 to 5 can't keep us down   9時から5時でも僕らを抑えられないんだ
Love the way we work this town  だってこの町で働くのが大好きなんだ
Fridays chase us for the crown  金曜日が王冠を狙って僕らに付き纏うんだ

I'll send the weekend your way  この週末は君のやり方で過ごしてみるよ
Give me more than just a taste  ちょっと味見する以上の何かが欲しいんだ
Poppong bottles backstage  舞台裏で飛びかう空のボトルじゃなくってさ
Let's take the limo downtown  リムジンを呼んでダウンタウンへ繰り出そう
Trash the room and mess around  部屋を散らかしまくって、戯れようぜ
Every day, every day, every single day  毎日まいにち、一日も欠かさずに
(×2)

I'll send the weekend  そんな風に週末を送ろう
I'll send the weekend  そんな風に週末を送ろう
(×2)
I'll send the weekend  そんな風に週末を送ろう



(終了)


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