『個人的な虫歯』

※ 5分ぐらいで読める短編です。

《1》

 子どもの頃から虫歯に悩まされていた。あの年も、例のごとく虫歯が痛んだ。だが、いつから痛かったのかは覚えていない。職を失う前だったかもしれないし、その後だったかもしれない。いずれにしろ、虫歯の痛みに気が付いたのは、会社を辞めて一か月後のことだった。


 その日は、買い物や役所の手続きのために朝から出かけた。会社を辞めたのは大した理由ではなかった。上司が無能だからとか、会社は自分を理解できないとか、そんなやつだ。だが、同じ理由で職を失ったのは、これで三度目だった。
 一度目と二度目、当時一緒に暮らしていた女は、あなたは悪くない、悪いのは会社や社会よと言った。三度目…女が何を思ったのかは分からない。夕方、用事を片付けたあと、女が好きだと言っていたケーキ屋に寄ってタルトを買った。部屋に帰ると女はいなかった。部屋には自分が買った家具や服だけが残されていた。
 私は椅子がなくなったダイニングテーブルにタルトを置き、痛み止めを飲んだ。そして、ソファに座り、タルトを食べながら自分の虫歯について考え始めた。

 私の歯がどうして虫歯になりやすいのか、納得できる理由を知ったのは大人になってからだ。雑誌で読んだのか、テレビで見たのかは覚えていない。とにかく、幼児期に虫歯のある者と経口接触した者は虫歯になりやすい、そういう内容だったのは覚えている。
 私が物心ついた時には、すでに父親はいなかった。母親とは、高校にあがるまで一緒に暮らしていなかった。私は赤の他人に育てられた。親戚や知人ではなく、文字通りの赤の他人だ。母親は、知人からその女を紹介されたと言っていた。女は、私の母親より10歳ほど年上だったはずだから、初めて会ったとき四十を少し超えたぐらいだったのではないだろうか。
 女は四六時中、機嫌が悪かった。だが、機嫌が良くなるときが二つだけあった。一つは、パチンコに勝ったとき。パチンコで勝った日、女は家に帰ってくると私を抱きしめ、キスをした。時折、舌を入れてきた。タバコと安いコーヒーが混ざったドブのような味がした。
 もう一つは、あの男が来たときだ。その男はいつもボロボロの軽トラに乗り、その軽トラと同じボロボロの作業着を着ていた。たまにケーキを買ってくることがあった。あの女と男は、居間で少しばかり世間話をし、その後はいつもティッシュを持って奥の部屋に行った。女は、大人同士の大事な話をするから絶対に奥の部屋に来るなと言った。ケーキを食べてテレビを見るなり、ゲームをするなり、好きにしていいと言った。そういえば、あの男の歯も虫歯だらけだった。

《2》

 それからも虫歯は痛み続けた。仕事も見つからなかった。あの時思っていたことをそのまま言うならば、本当にクソみたいな日が続いた。

※途中ですが、公開はここまでとなります。

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ありがとうございます。石盤での出版にまた一歩近づきました。
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横紙やぶり

短編・ショートショートまとめ

短編・ショートショートをまとめたものです。 数分で読めるものばかりです。

コメント14件

すみません。私が長いのを読めない人なだけで、普通の人にとっては全然長くないはずです。すみません。失礼な意味ではなかったんです。またあたふたしますが、すみません。そういう意味ではないです。
気にしていませんよ(笑)
note小説あげるなら、もっと短いほうがいいといつも思っているんです。
失礼な意味でないのはちゃんと分かっていますから大丈夫ですよ。
今頃ここに戻って一言残してすみません。私は横紙やぶりさんが女性だと思いながらこの作品を読ませてもらい、「こんなものを書ける女性がいるのか」とすごく驚いたんです。同じ女性として衝撃的でした。男性だと分かって、そうだよね、この空気は女性には生み出せないよねと思いました。やっぱり男性と女性の文章って違うと強く思いました。よく分からないコメントですみません。。
椿さん
よく女性に間違われます(笑)。このアイコンと「私」という一人称を使うからですかね。

女性を主人公にして、一人称で書いてみたいと思っているんですが自信ないんですよ。いずれチャレンジしてみます。
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