文フリの6冊の写真

文フリ東京2019年5月6日の感想

2019年5月6日(月)に東京流通センターで開催された第28回文学フリマ東京に行きました。『メンヘラ批評』『アレ』『大失敗』『新世紀ニューディール』『文化と表現』『EVE』を買ったので、感想を書きます。ここに掲載した写真は、すべて私・街河ヒカリが撮影したものです。

青年文化ゼミ有志『文化と表現 Vol.22 特集:「読むこと」』を買って読みました。売り場では、ずっと前から注目していた編集者の四竈佑介さんに初めてお会いし、ご挨拶しました。『文化と表現』に掲載された四竈佑介さん文体は読みやすくて、どんどん前に進めました。語彙が豊富な方だと思いました。

下:文化と表現のウェブサイト。デザインに凝ってますね。

ネットで話題になった『メンヘラ批評 Vol.1』を買いました。ボリュームがありました。中でも「インターネット社会における「メンヘラ」とまなざしの地獄について」と、「人生の止まった時計が動き出す 「毒親」語りとリバイバルブーム」について感想を書きます。

下:メンヘラ批評のTwitterアカウント

「インターネット社会における「メンヘラ」とまなざしの地獄について」では、筆者の北条かやさんが自分を取材対象や研究対象としていて、自分を俯瞰的に観ていました。主観的な感情さえも客観的に淡々と書いている。北条かやさんは、過去のブログやTwitterでも、「自分は自分のことをきちんと知らない。だから自分を知りたい」と学ぶ姿勢が、度々にじみ出ていました。読者によっては「自分のことを他人事のように語っていて奇妙だ」と感じるかも知れませんが、私は奇妙だと思いませんし、北条かやさんの姿勢を良いことだと思っています。

同じく『メンヘラ批評 Vol.1』に収録されたホリィ・センさんの「人生の止まった時計が動き出す 「毒親」語りとリバイバルブーム」では、タイトルの通り毒親語りとリバイバルブームがパラレルに進行していることが考察されていました。私は序盤で「この二つは関係がないんじゃ?関係がないことを関係があるように無理やりこじつけてないか?」と疑ってしまったけど、最後まで読むと、ああたしかに関係があるな、と納得できました。

「語りの脱男性化」の視点がおもしろかった。ホリィ・センさんに指摘されるまで、私はまったくその視点を持っていませんでした。「脱男性化」とは、内容の脱男性化と、語る人(作者)が女性であることの、二重の意味があるのだろうか?

脱線するけど、マンガ、アニメ、ドラマ、ゲーム、小説、あらゆる分野の作品において、「記憶喪失」や「主人公の過去が分からないこと」や「世界の過去が分からないこと」がテーマになるよね。まあ、当たり前といえば、当たり前だし、定番すぎて指摘するほどでもないけど。なんでこのテーマは、こんなにたくさんの作品で使われるんだろうね。

『メンヘラ批評 Vol.1』については以上です。

新刊ではありませんが、『アレ Vol.5 特集 Workを捉えなおす』を買いました。中でも松井勇起さんによる「「先見の明」は科学的に解明できるか?」がおもしろかった。

「先見の明がある人の話に大衆が反発する」現象は、科学技術コミュニケーションにおける欠如モデルの現象とほぼ同じだと思いました。もし違ったら教えてください。

私も「数値化できないことやサンプル数が少ない事柄から、どのように普遍性を取り出すか?どうやって再現性を取るか?」という課題に興味があります。松井勇起さんからは、たくさんのことを学べそうです。松井勇起さんと実際にお会いしてお話ししたことが、一度だけあります。今後もよろしくお願いします。ありがとうございました。

下:アレ★Clubのウェブサイト

松井勇起さんは「名もなき市民の会」による『新世紀ニューディール 創刊号』でも編集・執筆をしていらっしゃいました。こちらも買いました。『新世紀ニューディール 創刊号』では多様な分野の方々が編集・執筆をしていらっしゃることもあり、内容に幅がありました。政策提言や教育改革案のページでは、具体的なデータに基づいて現実的なプランが打ち出されていました。「名もなき市民の会」の皆様は、今後どんな活動をされるのでしょう。楽しみです。

下:名もなき市民の会のウェブサイト

『大失敗 創刊号』に掲載された小野まき子さんの「煙草と図鑑 ブレヒト『ゼチュアンの善人』について」を読みました。小野まき子さんはものすごく頭のいい方なんだなあと思いました。作品『ゼチュアンの善人』において煙草が場面によってまったく異なる意味を表象していることが考察され、さらに作品内の煙草と現実社会での煙草が接続されいくプロセスがおもしろかった。小野まき子さんの文章のところどころに、言葉遊びのような、落語のようなうまい言い回しがありました。その一例として、「啓蒙」には「一般市民に全体性を与える」という意味と「演劇舞台において照明で照らす」という意味がかかっていましたね。他にも植物図鑑の議論から煙草(タバコ)が植物であるという意味につながり、最後にオチ(オチ?)がつきましたね。うまい。

下:前衛批評集団『大失敗』のTwitterアカウント

短歌集『EVE』も買いました。作者は優菜ちゃん。優菜さんとお呼びしたほうがいいでしょうか…

夢を見ているようなフワフワした感覚の短歌だと思いました。その時その場所の感情が、いつかは消えてしまいそうな儚さがあるなあ、と。それでいて、クスリと笑ってしまうようなおかしさもある。

素敵な短歌をありがとうございました。

私が買った作品の感想は以上です。

ここには名前を書きませんが、文フリ会場で会った皆様。会えてうれしかった。ありがとう。

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