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#メリーゴーランド

今日みたいな、ぐずついた天気の遊園地は空いている。

ましてや底冷えがする寒さだ。

時刻は夜の7時を回ったところ。

最近では夜も営業している遊園地が増えた。

イルミネーションが輝いているから、家族連れより恋人同士に人気があるようだ。

僕は光の海より、もっとひっそりとした遊園地が好きだ。

まぁ、そんな遊園地は直ぐに閉鎖してしまうけど。

好きな時間帯は夕方の4時頃で、お客さんが帰り始める時かな。

霧雨が降っていると最高なんだけどね。

変かな、僕の好きな遊園地。

僕には妹がいて、10歳離れてるんだ。

妹はイルミネーションが輝いている遊園地を知らないから、今夜は見せてあげようと思って連れて来たんだ。

ちょっと待ってて、いま会わせてあげるから。

いつも胸ポケットに入れているんだよ。

ほら、これが僕の妹。可愛いだろう?

この笑顔の写真が一番、あの子らしい。

こんなに愛らしい子なのに、父や母、僕より早く、星になってしまった。

病気だったんだ。

太陽に当たれない病気。

だから外に出るのは、いつも夕方過ぎからだった。

それでも、妹は泣き言も言わなかった。

家族が暗くならないように、笑ってたんだ。

あの子が太陽のようだった。

妹が一番好きな乗り物はメリーゴーランド。

僕も同じ。詳しく言えばメリーゴーランドの傍のベンチ。

早速、行こう。

妹はね、馬より馬車が、お気に入りで、何度も何度も乗っては、キャッキャッと、はしゃいでた。

そして、このベンチ。

僕はここに座って、それを見ていたんだ。

ちょうど、馬車の高さになるからいいんだよ。

この写真のワンピースは妹に、とてもよく似合ってたし、妹も大好きなワンピースだったんだ。

モスグリーンのビロード調の生地だった。

もうすぐ営業時間が終わるね、あれ?

僕の好きな霧雨だ。

きっと、あの子が降らせたんだ。

チビのくせに気を使う子だから。

ね、霧雨っていいんだ。

泣いてるのか、雨なのか、分からないだろう?

……会いたいな。もう一度だけ、妹に会いたい……。


                    (完)




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