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【童話】ブタさんの悲劇

「ねえねえ、みんな、『みにくいアヒルの子』って云う、お話しを知ってる?」

仕事から帰って来たブタさんが云いました。

牛さんも、羊さんも首を傾げました。

「あ、知らないんでしょう」

ブタさんが、嬉しそうな顔をしています。


「うん、知らないなぁ」

牛さんが、飲むヨーグルトのキャップを外しながら云いました。

「わたしも知らないけど、なんだかタイトルが気に入らないわね」

羊さんが、創ったセーターを、箱詰めしながら怒った顔で云いました。


        🐖🐄🐓🐏


ブタさんは、不思議そうに羊さんを見ています。

「だってブタさん、アヒルさんのお子さんのことを、みにくいってヒドイわ」

「あぁ、そうかモー」と、牛さんも、モーモー云っています。


「ち、違うよ、そうじゃないよ、あのね」

ブタさんは焦っています。


「みなさん、ブタさんの云う通りですよ。

アヒルさんの、お子さんがみにくいと云う話しではないのです」

ニワトリさんが、ブタさんの代わりに、そう云ってくれました。


「そうなの、ニワトリさん」羊さんが、そう云うと、

「モー、まぎらわしいタイトルなんだなぁ」と、牛さんがまたモーモー云い出しました。


「このお話しは、白鳥さんと白鳥さんの子ども達の中に、違う色の子どもがいてね、その子がね」

と、ブタさんが、話そうとしたとき、


        🐖🐄🐓🐏


「はあ〜〜」と、ニワトリさんが、ため息をつきました。


「ニワトリさん、なんで、ため息をついたの?」と、羊さんが訊きました。

ニワトリさんは、遠い目をしています。


「知りたいの?」

ニワトリさんの問いかけに、

「そりゃモー」と牛さんが鳴きました。


「あの〜、ボクの話しは……」

ブタさんが、遠慮がちに云いましたが、誰も聞いていませんでした。


「分かりました、話しましょう。むかしむかし、鎌倉と云う街に、ある有名なお菓子がありました」


「むかしなんだ、今はモーないんだね」

「あります!」ニワトリさんが、キッと牛さんを睨みながら、云いました。


「黙って聞きなさいよ!」

羊さんも、イラッとして牛さんに云いました。


牛さんは、チビチビと、飲むヨーグルトを飲んでいます。


        🐖🐄🐓🐏


ニワトリさんは続けました。

「そのお菓子は、『鳩サブレ』と云う名前です。

鳩さんの形をしたクッキーのようなお菓子です」


「美味しそう」と、食べたそうな顔で羊さんは云いました。

「とっても美味しいのです」

ニワトリさんは、うっとりとして云いました。


牛さんが、我慢出来ずに質問をしました。

「美味しいって、豚マンより美味しいの?」

「シーーー」

ニワトリさんと、羊さんが慌てて牛さんを止めました。


「ねえ、いまブタマンって云ったよね」

ブタさんが、恐る恐る訊きました。


      🐖🐄🐓🐏


「云ったよ。すごく美味しい豚のおまんじゅうなんだ」

牛さんが、2本目の飲むヨーグルトを手にして云いました。


ニワトリさんも、羊さんも固まっています。

「ボク、ちょっと1人になりたい」

ブタさんは、そう云って出掛けて行きました。


その晩、牛さんは夕飯抜きになりました。

そして、「みにくいアヒルの子」のことも、

「鳩サブレ」のことも、この日以来、話題になりませんでした。

悲しいですね。


     おしまい


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