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茜さんのお弁当と川崎探偵団〜2大ドラマのサウンドトラック的楽しみ

銀蝿一家のメンバーが出演しているドラマや映画はいくつもある。パッと思い浮かぶのは、岩井小百合の「クルクルくりん」、翔くんの「湘南爆走族」、森一馬の「ビー・バップ・ハイスクール」、杉本哲太の「白蛇抄」などであろうか。その中でもやはり代表的なのは「茜さんのお弁当」と「川崎探偵団」だろう。

この二つのドラマの共通点は、横浜銀蝿の弟分がツッパリ役で活躍し、横浜銀蝿が演奏とつたない演技で出演するという点だろう。横浜銀蝿の曲がドラマのサウンドトラックとして全面的に流れるのが嬉しい特徴だった。特に横浜銀蝿の演奏シーンは当時見応えのあるシーンだった。

「茜さんのお弁当」は1981年に放送されたTBSのドラマで、八千草薫さん扮する西木茜さんが経営するお弁当屋さんで働くことになる不良少年役として、小林実役で杉本哲太、石倉公一役で嶋大輔が出演していた。同じアルバイト店員の平井俊役はThe Good-byeの曽我泰之だった。そして最終回にBOØWY(当時は暴威)の初期メンバー諸星アツシも出演していたことを後で知ることになる。

Johnnyの「ジェームス・ディーンのように」がこのドラマの主題歌で、当時大好きだったJohnnyのこの曲が毎週流れるだけで気分は高まった。

そしてなんといっても、この「茜さんのお弁当」には横浜銀蝿が毎週登場するのが個人的には一番の喜びであり楽しみだった。銀蝿は毎週1曲の演奏があった。演奏はフル尺ではなかったが毎週銀蝿の演奏が聞けるというのはたまらなかった。しかも、レコード音源とは違うバージョンだったのもポイントで、単にレコード音源のアテぶりではなかったのだ。

このドラマで1話から11話の最終回までに演奏された横浜銀蝿の曲を挙げてみる。

第1話: 横須賀BABY
第2話: ぶっちぎりRock'n Roll
第3話: 潮のかほり
第4話: ツッパリHigh School Rock'n Roll(試験編)
第5話: なぜか演奏シーンなし
第6話: ジェームス・ディーンように
ツッパリHigh Schooj Rock'n Roll(試験編)
第7話: 夕立ちRock'n Roll
第8話: バイバイOld Rock'n Roll
第9話: Happy Birthday
第10話: I LOVE 横浜
第11話: 横須賀BABY (演奏シーンなし、レコード音源)

さらに第7話では、面影橋の上で大輔や哲太がツイストを踊るシーンでは、ラジカセから「だからいつものRock'n Roll」と「翔んでるセブンティーン」が流れている。これだけの横浜銀蝿の曲がゴールデンタイムのドラマで毎週流れていたのだ。ちなみにあるおでん屋のシーンではTBSラジオの「横浜銀蝿只今参上」の実際のトークが流れていた。

このドラマの設定での横浜銀蝿は、デビューを夢見て倉庫でひたすら練習に励むけれど、コンテストに落ちまくりでなかなかデビューできないという実際の横浜銀蝿とかぶる設定だった。バンド名はなぜか紅麗威甦だった。そして最終回にはついに「横須賀BABY」でレコードデビューして、そのタイミングでバンド名はT.C.R.横浜銀蝿R.S.となっていた。

銀蝿は演奏シーンと共に毎週つたない演技のセリフもあって、それがなかなか面白かった。演技に関しては素人そのものという感じの小芝居だったが、セリフの内容はおそらく銀蝿自身がデビュー前に会話していたものと限りなく近いものだったと想像する。デビュー前の銀蝿が、こうやってスタジオで努力を重ねてきたことが分かる、ある意味貴重な内容だった。

この当時は毎晩ラジオの「横浜銀蝿只今参上」を聞いて、水曜日は「茜さんのお弁当」、木曜日は「ザ・ベストテン」を見るという生活だった。銀蝿好きはもちろんみんなこのサイクルだったはずだ。

主人公の茜さんが、大輔や哲太が扮する不良たちに手を焼きながらも、常に彼らの味方となり彼らもだんだんと更生していくという内容で、個人的には茜さんが大輔や哲太をかばってたんかを切るシーンがとても好きだった。

これだけ銀蝿関連が出まくるこのドラマ。もしかしたらユタカプロダクションがTBSに売り込み、ねじ込んだのかもしれない。校内暴力や暴走族などが話題となっていたこの時期なだけに、不良を更生していくこのドラマの内容は時代にフィットしていた。そしてなにより嶋大輔、杉本哲太が常時登場し、毎週欠かさず横浜銀蝿が1曲演奏するという銀蝿一家ファンにとってはたまらないドラマだったことは間違いない。今でも「ジェームス・ディーンのように」を聴くと、茜さんが自転車に乗って颯爽と街を走る姿が浮かんでくる。

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そしてもう一つの銀蝿一家ドラマといえば「川崎探偵団」だ。これは一話完結のドラマで、銀蝿一家のファンのために存在したようなドラマだった。

土曜日のゴールデンタイムに2時間という枠で放送されていた「ザ・サスペンス」で1983年の7月23日に「川崎探偵団」は放送された。銀蝿一家のファンならば見逃し厳禁の内容と出演者だった。

川崎にたむろする若き非行少年が、殺人事件に巻き込まれる。仲間の無実を証明しようと奮闘するストーリーだ。この若き非行少年を演じたのが、嶋大輔、紅麗威甦から杉本哲太、ミッツ、桃太郎、そしてこの後歌手デビューを飾る森一馬だった。なぜか紅麗威甦からリーだけが出演していない。リー自身が演技はやりたくないと言ったのか?はたまたリーの演技が使い物にならなかったのか?もしかしたら実際に通っていた高校との兼ね合いがあって出演できなかったのかもしれないとも考えられる。そのリーの代わりに若き森一馬が熱演している。結果的にこの後森一馬は俳優の道を進むことになるので、本人にとってはいいデビューとなったのではないだろうか。

なんとも嬉しかったのが、殺されたカメラマンの妹役の三田寛子に恋心を抱き、真犯人を見つけるために奮闘する桃太郎が見れたことだった。ほぼ準主役じゃないかというくらい登場するし、トレードマークのサングラスを外して演技する桃太郎は本当に貴重だ。演技は上手くはなかったが、ベースボールシャツを着て、たどたどしい演技をする桃太郎が可愛く思える。

そしてこのドラマでも横浜銀蝿は登場する。銀蝿扮する川崎女郎蜘蛛というバンドはこのドラマのサウンドトラックとして数々のナンバーを繰り出す。そしてセリフもあってつたない演技を披露してくれる。

この「川崎探偵団」で流れた曲を挙げてみると以下のようになる。

杉本哲太
 マブダチ(主題歌)
T.C.R横浜銀蝿R.S.
 土曜の夜だぜ!!
 ぶっちぎりRock'n Roll
 銀ばるRock'n Roll
 羯徒毘路薫'狼琉
 気ままなOneway Night
 いかしたDance Tonight
紅麗威甦
 Hey!!彼女
 桃子の唄
嶋大輔
 男の勲章
嶋大輔・杉本哲太+1
 大輔★哲太のRock'n Roll

ドラマの中でこれだけの曲が流れている。基本的にはレコード音源なのだが、「土曜の夜だぜ!!」と「気ままなOneway Night」はレコードとはバージョンが違っていた。「土曜の夜だぜ!!」ではTAKUのコーラスがレコードでは歌っていない部分も歌っている。そして「気ままなOneway Night」ではJohnnyのギターソロがレコード音源とは違っていた。

横浜銀蝿扮する川崎女郎蜘蛛とは別に大輔たちもバンドを組んで練習しているシーンがある。このバンドは、ボーカルギター大輔、ボーカルギター哲太、ベース森一馬、ドラム桃太郎というメンバー構成で、演奏している曲は「大輔★哲太のRock'n Roll」。川崎女郎蜘蛛のようなバンド名は特に明かされていない。このバンドの練習シーンで流れている「大輔★哲太のRock'n Roll」もレコード音源とは違うバージョンだった。

哲太が襲われるシーンでは、哲太が道を歩きながら「マブダチ」をアカペラで歌っていた部分もあった。「マブダチ」は、このドラマの主題歌ということもあって、アレンジされたインストも流れていた。

トラックの荷台に乗って演奏する横浜銀蝿の「銀ばるRock'n Roll」に合わせて、大輔、哲太、森一馬、桃太郎がツイストを踊るシーンは微笑ましく見れたシーンだった。

このようにとにかく出演者も流れる曲も銀蝿一家で網羅されている。これだけ銀蝿一家がフィーチャーされる番組は後にも先にもこの「川崎探偵団」しかなかっただろう。しかも土曜日のゴールデンタイムだから凄い。これは勝手な想像だが、銀蝿一家の所属していたユタカプロダクションがこの2時間ドラマをごっそり1本買い取っての制作だったのではないだろうか。そうでもなければ、ここまで銀蝿一家をフィーチャーしたドラマはいくらなんでも考えにくい。それだけこの時の銀蝿一家には勢いと金があったのだと想像する。

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「茜さんのお弁当」が1981年、「川崎探偵団」が1983年の放送。このドラマに挟まれるように嶋大輔と紅麗威甦が82年にレコードデビューをしている。そう考えると、この二つのドラマが放送されたこの時期がちょうど銀蝿一家の絶頂期だったといえる。森一馬は「川崎探偵団」が最初のテレビ出演だったように記憶している。翌年の84年にレコードデビューしているので、「川崎探偵団」以降は森一馬を嶋大輔、杉本哲太、紅麗威甦に続く弟分として売り出すつもりだったのだろう。「川崎探偵団」が放送された83年の大晦日に横浜銀蝿が解散することが決まっていたので、横浜銀蝿解散後の弟分たちの将来を見据えてのドラマ制作だったという意味合いもあったのかもしれない。

あの頃の銀蝿一家のめざましい活躍に思いを馳せながら、「茜さんのお弁当」と「川崎探偵団」で流れた銀蝿一家の曲達を中心にこのコラムを書いてみた。こうやってあの頃を振り返るとつくづくあの頃は良かったなと思う。あれから30年以上が経ち、今でもこうやって銀蝿一家のことを好きでいられる幸せ。

横浜銀蝿40thとして復活してくれたおかげで憧れの銀蝿一家祭が開催される。全員は揃わないけれど、大輔や紅麗威、薫くんに麗灑さんが集まるのだ。あの頃の思い出を思い返しながら、今の彼らを体感できるというまたとないチャンス。横浜銀蝿40thがプレゼントしてくれたでっかい置き土産をもらいにZepp HANEDAへと向かう。


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