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自社にとっての人権リスクを探し出すにはどうすればいいか

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 昨日は、事務所から出るとヒンヤリとした空気になっていてびっくりしました。台風の威力はすごいですね(台風のせいなのか?)。

 今日も今季で一番気温が下がるらしいので、過ごし易い1日になりそうです。

 さて、今日は、会社が自社にとっての人権リスクをどうやって探し出すか、を考えてみます。

ビジネスと人権に関する指導原則の解説

 国連は、企業活動が人権に与える影響について、国家の義務と企業の責任を明示し、人権侵害に対する救済のメカニズムを提唱し、人権保護・尊重・救済の枠組みを運用するこめの指導原則として、「ビジネスと人権に関する指導原則」を策定し、その指導原則は2011年の人権理事会で承認されました。

 この指導原則は、まず、企業活動が人権に与える負の影響を見つけて評価する方法を解説しています。

 つまり以下のような内容です。

18. 企業は、人権に関するリスクを測るため、企業活動を通じてまたは取引関係の結果として企業が関与したいかなる現実のまたは潜在的な人権への悪影響も、特定し、評価すべきである。その手続は以下の事項を満たすべきである。
(a) 社内及び/または独立した社外の人権専門家の知見を活用すること。
(b) 企業の規模や業務の性質・状況に応じ、人権への悪影響を潜在的に受ける集団やその他の利害関係者との有意義な協議を含むこと。

まず見つける(リスクの洗い出し)

 指導原則によると、洗い出すべき人権リスクは、「企業活動を通じてまたは取引関係の結果として企業が関与したいかなる現実のまたは潜在的な人権」に関するものです。

 企業活動そのものでだけでなく、取引関係の結果として企業が“関与”したものの中で、現実に起こっているものだけでなく、“潜在的”にある人権リスクまで見なければならないことになっています。

 自分たちが直面している人権リスクであれば見つけるのは比較的容易ですが、そうでなければ、以下のような方法で見つける努力をしてみましょう。

  • 潜在的に影響を受ける可能性のあるステークホルダーとの対話

  • アンケート調査

  • 過去の事例や他社事例の調査・研究

  • 自社へのクレームの内容確認

  • ニュース報道

 しかし、このような方法で探そうにも、時間もないしイマイチやり方が判らないという経営者がほとんどでしょうから、指導原則が言うように、社内の人材を活用したり、独立した社外の人権専門家の知見を活用することも積極的に検討しましょう。

見つけたら優先順位をつける(リスクの評価)

 取引先のさらに先、しかも潜在的なリスクまで洗い出すと、かなりたくさんのリスクが出てくると思います。

 しかし、それらのリスクについて、今すぐに一度に全部対処することはまず不可能です。

 自社にとって最も深刻で、放置しておくと取り返しのつかないことになるリスクを見つけ、そのリスクから取組みを開始しなければなりません。

 必ずしも身近なリスクが重要なリスクとは限りません。
 自社内の労働環境は万全だったのに、生産地国の児童労働がクローズアップされて、大叩きされて企業の価値が毀損してしまうこともあります。

 また、人権リスクの評価は、その時の状況で変化する可能性がありますので、定期的に行うようにしましょう。10年前のリスク評価が、今の会社の状況に合致したものであるとは必ずしもいえません。

 リスクの洗い出しの際に、社内の人材を活用したり、独立した社外の人権専門家の知見を活用することをお勧めしましたが、リスクの評価にあたっても、そのような様々な人材の知見を取り入れて、多角的な評価を行うようにしましょう。

リスクの洗い出し・評価だけでも価値がある

 人権デューデリジェンスは、洗い出して評価した人権リスクに対処していく過程を含みますが、まずは、洗い出しと評価だけでも企業にとっては大きな価値があります。

 おそらく多くの企業は、隠された人権リスクはもちろん明らかな人権リスクですら、それほど意識することなく企業活動を続けているのではないかと思われます。
 そして、人権侵害を明確に訴えられてから慌てる事態に陥るのです。

 ですから、自社がどのような人権リスクを抱えているかを認識するだけでも、大きな価値があると思うのです。認識しさえすれば、それをなんとかしないといけない、と思うのが経営者たるべきものだと思いますしね。

 まずは、洗い出しと評価。やってみてください。


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