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ないから始める台湾、ないから始めない日本

私は今、台湾のスタートアップPinkoi(台湾版minne)のコンテンツ編集とマーケティングの仕事をしている。台湾企業で働く中で、感じた日本と台湾の「始め方の違い」を今日は紹介したい。

1.  グローバル化という言葉自体がない

台湾の人口は2355万人(2017年)。ちなみ東京横浜の人口は3784万人。
面積でいうと、九州と同じくらいの面積である。

この数字を聞くだけで、すぐに分かるのだが台湾はもともと市場が小さい。
なので起業時に、海外展開を見越して事業計画を立てていく。私が働いているPinkoiのCEOピーターも「日本は市場が大きいので、国内向けに事業を起こしてもやっていけるから羨ましいという気持ちが常にあった。台湾で起業をして成長を続けていくなら、海外進出は当たり前、だからあえてグローバル化なんて言葉は使わない」と。確かにPinkoiはオンラインのクリエイターズマーケット。台湾人口2300万人の中で、ターゲットとなりうる層は限られてる。まずは香港、中国への進出は自然な流れだったそう。

2. 「資源が足りない」という私の言葉は笑い飛ばされた

2015年に日本支社を設立したものの、なかなか日本での知名度が上がらないPinkoi。そんな状況の中、私の役目はオウンドメディアでしっかりと海外ECに興味を持つバイヤーとセラーをひきつけること。そしてプラットフォーム全体のローカライゼーションとブランディングだ。昨年まではコンテンツのみを改善していたが、今年からマーケティング部の一員として、より結果にコミットした働きを求められることになった。

そこでマーケティング部の部長と1 on 1をしたとき、「日本はマーケティング、PRそしてコンテンツを3人で担当しなくてはいけない。人的資源があまりにも少なすぎる」と話した。その私の言葉に部長は笑っていた。

彼女は「人的資源が少ないというのは、あり得ない。3人もいるなんてすごいじゃん」と笑いながら言う。彼女たちは基本的に「豊かさマインド」を持っている。これは今すでに資源は持っている、そして利益の総量は無限に増えていくのだから、まずは少人数でもできることをやっていこうというもの。もともと人口や資源は日本に比べると少ない、これが当たり前の環境の中でいかに効率的に利益を上げていくことをみんな考えている。つまり持っているコマで勝負することを考えるから、すぐに行動に移せるのだ。

日本はどうだろう? 
最初に何かを始めようとしたとき、足りないものばかりが頭に思い浮かぶのではないか。実際に私も、SNS専門の担当者がいたらな、ライターがもう少し多ければな、動画作れる人がチーム内でほしいな。あれこれと足りないものばかりを挙げて、今いるチームで結果を出せない言い訳の予防線を張っていたのかもしれない。

3. え?このクオリティで出しますか

日本人の基準は高い。世界中でも有数の質の高いスタンダードを持っていると思う。でもそれって「実は世界ではそこまで求められていない」ということを理解している人ってどれくらいいるんだろう? 台湾では私たちから見て、50点(以下かもしれない)のクオリティーでどんどん世に出してくる。今はインターネットの時代だ、フィードバックは秒速で届く。それを受けてブラッシュアップすればいいのだ。自分たちがこれはイイネとニヤニヤしながら追加している価値は、実は求められていない事が多いのだから。まずはユーザーの反応を見ることで過剰品質を防ぐことができる。

(※ただ、ここでユーザーの声を聞かずに50点のままで放置し、閉鎖閉店していくサービスが多いのも台湾の特徴なのだが。)

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私は今まで「標準回答」に達するための仕事をしていた。そこに到達できないと自分の頭のなかで判断すると「始めない」という選択をすることが多かった。だからこそ台湾に来て、働く人の心持ちを学ぶにつれて、「まぁ、やってみるか」マインドに変わってきた。途中で飽きたり、最後までやりきれないこともあるけど、挑戦することと正比例して、自分のスキル、経験値や判断能力が上がっていると思う。

だから、今始めよう。「ない」から、始めることに意味がある。

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