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読書日記

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岡崎京子とオザケン。そして、あの頃と今と

岡崎京子さんの漫画『ジオラマボーイ・パノラマガール』が映画化され、2020年秋に公開されることが決定。その特報映像を観ると、小沢健二さんの『ラブリー』を歌う声が聞こえてくる。 日々目まぐるしく変化する東京の街を駆け巡りながら、ドキドキ、ジタバタする、ジオラマボーイとパノラマガールの2人の平行線の恋の行く先が描かれる。 岡崎作品の前期と後期私は岡崎作品を前期と後期に分けているところがある。それはバブル崩壊の前後と言えるかもしれないし、80年代的/90年代的と分けられるかもし

雑誌以外のお仕事2022『愛するということ』

書籍と漫画漫画の主人公とEXITりんたろー。さんに共通していたのは、圧倒的な素直さ。「愛は技術。音楽、絵画、医学…などの技術と同じ道をたどる必要がある」「愛の問題は、愛される問題ではない。愛する能力の問題だ」と説いたのは、エーリッヒ・フロム(『愛するということ』)なわけだが、「この2冊はそんな内容になったなぁ」としみじみ。   365日メルマガ配信紙の365日・日めくりカレンダーの写真と添えられた言葉とともに、神崎恵さんのメッセージを365日メルマガとして配信。動画は月1

【書籍編集者の「編む」以外の仕事】一冊の書籍を送り出すまで

発売まで、11月11日に発売する芸人りんたろー。さん初書籍『自分を大切にする練習』を担当している。 普段、雑誌の編集者をしているのだが、はっきりいって作業がかなり分業されているところがある。書籍では、編集部で分業している作業のほとんどが自分ひとり作業になるので、その度に「やること多すぎる!」とおののいている(年に1冊ペースの担当なので、毎回、新鮮におののいている自分もどうかと思う苦笑)。 企画し、著者に原稿をいただき、デザイナーにレイアウトを発注し、内容を編集する。それら

西加奈子著『夜が明ける』

先頃、「『新しい資本主義』によって世界の流れをリードする」というような提言がされた。経済に明るくない私でも、「それ、また、経済格差広がるやつ」だと思った。 賃金が上昇する先進国の中で、日本の賃金だけは横這いどころか、やや右肩下がり。物価が安いことを喜ぶだけのタームはとうに終わっていいはずだった。 コロナが過ぎ去った頃、海外に足を運ぶことになったのなら、その物価に驚くのだと思う。「安い!」と、韓国や台北、東南アジア各国に足を運んでいた時代を懐かしく思い出すのだろう。Netf

寝ても覚めても

「いかんいかん」と思いつつ、寝食を忘れてしまうくらいに、自分でも驚くくらいに働けてしまう時がある。それは嵐のように突如やってきて、アドレナリンだけを注入し続ける。 結果的に、その峠を超えたときは体重が落ちている。今がその時期だ。筋力も落ちているのだろうし、栄養状態がいき届いてないことを物語っているのだから、この年齢になると、それは全く喜ばしいことではない。だけれど、体も心も軽くなる。この感覚が嫌いではない。どうかとは思うけど。 私の場合、自分が自分ではないくらいに、「もう

「我は、おばさん」と、なぜ胸を張れないのか?

ミドルエイジを対象としたメディアを運営していた。大人女子という言葉が中年期の入り口に立っている女性の呼称として定着していた頃である。創刊編集長を担っていただいたスタイリストの大草直子さんは、頑なに「婦人」という言葉を打ち出そう、と譲らなかった。私はその思いに「婦人」が「(フランスにおける)マダム」のような響きになることを夢見ていた。 おばさんと呼ばれないための猶予期間を先延ばしにしたところで、大人女子と呼ばれようとすることにいつか限界がくる。そもそも、大人女子ってなんだ?

これがワタシの生きる道

ゴールデンウィークに1冊の本を読んだ。 『「テレビは見ない」と言うけれど 〜エンタメコンテンツをフェミニズム・ジェンダーから読む〜』のまえがきには 視聴者、そして社会全体の価値観の変化にテレビが対応しきれていないと感じることも多い。 と書かれている。 昨日公開されたビジネスインサイダーの記事も興味深く読んだ。テレビ業界のジェンダー意識の遅れがなかなかにヴィヴィッドに炙り出されていた。 テレビがエンタメコンテンツの象徴だった時代は終わりを告げているのかもしれない。けれ

「混ぜる」のではなく、「和える」感覚

最近、料理研究家の土井先生の書籍を集中的に読んでいる。キッチンから、生活を、文化を、そして、地球を考えていく視点にはうなづくばかり。 その中で、 ・西洋料理は、液体、粉類、卵などを「混ぜる」ことで全く違うものを作る ・和食の特徴は「和える」こと。自然を中心とするため、食材に手を加えない という表現が出てくる。英語にするなら、MIX(ミックス)ではなく、HARMONIE(ハーモニー)。 和食は、化学のように厳密ではなく、常にブレることを前提にしていると土井先生は語る。

韓国ドラマ『ナビレラ』で体感する、愛する技術

・たいていの人は愛の問題を、愛する能力の問題としてではなく、愛されるという問題として捉えている。 ・愛の問題とはすなわち(愛するにふさわしい相手、あるいはその人に愛されたいと思えるような相手を見つけるのが難しいという)対象の問題であって、能力の問題ではない、という思い込みをしている。 世界的ベストセラー『愛するということ』からの抜粋(要約)である。 「おじいさんがバレエを始めるらしい」。サスペンスやラブコメではない韓国の連続ドラマ、ちょっと珍しいな、と思い、ほぼ前情報な

あの日のファミレスにて

片道30分程度自転車をこぎ、見逃していた映画を観た。その帰り、さらに15分ほど自転車をこいで、ほんの少しの思い出があるファミレスへ。 日曜日とあってか、私以外は家族連ればかり。中には3世代で食事を楽しむ方々の姿も。私が食事をして、ドリンクバーをしてる間に、「ハッピーバースデー」が3度流れた。スタッフの方のアナウンスで、店中から湧き上がる突然の手拍子。1度目は何か起こっているか分からなくて、ただ驚いてしまった。 このファミレスは学生時代にデートのようなもので使ったことがある

NETFLIX『彼女』を観て、考えた

NETFLIXで『彼女』を観た。監督が男性だということで嫌な予感はしていたが、本当に予感が的中してしまった。 あくまで男性目線の『彼女』 原作は話題になった発売当時に読んだきり(約10年前)ではあったけれど、#me too 以降の今、この作品を映像化することに、なぜ、ここまで無責任になれてしまったのだろうか? 日常的に夫から暴力を受けていた女と、その女を慕い、請われるままに彼女の夫を殺したレズビアンの友人。殺害現場に証拠を残したまま二人の女はともに逃亡を謀る。明日をも知れ

鈍感でいられる特権について

女性嫌悪とされるミソジニー。理解を深めたくて、ずっと前に買っていたのに読めていなかった一冊を読んだ。 その中で紹介されていた絵本『おおきな木』。 昔読んだ記憶はあったが、ほとんど忘れていた。 一本の木と少年の物語。 一本の木を母の無償の愛のメタファーとして語られることが多い一冊のように思う。 フェミニズムのことを考えることが多くなった今、無償の愛の影に隠されているのかもしれない、自己犠牲の精神がとてもとても気になった。 木はその場所から一歩も動けない。ただ、身を削

事なかれ主義にはもううんざりなんだよ

群像4月号。 通常、自社の刊行物はすぐ読める状態で置いてあるのだが、話題の号ゆえなのか、社内で手に入らず。近所の書店でも完売しており、ネット書店も高値取引がされており…。話題の12000字を読むために、私だけではなく多くの方々が書店を探し歩いていると聞く。遂に、ターミナル駅の大型書店で見つけ、即購入。 文芸誌の売り上げが話題になったのは、フェミニズム号の『文藝』以来だろうか? テレビ東京のディレクターの上出遼平さんの寄稿。 テレビ業界だけではなく、広くメディアに携わる

セルフパートナーシップ。そして、連帯と

ここ数日に触れた本や映画は、いずれも女性たちの連帯がテーマだった。私が意図的にピックアップしているのではなく、完全に時代のテーマなのだと思う。 私のinstgramのぶっきらぼうな評文と共に。 映画『あのこは貴族』 階層違えど、ロールプレイさせられていることに変わりなく。移動手段で見える景色は変わるよね! ニケツ最高‼︎ 『モキシー〜私たちのムーブメント』 シスターフッド❤︎★ 声を上げることの意味が描かれ、モテる男性像の新旧の違い(フェミニズムは女性だけの問題じゃ