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第58回詩人会議新人賞に、あんのくるみさん「追憶の八月」

 月刊『詩人会議』5月号にて、第58回詩人会議新人賞の入賞作が発表になりました。

 入選(新人賞)は、あんのくるみさん「追憶の八月」。おめでとうございます!

 あんのくるみ「追憶の八月」は見過ごしてしまいそうな何げなさの中に深い真実が描かれている。戦争経験者である老爺が「戦友の名をくり返す」ことが同性愛らしき感情と結びついているとの展開は一般的な戦争の惨状描写とは異なるが、逆に生活や愛を押しつぶしていく戦争を感じさせ、私は非常な感動を受けた。

上手宰さんによる選評より
『詩人会議』2024年5月号

 何より、老人が戦友への密やかな愛慕を自分に明かしたのは「同性愛をテーマにした映画の感想を(略)挨拶がてら話したからだろうか」とする展開には、さらっとした筆さばきの妙とともに、現代との接点をも感じハッとさせられた。

北島理恵子さんによる選評より
『詩人会議』2024年5月号

 上記の上手宰さん、北島理恵子さんの選評にもありますように、この「追憶の八月」は、戦友に寄せた愛(同性愛)を、何げない描写の中に見事に描き出した作品です。せつなさ、美しさが静かに漂い、私は、過酷な環境の中で私たちを支えるものは何かを感じさせてくれる素晴らしい作品だと思いました。

 実は私、昨年11月号の『詩人会議』に掲載されたあんのさん詩「ひみつ」がとても素敵だったので、お名前を覚えておりました。この詩は、その時の読者会(合評会)でも人気が高かったです。上手さんをはじめ、北島さんもよかったとおっしゃっていたような。

 「ひみつ」も「追憶の八月」と同様に、戦友への同性愛をほのめかしたせつなく静かな作品で、

今なら恋と呼べるのに
コロンバンガラ、シゲル、ベララベラ

あんのくるみ「ひみつ」より抜粋
『詩人会議』2023年11月号

という最終の2行が本当に美しく、暗記してしまいました(笑)。
 ちなみに「コロンバンガラ」も「ベララベラ」も、ソロモン諸島にある島の名前。ここで1943年、米軍との海戦が繰り広げられました。
 この「ひみつ」が掲載の『詩人会議』2023年11月号はよこやま書店にありますので、是非お買い求めください。この号は草野信子さん、瀬野としさん、上手宰さんによるエッセイ(詩作アドバイス)も本当に神ですので、買って損はないです。


 佳作の3作品は、森山高史さん「うくらいな」、貴田雄介さん「雨」、桟檀寺ゆうさん「不定形の犬」でした。おめでとうございます!
 3作品とも作風が違って、個性が光っていました。どれも読みごたえがあり、素晴らしかったです!

 「うくらいな」(中略)ウクライナを書こうとすると、どうしても声高になってしまうものだが、静かに語るところがいい。

河合政信さんによる選評より
『詩人会議』2024年5月号

 貴田雄介さん「雨」は一見ほほえましい親子の会話。(中略)疑問を「不思議だね」と共感を示すことにより、親子の関係がさらに広がっていくラストが上手い。

洲史さんによる選評より
『詩人会議』2024年5月号

 佳作・桟檀寺ゆう「不定形の犬」は若い世代の抱える生きづらさが、不定形の犬に収斂され、巧みな比喩とリズムで現代性を表現していた。

高田真さんによる選評より
『詩人会議』2024年5月号

 受賞作とすべての選評、選考経過(1次~3次審査通過者のお名前)をご覧になりたい方は、『詩人会議』5月号をお買い求めください。こちらに掲載のメールアドレスにて1冊から注文OK。本誌到着後、巻末の払込取扱票でゆうちょ銀行より振込(手数料がかかります)、またはゆうちょダイレクトでのお支払いとなります。

 受賞作、素晴らしかったです! ぜひご覧ください。

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